王の剣士1「豊穣の丘」(15/16)PDFで表示縦書き表示RDF


王の剣士1「豊穣の丘」
作:雅◆



第四章(二)


 飛竜から降り立つと、老婆はすでにそこで待っていて、レオアリス達の姿を眺め、深い皺に笑みを刻んだ。曲った腰を更に折るようにして、頭を下げる。

「子供等が、喜んでおったよ。」
「あいつらは、何だったんだ?」

「あの子達は、あの村の葡萄の若木での。いつも丁寧に心を傾けて世話をしてくれる村人達を、大層好いておる。」
「……葡萄…?」
 
 眉を顰めて老婆の顔を見返したものの、子供達のころころと似通った姿を思い出し、レオアリスは思わず吹き出した。
 
 房に連なった葡萄の粒が子供の形を取ったら、確かにあんな感じになるかもしれない。

「そりゃまた、頑張ったもんだ。」
 
 蔦を這わせて家を覆い、子供の姿を取って助けを呼びに行く。中々どうして、下手な剣士などより、ずっと役に立つではないか?

「子供等から、お礼が届いておるよ。ほら。」
 
 老婆が指差した先の草の上に、幾つかの葡萄の房と、口を皮で覆った甕が一つ、置かれていた。
 クライフが甕の蓋を持ち上げて覗き込み、嬉しそうな声を上げる。

「こりゃ、ヤンサールの葡萄酒じゃねぇか。すっげぇ上物っすよ。」
 
 少し生意気そうなところのある彼等の姿をもう一度思い返して、レオアリスは口元を緩めた。酒は残念ながら飲めないが、葡萄の房を付けるあたり、気が利くのか小生意気なのか。

「…有難くいただいとこう。――――あんたは」
 
 眼を向けた時、既にそこに老婆の姿は無かった。

 さわりと柔らかく枝葉が擦れる音に眼を上げると、年経た古い大樹が、白み始めた空を背負い、風にゆっくりと身を揺らしていた。







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