第1章〜悲しみの笛〜(全焼の家・下)
車から見えるのは、燃え盛る自宅。
短い間ではあるけれど、俺がこれまで住んでいた家。
浜口家は、今まさに、炎によって失われつつあった。
(by 浜口 至)
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2月26日(金曜日)午後6時20分・シエルこと浜口至の場合。
「結構な勢いで燃えてますね、俺の家……」
俺はその現場を見て思わず、そう呟いた。
やはり規制やら何やらがあるのだろう、この車が現場にあまり近寄ることは出来ない。
だけど逆に騒々しいのが一目瞭然で、結構いろんなことが分かりやすかったりする。
「浜口君、車から降りると、もう少し……
見物している人と同じぐらいのところまで近付けるけど、どうする?」
気遣う、高木刑事の言葉。
でも俺は火や灰がダメなんだよな、ドラキュラだから。
俺達ドラキュラに限った話ではない。
たいていの『人ではない者達』、……特に夜や闇に生きる者は、強い明かりや火を苦手とする。
「あー……
ここでいいです。
近付くとススが飛んできそうだから。
でも、窓を開けてもらえませんか?」
多分この距離なら、俺自信の身体に、火による直接的な被害は無いだろう。
見るだけなら害は無い。
……何時間もこの場にいるのではない限り。
「鎮火するまでどのくらいかかるか、分かりますか?」
「……イヤ、分からない。
でも、完全な鎮火までは、結構、時間がかかると思う」
確かに、そうだろう。
完璧に、俺の家は燃え尽きてしまうだろう。
火は、かなり盛大に燃えている。
では、……ナゼ俺の家は燃えている?
「何と言うか、……何かの陰謀みたいに次々と不幸が起こってますね。
養い親の次は、家ですよ……?」
考えて、思わず笑いが出た。
火事の原因は、たぶん放火だ。
俺の養い親が死んだのは、偶発的なものだろう。
記憶を覗き見た結果、それは間違いないと思う。
そして、……おそらくそのことを知った親戚の誰かが、この家に火をつけた。
理由は単純、『バケモノ』である俺が、この家を相続せずにすむように、だ。
浜口誠と乃梨子、俺の養い親が2人とも死んでしまった以上、この家は俺が継ぐべき遺産となる。
死んでしまったこの夫婦に実の子供は無く、代わりに、ただ一人養子の俺がいるだけだからだ。
そして、ドラキュラの血を引く俺が財産を持つことを、良く思わないヤツがいる。
そいつは、葬儀場で俺にやたら冷たかった親戚達の中の……誰かだろう。
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