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第三十六話 王都

さてようやく王国に到着です!

そしてここから物語は動きだします!

では第三十六話です!

「で、でかい…………」


 俺たちの目の前には、高くそびえ立つ城壁と一体どれだけの面積があるのかわからないほど大きな王都が広がっていた。

 俺たちは、関所まで移動すると、既にそこには数多くの人が列をなして並んでいた。さすがに王都となるとルモス村の比ではなく、三百人ほどの人が規則正しく一直線に並んでいる。俺たちはその最後尾に並び自分たちの番を待った。おそらくこの関所を通る際は身分証明できるものが必要になる。俺とアリエスは冒険者カードがあるが、残念ながらシラとシルにはそんなものはない。

 しかし心配するなかれ。

 こういうこともあろうかと、ルモス村を出る前にセルカさんから俺のメイドである証明書を書いてもらっていたのだ。セルカさん曰く、絶対に必要になるから、ということらしい。実際に必要になったのでさすがはセルカさんというところなのだが、セルカさんは冒険者ギルド職員のためこういうこともよく引き受けているらしい。

 まるで何でも屋である。

 本人に言うと怒りそうなので言わないが………。

 そしてとうとう俺たちの番になった。今回は本物の王女様がいるのでかなり騒がれそうだが、上手く立ち回るだろうか。

 するとギルが馬車から降り、関所の門番になにやら話しかけている。しばらくするとその門番がこちらに近づいてきて話しかけてきた。


「お話は伺いました。王女様の身が危ないところを助けていただいたそうで、本当に感謝いたします。聞けばこの国に何か用があるようですので、入国の許可を出したいのですがよろしいですか?」


 …………。

 おいおいおい、それは俺に聞くことではないだろう!というか警備甘くない!?そんなのでいいの!?


「こちらからすれば願ってもないが、いいのか?身分証明とか色々手続きとかあるんじゃないのか?」


「いえいえ、王女様を助けて頂いた方にそのような無礼は出来ません。証言にいたしましてはこのギルから取れていますし、無条件で歓迎いたします」


 うーん、なんか簡単すぎるくらい何もなくことが進むな。何か裏がありそうで少し怖いんだが………。

 俺がそう悩んでいると、後ろからいきなり何かに抱きつかれた。


「そうです!私を助けてくれたハク様を無礼に扱えるわけありません!」


 おいおい!王女様がこんなどこの馬の骨かもわからない奴に軽々と抱きついていいのか!?


「ハハハ、王女様もそう仰っているようですし、我々からはなにも言いませんよ。むしろその言葉を無視して、あなたを拘束しようものなら私が殺されてしまいます」


 なんだそれ、物凄く怖いな……。

 なんというかここに来て、王制というか身分の違いの発言力の強さを思い知ってしまった。さすが王女様だ。


「で、では遠慮なく………」


「そういうことだ。俺はエリア様を一応送り届けてくるが、お前たちはどうする?」


 そうギルは俺に問いかけてきた。


「送り届ける?さっきは関所に預ければ終わりとか言ってなかったか?」


「迎えがの奴が来てるんだよ。俺の役目はそこまで送り届けるまでだ。で、どうするんだ?なにかやることがあるんだろう?」


 まあ本当なら直ぐにでも第二ダンジョンに向かいたいところだが、一応今後の方針も考えたいのでとりあえずは冒険者ギルドに向かうのが得策だろう。


「一応、冒険者ギルドに行きたいと思う。そこでなにか一つ二つクエストでも受けてとりあえず今日の宿代くらいは稼ぐつもりだ」


「そうか、なら俺も後から向かうぜ。俺も今日はもう一仕事したいしな。あ、場所はこの門を越えた先に噴水広場がある。そこに地図が置いてあるはずだから、それを見るといい」


「ああ、わかった。それじゃ」


 俺はそういうといつまでも俺の体に侍りついているエリアをなんとか引き離し、馬車から降りる。それに続いてアリエスたちも続々と馬車から降りてきた。


「ハク様!もしお暇でしたら、王城にお越しください!私、歓迎いたしますので!」


 そんな簡単に決めていいことなの!?仮にも最大防御の砦である城に入る許可を軽々出しちゃっていいものなんですかね!?


「それと、アリエス、シラ、シル。あなたたちと話せて楽しかったですわ。またお話しましょう!」


「ええ、こちらこそ!でもあんまりハクにぃにくっつき過ぎたらダメなんだからね!」


「はい。こちらこそお願いいたします、エリア様」


「お願いしますエリア様………」


「よし、行くぞ皆」


 俺は仲間に声をかけ、その場から離れる。

歩き出せばそこはルモス村とは比べ物にならないほど大きな都市であった。

建物は比較的白色のものが多く、石灰を固めたような肌触りで、それは太陽の光を反射し白々と輝いている。

 またその都を練り歩く人々は、色々な人種の人たちもいて中にはちらほら獣人族のような人も見受けられた。

 しかしそれは基本的にハーフであり、純潔の獣人族はやはり発見できなかった。いくら王都といえど獣人族を嫌う風習はまだ根強く残っているようだ。

 俺たちはギルに言われたように関所から真っ直ぐ突き進み、噴水広場までたどり着いた。そこには大きな看板のようなものが立っており、そこになにやら山のように積みあがったパンフレットのような物が置いてあった。


「あ、あれが地図だね!私とってくるよ!」


 とそれを見つけるなりアリエスは人ごみを避けるように走り出した。


「お、おい!迷子になるなよ!」


 するとアリエスは直ぐにそこから地図を一枚手に取りこちらに戻ってきた。


「はい、ハクにぃ!これでいいでしょ!」


「ああ、ありがとうアリエス。で、冒険者ギルドはいったいどこだ?」


 俺はアリエスから地図を貰いそれをまじまじと見つめていた。さすがは王都。地図を見てもなかなか目的地が発見できない。その地図には、他にも色々なことが書いており、礼拝堂であるとか、一押しのレストラン、オススメの宿など、本当にたくさんの情報が載っていた。

 これは一日で踏破するのはほぼ不可能だな。


『お、これではないか主様?その現在地から直ぐ近くの左にあるやつじゃ』


「ん?…………ああ、どうやらそうらしいな。ありがとう、リア」


『フフン、お安い御用じゃ』


 俺はその冒険者ギルドの位置を確認すると、一応皆にこれからのことを確認してみた。


「えー、俺が今のところ独断で判断して行動しているが、皆、どこか行きたいところがあれば言ってくれよ?なにせ王都についたばかりだし皆疲れているだろう?もしなにかあれば遠慮なく言ってくれよ?」


 するとアリエスたちは順に俺の問いに返答した。


「うん?全然問題ないよ。私はハクにぃについていくだけだしね。目的地はハクにぃにお任せってことで!」


「はい、私も問題ありません。ハク様のご意志に従うだけですので」


「大丈夫です………ハク様」


『もとより、わしは主についていくと決めておる。文句はないぞ』


 はあ………。

 これはいいことなのだろうか?いざとなったときに自分の意志で行動できるのか、少々心配になってしまう。

 とはいえ、今は特に問題なさそうなので、俺たちはその足で冒険者ギルドへ向かった。

 距離的には二百メートルとないはずなのだが、なにせこの人の量だ。歩く道どころか、気配探知を使っていなければ仲間とも逸れてしまいそうだ。

 おそるべし王都。異世界とはいえ、ここまでの人口が集中している場所があるとは。これは常に気配探知を発動していなければならないかもしれない。

 地図によれば、徐々に近づいていっているはずなのだが、なかなかその建物が見えてこない。それも全て目の前を埋め尽くしている人たちが原因なのだが、ここで能力を使うわけにもいかないので我慢して突き進む。

 すると、明らかに冒険者ギルドらしい建物が俺たちの前に姿を現した。それはルモス村のそれとは明らかに規模が違い、建物の面積も遥かに大きい。

 ギルドの扉は、たくさんの人が通ったであろう傷がいたるところについており、それだけで歴戦の戦いの情景が想像できた。

 俺たちは、そのギルドをたっぷり十秒ほど眺めた後、シラとシルの幻術が正常に起動していることを確認し中に入る。

 そこは数え切れない数の冒険者がおり、片手剣や大剣、弓に槍、杖に短剣と様々な武器を装備した戦士たちが居座っていた。

 さすがに数々の戦いを潜り抜けてきたような雰囲気を漂わせている冒険者がほとんどで、いわゆるルーキーと呼ばれるものたちは逆に少ないのが現状だ。

 俺たちはそのままギルドの受付に向かう。そこには二十人近くの職員が常に冒険者の対応しており物凄く忙しそうに感じた。

 俺はそのなかでも直ぐに順番が回ってきそうな場所を選び、列に並んだ。

 隣にいるアリエスは周囲の迫力に少しオドオドしており不意に俺の手を握ってきた。俺はその手を出来るだけ優しく握り、アリエスにアイコンタクトで、心配するな、と言うと再び自分たちの番が来るのを待つ。

 そしていよいよ俺たちの前の人が受付から去り、俺たちの番となった。

 俺は一歩前に出てその受付の人に話しかける。


「すまない、俺たちはついさっきこの国に来たのだが、この冒険者ギルドにおいての決まりごとのようなものがあるのなら教えてほしい。一応冒険者登録はしてあるから問題はないと思うのだが?」


 すると、俺の対応をしてくれるギルドのお姉さんは軽く微笑むとこう答えた。


「はい。とくに他のギルドと違う点はございませんので問題なく依頼を受けることが出来ます。ですか一応冒険者カードをご提示していただけますか?こちらのギルドでクエストを受けるには位置情報の更新が必要ですので」


「ああ、わかった」


 俺はそういうと、俺とアリエスの冒険者カードを受付のお姉さんに手渡した。


「はい、ありがとうございます。えーと、ハク=リアスリオンさんとアリエス=フィルファさんですね。ランクは…………え、Sランク!?こ、これは失礼しました!」


 受付のお姉さんは俺の冒険者カードに書かれているランクをみると、そのまま腰を九十度に傾けお辞儀をしてきた。


「一体何を慌てているのかわからないが、Sランクというのはそんなに珍しいのか?」


「え?は、はい。それはもう。物凄く珍しいです。私がこのギルドで働くようになってからSランクを見たのは初めてですから」


 ふーん、そういうものなのか………。

 どうりでギルが驚いていたわけだ。これは今後自分のランクを明かす際は注意しないといけないかもしれない。


「別に俺はSランクだからと言って威張ることもしないから、できれば先程のような接し方で頼む。畏まられるのは苦手なんだ」


「は、はい……。では更新しますね」


 するとなにやらそのお姉さんはカウンターの下から、俺もよく見覚えのある球体を取り出した。冒険者登録用の魔具である。

 お姉さんはそれに俺とアリエスのカードをセットするとそこに何かを書き込んでいった。すると魔具が少し光り輝いた。それはものの数秒で終わり、どうやら更新されたであろう冒険者カードをお姉さんは差し出してきた。


「はい、更新は完了しました。では何かクエストでも受けていかれますか?」


「それじゃあ、Dランクぐらいの討伐クエストをいくつか見繕ってくれ」


「畏まりました。では少々お待ちください」


 受付のお姉さんはそう俺たちに言うと、カウンターの奥に消えていった。なぜ俺たちがDランクのクエストを請けるかと言うと、簡単に言えば慣れだ。ここは見慣れたルモス村ではないし、なにが起きるか想像がつかない。よって周辺調査もかね、少し小さめなクエストを受けることにしたのだ。

 しばらくすると受付のお姉さんが何枚かの紙を持って戻ってきた。


「Dランクの討伐クエストですと、現在五つほどこちらに届いております。どちらにいたしますか?」


 そう言って俺はカウンターに並べられた依頼書を見てみる。どれもゴブリンやらオークや小粒の魔物しか名前を連ねてないが、まあ別に今回は強い魔物と戦いたいわけではないので適当に選ぶことにする。


「それじゃ、これとこれを受けたい。出来るか?」


「はい、大丈夫です。では受理しますね」


 ちなみに、俺がセルカさんたちのように敬語を使わないのはあくまで下に見られないようにするためだ。たしかにSランクであることを見せれば、ある程度の輩は尻すぼみするだろうが、これだけの規模のギルドだ。堂々としていたほうがいいだろうと俺は判断したのだ。

 そして俺はクエストの手続きをしているお姉さんに、もう一つ大切なことを聞いた。


「一つ聞きたい。俺たちはここに第二ダンジョンに挑むためにきたのだが、そこにはいけるだろうか?」


 すると受付のお姉さんは申し訳なさそうな顔をしてこう答えた。


「申し訳ありません。第二ダンジョンはただ今進入禁止なんです。数日後に開かれる魔武道祭が終わるまではそれは解除されないんです。なんでもダンジョンを開いておくと、魔武道祭までそこに篭ってしまう人がでるそうで。ですから今は入れないんです」


 な!?なにーーーーーーーーーーーーー!?

 こ、これは想定外だ。一刻もはやくダンジョンに向かいたいのにそれができないとは………。

 これは一体どうしようか……。

 そう、俺が考えているとなにやら後ろから声がした。


「よう、坊主。ちょいとこのお嬢ちゃんたちを貸してくれや。いいように遊んでやるからよ」


「あ?」


 俺は反射的にその男を睨み返す。


「そう、怖い顔をするんじゃねえよ。大人しくしておけば痛い目は見ないぜ?」


 するとその男のさらに後ろからいやらしい顔をした男五人が姿を現した。

 うん、これはいつものパターンだ。完全にルモス村のときと一緒である。どこに行ってもこの手の輩はいるらしい。

 たしかに、アリエスとシラとシルは超がつくほど美人だし、男からすれば襲いたくなるのもわかるのだが、こいつらは俺の仲間だ。そう簡単に手を出させるわけがない。


「あ、あなたたち!止めなさい!ギルド内での暴行は禁止です!でないとあなたたちが……」


「ああん?ギルドの規約にはそんなものなかっただろう?だからこれは全て自己責任だ!………さあ坊主、そのお嬢ちゃんたちをわたしな、明日には返してやるからようフヒヒヒヒ」


「自己責任と言ったな?であればここで俺に排除されるのも自己責任というわけだ」


「は?」


 次の瞬間、俺は濃縮された無言の言霊を六つはなった。


「「「「「「ぎゃあ!!!」」」」」」


 それは的確に奴らの鳩尾を打ち抜き、完全に気絶させた。


「奴らは自己責任と言った。だからこの結果も問題ないだろう?」


 俺はそう受付のお姉さんに問いかけた。


「………は、はい!大丈夫です!そ、それにしてもお強いですね………さすがSランクです」


 いや、これぐらいは鍛えれば誰でもできると俺が口にしようとした瞬間、ギルド内、さらには王国中に、いきなり放送が鳴り響いた。


『警告、警告。ただ今このシルヴィニクス王国に大量のワイバーンが接近しております。冒険者の方と近衛騎士団の方は直ぐに関所まで集合してください。くりかえします………』


「ワイバーン、だと?」


 俺はなにか聞きなれない単語を耳にし、首をかしげるのだった。


次回はワイバーンとの戦闘になります!

誤字、脱字がありましたらお教えください!

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