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第七十話 契約

今回はキラとの契約のお話です!

では第七十話です!

「け、契約うううううぅぅぅぅぅ!?」


 俺はキラの言った言葉に驚愕の声をあげていた。

 その、契約ってあれですか。なんかよくわからない強力な存在を味方につけるとかっていう、あれですか!?

 これぞ、異世界定番だよな!ようやく異世界らしくなってきましたよ!

 でも、これって素直に受け入れていいものなのか………。場合によっては、意識が乗っ取られたり、暴走したり、物騒な話をよく耳にするんだけど………。

 すると俺の足にぴったりとくっついていたアリエスがなにやら声をあげる。


「ハクにぃ………。オカリナは凄く嬉しそうにしてるよ?…………私自身は凄く微妙なところなんだけど……」


 そう言うだけあって、アリエスの表情はどこか煮え切らない雰囲気を滲ませていた。まあ確かに、アリエスからすれば第二ダンジョンにいきなり現れて、ましてや自分たちを殺気で押さえつけ、俺に攻撃を仕掛けたのだ。信用できないのも無理はないだろう。

 しかし、アリエスに懐いている氷の精霊オカリナは俺から見ても歓喜の表情をしており、キラの存在を受け入れているようだ。

 さすが精霊女王というべきか………。


「本来精霊というものはとても珍しいものなんですよ」


 俺の近くに近寄ってきたエリアが口を開く。


「今は精霊女王の存在によってこのダンジョンにほぼ全ての精霊が集中していますが、本当ならば一生かかって一体の精霊を見れればいいほう、というくらいの確率なんです。とはいえ精霊の力に酔いしれて精霊を執着に追い求める者もいるらしいですが………」


「そうなのか?」


 俺はそのエリアの話の真偽を確かめるようにキラに尋ねた。


「あながち間違いではない。精霊は気に入った相手のみに力を貸す。それは妾のように根源の力を使えはしないまでも、魔術や魔法の威力を莫大に上昇させる。それを求めて精霊を探す輩がいるのは確かだ。…………妾はそのような輩からできるだけ精霊たちを守ってきたつもりだったのだが、お前をその無粋な人間と一緒にしてしまったようだ………。だがその白いのはその精霊に本当に懐かれているようだな。それに関しては、妾から言うことはない。精霊が幸せならそれでな」


 キラの言葉には、本当に精霊たちを大切にする心が感じられた。それは長年守り続けてきた子供達を見るような目で、キラのこれまでの苦労が少しだけ見て取れる。


「白いの、じゃなくてアリエス!私の名前はアリエス=フィルファ!覚えてね!」


 アリエスがキラに自身の名前をやや高圧的に伝える。まあキラはアリエスの名前を知らないわけだし、白いの、と言うのもわからなくないが、その呼び方にアリエスはお気に召さなかったようだ。

 実際、アリエスは髪も服も肌も白いので、そう言われても仕方ないといれば仕方ないのだが。


「ああ、すまない。人間の名を覚えるなど何年ぶりか………。アリエスだな。了解した」


 キラはその名前をかみしめるように、一度だけ声に出すと精霊たちを見つめるときと同じ視線をアリエスにも向けた。


「それで、契約というのはどういうことなんだ?」


「契約というのは、簡単に言えば精霊と繋がるという意味です。わかりやすい例で言えば、ハク様とリアさんの様な関係でしょうか。精霊と契約すると、普通に力を貸してもらうより、遥かに強力な力を行使することが出来ます。またお互いに魔力供給や意思疎通も可能になるのです」


 俺の問いに答えたシラはキラと俺を同時に見ながらそう説明した。

 にしても俺とリアの様な関係か………。

 正直言ってこれは契約なんかではなく、完全なる同化なのだが、まあお互いの意思がある時点であまり変わらないものなのかもしれない。


「それと基本的に精霊と契約することにデメリットはありません。むしろ恩恵ばかりなのです。これまで数多くの冒険者や騎士、魔道師が精霊との契約を試みたことがありますが、成功した事例はほとんど聞いたことがありません。それが今回はその頂点に君臨する精霊女王なのですから、普通であれば契約を即決していてもおかしくないんですよ?」


 そ、そんなにか…………。

 ま、まあ確かにキラは今まで会ってきた中では圧倒的に強いし、十二階神の強さを凌ぐほどなのだから、ありがたい申し出なのだろうけど……。


「それは、どうしても俺じゃないとダメなのか?」


「当然だ。妾は自分より強い者にしかつく気がない。もちろんアリエスたちを嫌っているわけではないが、これは単純な我侭だな。妾はお前の側で世界を見てみたいのだ」


 うーん、これはどうするか。

 というか、この件は俺の独断では決められない。


「どうする、リア?」


『うん?私は全然構わんのじゃ。これがあの駄女神のような奴じゃったら弾き返しておったが、そのキラとかいうやつは、女王としての立場を弁えておる。それにこれほどの強さは、確実に主様の役に立つじゃろう』


「な!?い、いきなり声が!?一体どこからだ!?」


 キラがリアの声に驚いて慌てふためく。一応エリアにはリアに関しては説明してあるので驚いてはいないが、キラにいたってはその限りではなく、辺りをきょろきょろしながら、声の主を探している。


「これは、俺の中にいるリアって言う奴の声だ。契約とは別だが俺に同化しているんだ。とはいえこうやって喋ることもできるから、気軽に話しかけてくれ」


『うむ、よろしくのう』


「な、なるほどお前の神格はその女性が原因か。そうとう位の高い存在を感じる」


 するとその様子をじっと見ていたシルが俺の足元に寄ってきて、問いかける。


「それで…………どうするのですかハク様…………?」


 まあ、リアもああ言ってるし問題はないんだろうけど、またしても俺の噂が一人歩きしそうだな………。

 公爵令嬢に本物の王女様、それに二人の美少女メイドに地の土地神(ミラルタ)。そして極めつけは精霊女王ときた。

 これは本格的に変装とか考えたほうがいいかな………。


「はあ…………。わかったよ、契約する。ただし街中や一般の人がいるところでは大人しくしていてくれよ?」


 その言葉に顔を綻ばせたキラは嬉しそうに大きく頷いた。


「了解だ!では契約に移ろう。確か名前は、ハクだったな?」


「ああ、そうだが………」


 その瞬間、キラは俺の左手を勢いよく掴みあげると、そのままその手を己の唇に触れさせた。


「な!?なああああああ!?」

 俺は酷く慌て、その唇から手を離そうとする。

 アリエスたちもそれには度肝を抜かれたようで、ポカーンと固まってしまっている。


「動くな。我、精霊女王は汝、ハクに忠誠を誓う。これはいつ何時も破られることはなく、不変にして絶対。ここにこの契約を成立する」


 瞬間、キラの体が急激に光だし周囲を飲み込んだ。

 その光が収束し始めると、俺は自身の左手に違和感を覚えた。なんだか自分のものではない魔力の流れが感じられ、とても暖かい。

 そしてその光が完全に消えると、目の前には今までのキラとは少し違った風貌の少女が立っていた。

 キラであることは間違いないのだが、はだけたように身に着けていたローブは、しっかりと体に巻きつけられており、素足だった両足にはサンダルのような水色の靴が紐でくくりつけられている。

 また地面につくほど長かった虹色の髪は髪の付け根辺りで軽くまとめられており、先程とはまた違った印象を受けた。


「きれい………」


 アリエスはその姿をみて半ば呆然と称賛の言葉を口にしていた。

 イメージがいくら変わろうとキラはとてつもない美人なので、同性であっても美という感情は湧き出てくるらしい。

 当然俺も見とれていたわけだが、左腕の痛みによってその状態から解放された。


「それは契約印だ。今は契約したばかりだから見えているが、五分もすれば消えてしまう」


 俺と契約したキラはそう呟く。

 見ると俺の腕には水色に光るタトゥーのような紋章が浮かび上がっており、そこからキラの魔力を感じ取ることができた。


「これで契約は完了だ。ではこれからよろしく頼むぞ、マスター?」


 キラはそう言うといきなり俺に抱きついてきた。


「な!?ちょ、ちょっと待て!?いきなりなんだ!?」


「ふふふ、もう妾たちは一心同体の様なものなのだ。これくらい当然だろう?」


「全然当然じゃないし!というか、当たってるから!」


 キラは俺の胸に飛び込むような形で俺に抱きついてきているため、あの柔らかいものがダイレクトで当たっているのだ。こんな状態耐えられるわけがない!


「あ!キラ!ハクにぃから離れて!そういうのは禁止なんだから!」


「そうです!抜け駆けはずるいです!」


「キラ………後でお仕置き………!」


「むむむ、そういうアプローチの仕方もありましたか………。これは研究しなければなりませんね」


 と、アリエス、シラ、シル、エリアの順によくわからないことを呟く。

 というか早く助けてくれええええええええええ!


「可愛い反応をするなマスター?これはからかいがいがあるな」


「ひぃ!?」


『相変わらず、苦労する体質じゃな主………』


『私も同意見じゃ主様……………』




こうして俺とキラの契約は終わり、新たな仲間が加わったのだった。








 その後、キラは大量に集まった精霊たちを元の住処に戻るように伝え、自身のこれからを精霊たちに告げた。その様子はまるで一種の星空のようで、キラの新たな門出に精霊たちは心の底から喜んでいるようだった。

 それはキラが精霊たちを愛し続けたことにより、キラ自身も精霊たちに愛されていたということだろう。キラは優しい笑顔で精霊たちがこのダンジョンから去っていくのを見届けると、俺たちのところまで近づいてきた。

 かくいう俺たちはその光景を眺めつつ、これからのことについて話し合っていた。とりあえずキラというイレギュラーな出来事はあったが、無事に第二神核を倒すことができた。

 であれば次は第三、第四、第五のどれかのダンジョンに向かうのがセオリーだろう。

 とはいえ先程シルたちから言われたようにしばらくは体を休めるつもりだが。

 俺はこのタイミングでプチ神妃化をとき、もとの金髪交じりの黒髪に戻った。するとその瞬間いきなり力が抜け、脱力感が俺を襲う。

 仮にも、十二階神以上の存在と戦っていたのだ。俺の体にも見えない疲れがたまっているらしい。

 ということでとりあえず俺たちは新しい仲間のキラををつれ、シルヴィニクス王国に戻ることにした。先程は翼の布(テンジカ)を取り出そうとしたが、それでは時間がかかりすぎる上に疲れてしまうので俺は転移で王国に向かうことに決める。

 俺は一度パーティー全員を顔を見渡すと、その全員に問いかけるように声をあげた。


「それじゃあ、帰るか!」


 その瞬間、俺たちの姿は第二ダンジョンから跡形もなく消えたのだった。









 午後四時。

 シルヴィニクス王国に戻ってくると時計の針は、数字の四を指し示していた。だがいまだに人の量は減っておらず、魔武道祭終了の名残を残している。

 なにやら、酒を飲んで盛り上がっている声や、俺やエリアの真似をして剣を振るう子供達の姿が見られた。

 俺たちはその光景を横目に見ながら、。王城まで向かう。

 正直言って王城の前まで転移しても良かったのだが、まああまり能力に頼りすぎるのもまずいかな、と思い俺たちは関所から王城までは歩くことにしたのだ。

 それとキラが人間の生活に興味津々だったというのもあるのだが。

 俺たちはそのまま中央広場を通過し、王城まで一直線に進む。


 しかしここで聞きなれない声が俺たちの後ろから飛んできた。


「やっと見つけたぞ、ハク=リアスリオン!!!」


 俺はその声に反応して後ろを振り返ってみると、そこには魔武道祭で見事にエリアに叩きのめされた聖剣士カリス=マリアカが俺に向かって憎悪の感情をさらけ出しながら、睨みつけていたのだった。


次回はあの自信過剰な聖剣士をボコります!

誤字、脱字がありましたらお教えください!

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