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第三十話 隠されていた人格

ようやくこの話にスポットがあたります。

このエピソードは物語の根幹に関わってくるお話です!

投稿当初はかなり心配だった第三話の謎が少しだけ解き明かされます!

では第三十話です!


赤の章(エリアブレイク)


 俺はそう言葉を発すると、こちらに向かってくる神核に対し、無造作にエルテナを振り下ろした。その太刀は一切の音を発さず空気抵抗もまったくない一撃だった。

 今までの俺とはまったく違う攻撃をしてきたことに一瞬戸惑った神核だったが、直ぐに俺の剣を弾くと俺に肉薄し、残された一本の腕で俺を突こうとした。


「死ねええええぇぇぇぇぇ!!!!」


 しかしそれは俺の眼前でぴたりと止まり、神核はワナワナと震えだした。


「う、あ、う、グハッ!?な、なんだこれは!?お、俺のふ、不死性が、き、消えている!?」


 神核は非常に動揺している様子で、俺を睨んできた。

 それもそのはずだろう。俺は奴が言ったように奴の絶対の防御を完全に破壊した。それは正確に言えば少し違うのだが、そう思ってもらってもなんら変わらないことを俺はやったのだ。

赤の章(エリアブレイク)

 俺の剣技の一つで、黒の章(インフィニティー)と同じ、俺の得意技だ。

 またの名を空間干渉剣技という。

 この世に存在するもの全ては、体の現在位置と魂という名の命を三次元座標に固定されている。そしてそれは如何なる世界《箱》の中でも等しく作用するのだ。

 例えば、俺たち人間は、地球という星に住んでいる。これは一種の世界であり箱なのだ。またそれはさらに大きな括りに分類することが出来る。太陽系や天の川銀河、はたまた宇宙そのもの。ただしこれは突き詰めれば永遠に行われる鼬ごっこと同じであり、果てはない。

 しかしそれでもこの世の全てのものは何かしらの箱に繋ぎとめられている。

 俺は奴を繋ぎとめている箱と奴を完全に切り離したのだ。それはすなわち完全な存在の否定であり、あいつは生きていながら生きた定義を失ったのだ。

 であれば、奴の不死性はどうなるのか。

 無論、世界そのものと切り離されてしまったのだから、発動はおろか、もうあいつに命の貯蔵はない。今のあいつに出来るとすれば、槍を振るうか、先程の黒い触手を使うかしかできないだろう。


「悪いが、お前を世界という箱から切り離させてもらった。もうお前の不死性は消えたんだよ」


「な!?な、な、な、なんだと!?き、貴様!それがどれだけとてつもないことかわかってやっているのか?」


「さあな。俺はそんなこと考えたこともないし、考えたくもない。俺がこの力を持って突きつけるのは、お前の敗北だ」


 すると神核は破壊された顔をさらにゆがませ、いたるところから血をだし叫びだした。


「ち、ちくしょおおおおおおおおお!」


 そして俺はその姿をしっかりと眺めた後、神核に背を向けてアリエスたちの下に戻っていく。どうやらアリエスはある程度の魔力は取り戻し、何とか自分の足で立てるほどには回復したらしい。

 俺はそんな三人を見て安堵すると、手を振って勝利を伝えようとした。


 だが、それは間違いだった。

 俺はここで確実に神核に止めを刺しておくべきだったのだ。

また神核が正気に戻っていないことを気にしておくべきだったのだ。


 刹那、俺の真横を何かが通り過ぎた。

 次の瞬間、赤い花が散った。

 今にも倒れそうだった、アリエスが黒い触手の刃を受け弾きとんだ。

 シラとシルは目を見開いて何が起きたのかわからないといった様子で固まっている。

 無論、それは俺も同じだ。

 アリエスはそのまま地面に倒れこむと、首元から大量の血を流しだした。


『主様!!!!』


 俺はそのリアの言葉に意識を取り戻し、全速力でアリエスの元に駆け寄る。

 アリエスの首からはドバドバと赤く生ぬるい液体が流れ出し、目も霞み始めていた。


「「アリエス!!」」


 一瞬送れて現実を理解したシラとシルも駆け寄ってくる。

 するとアリエスは血にぬれた手で俺の手を握ってこう言ってきたのだ。


「ご、ごめ……ね…?…………わたし……ドジ踏んじゃった……」


「もういい!!!喋るな!!!」


 俺はそう言うと、すぐさま完治の言霊を唱える。だがしかしその傷は一向に塞がらない。


「なんで!なんでなんだよ!なんで塞がらない!!」


 その瞬間、俺の後ろからあざ笑うかのような声がした。


「ふ、フハハハハ。これがこの触手能力だ!!傷は再生しないし、絶対にその人間は死ぬ!なにせこれは死を叩き込む能力だからな!」


 死を叩き込む能力だと!?

 どうりであの触手から嫌な気配がしたわけだ。


「クソッ!こうなったら……。リア!あれを使うぞ!いいな!」


『ああ、もちろんじゃ!』


 そう言って俺は蔵の中なら、一本の槍を取り出す。


「来い!万象狂い(リライクラス)!」


 すると俺の手の中に緑色の装飾槍が現れる。

 万象狂い(リライクラス)

 文字通りこの世の全てを捻じ曲げてしまう、リア秘蔵の神宝である。それは絶滅する乖離の剣(アニシオン)と同等クラスの武器であり、やはり現界するだけで空間の壁がバリバリと崩れ始めている。

 だから処理は手短に行わなければいけない。


「この者の運命を剝離せよ!」


 その瞬間、アリエスの体をやらかな緑色の光が包み、体を修復していく。

 ものの数秒でアリエスの体は完全に回復した。


「な!?ば、馬鹿な!?仮にも死の呪いだぞ!?それを無理やり破壊するだと!?ふざけるなああああああ!!!」


 アリエスは自分の体が治ると、直ぐに体を起こしいつもの笑顔を向け、こう呟いたのだ。


「ごめんね、ハクにぃ……。私が油断したから皆に迷惑かけちゃった……。私って成長しないな……はは」


その言葉が最後まで言い終わる前に、元気になったアリエスを見て、シラとシルが二人同時にアリエスに抱きついた。


「「アリエスーー!!」」


 二人の目には大粒の涙が浮かんでおり、それでいてどこか嬉しそうだった。

 すると、それをアリエスの頭の上で見ていたクビロが俺にこう呟いてきた。


『うん?主、どうしたのじゃ?なにかおかしいぞ?』


 そしてその後に頭の中でリアガ叫びだす。


『主様!!!!そ、それはだめじゃ!!それ以上引っ張られるではない!戻ってくるのじゃ!さもないと……』


 しかし、そのリアの言葉が言い終わるよりも前に俺の意識は虚空に飲み込まれた。








 俺は何をしていたんだろう。

 そんなことをふと考えてしまう。

 あれほど注意していたはずだった。

 仲間を傷つけないために、努力してきたつもりだった。

 でも最後の最後でまた油断した。

 これでは真話大戦のときとまったく一緒じゃないか。

 俺に力があろうがなかろうが、結局俺は自ら仲間を傷つけてしまう。

 俺はアリエスにあんな顔をさせるために戦ってきたわけじゃない。


 俺は弱い。なにもかも。力も、心も、考えも。


『そうだ、お前は弱い』


 もう嫌だ。周りで、俺の近くで誰かが傷つくのは。


『なら、変われ。所詮お前は俺の器を勝手に使っているだけだ。俺が全てやってやる』


 ………………。


 その声は確実に俺の意識を飲み込んだ。






 アリエスはハクに傷を治してもらい、シラとシルに抱かれ、嬉涙を流していた。

 だがしかし、そこでアリエスは気づいてしまった。

 目の前にいる青年がいつもの青年ではないということを。


「は……ハクにぃ……?」


 するとその青年は不意に立ち上がり顔をあげた。

 その顔は完全にいつもの青年のものではなかった。

 目は確実に釣りあがり、眉間には皺を寄せ、放たれているオーラはかつて見たことがないほど禍々しいものになっていた。


「ちょ、ちょっとまって……。は、ハクにぃどうしたの?いつもと感じが全然違うよ……?」


 そう言うと、アリエスの服に顔をうずめていたシラとシルもその青年の方を向いた。

 そう瞬間、二人の顔が凍りついた。明らかにいつもと違う青年の姿を見て。

 青年は、アリエスの問いには一切答えず、部屋の中央に蹲っている、神核の下へと足を向ける。

 青年は神核の目の前に立つと、無言で神核を見下ろした。


「ちくしょおおおおおおおお!なんでだ!星神はお前を殺せと言ったんだ。俺はなにも悪いことはしていない……。くそが!くそが!くそ…ガフッ!?」


「うるさい、だまれ」


 青年は喋り続ける神核の喉を左腕で持ち上げ、首を絞めた。


「き、きさま……い、いったいなにを……」


「何を?馬鹿かお前は。俺は今お前を殺すためだけにいる。あいつじゃ、甘すぎてお前を倒すなんて出来ないだろうからな。………それと、災厄者?人類滅亡?まあよくもそんなに人のことを甚振ってくれたもんだ。俺からすればお前が災厄者なんだよぉ!!!」


 そういって、青年は一方的な蹂躙を開始した。

 神核を宙に投げ出し、体のいたるところに拳や蹴りを叩き込んでいく。

 今の神核は不死性もなく、完全に無防備な状態だ。それをいいことに青年は全力で殴りかかっている。


「ハハハハハハハハ!いいざまだぜえ!!……どうだ今の気分は?自分が殺そうとしていた奴に、ボコボコにやられる気分は?」


「…………」


「チッ。もう喋らなくなったのかよ。つまらねえ。……そうだ、今からお前の洗脳解いてやるよ。お前もそっちのほうが本望だろ?」


 そういって青年は床に転がっていた、白い魔剣、エルテナを足で蹴り飛ばし左手でキャッチすると、神核の胸元にその剣先を突きつけた。

 一方そこから離れた場所でその様子を見ていたアリエスは、以前の記憶を思い出していた。

 それはアリエスと青年が初めてあったときのこと。青年は盗賊たちを一瞬で弾き飛ばした後、一瞬だけ声色を変えて明確な殺気を滲ませていた。

 今回の青年の雰囲気はそれよりも遥かにどす黒いが、もしかすると、もう既にあのときに片鱗を表していたのかもしれない、そうアリエスは思えて仕方がなかった。


「それじゃあ覚悟しろよ?」


 そう言って青年は神核の胸に剣をつきたてた。

 その瞬間パリーンッという音とともになにかが弾けとんだ。


「お、俺は今まで……いったい何を……」


 見れば神核の雰囲気が先程と明らかに違っていた。それは本当に人類の守護者たる姿に見えた。


「ああん?お前俺たちにやったこと覚えていないのか?」


 すると、神核は一瞬何かを考えたような面持ちになり、それからこう話し出した。


「…………。いや、覚えている。覚えているとも。俺としたことが随分と大きな過ちを犯したようだ……」


「はっ!だったらこれからどうなるのかわかるよな?大人しくお前は俺に……チッ、もう時間切れか……。くそ、命拾いしたなお前」


 そう青年がいた瞬間何かの糸が切れたように、青年は地面に倒れ伏した。

 それを見ていたアリエスたちも青年の雰囲気がいつものものに戻ったことを悟り、全力で青年の下に駆け寄った。


「「「ハクにぃ!」様!」様……!」


 そうして第一神核との戦闘が完全に幕を下ろした。

 しかし、先程青年の表層に現れた存在のことはまだ誰も知らない。


とうとう神核との戦闘が終了しました!

ですが神核との会話は次回もまだ続きます!

誤字、脱字がありましたらお教えください!

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