第二十七話 第一ダンジョン潜入
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では第二十七話です!
翌日、俺たちは全員朝五時に起床し宿屋をでた。
セルカさんたちには昨日あらかじめ言ってあるので俺たちは直ぐに第一ダンジョンのある西の空へ飛びだった。
ルモス村から約三十キロ離れたところにある第一ダンジョンは、地上に巨大な大穴を空けたような巨大な洞窟になっている。階層は全十層。下の階層に行くにつれ罠と魔物の強さが上昇する仕組みになっており、中には宝箱が出現しアイテムが入っていることもあるという。
基本的にこの第一ダンジョンは、Aランクの冒険者ならば攻略可能と言われており、これまでもAランク以上の冒険者が最下層の魔物を幾度となく討伐しているらしい。
当然俺はSランクなので本来ならば余裕で攻略できるはずなのだが、それは神核が出てこなかったらの話だ。
正直なところ奴はSSSランクの魔物よりも強い。もしそんな奴が出てきたらAランク程度の冒険者では太刀打ちできないだろう。
というわけ、なんの問題もなく、第一ダンジョンの入り口に到着。空中飛行というのは非常に便利だ、ということを痛感する瞬間である。なにせ、魔物にまったくエンカウントしない!今さら道中にいる魔物など相手にならないので、実にいいことだ。
「これがダンジョン……。すっごく大きいんだね……」
「そ、そうね……。少し気後れしちゃいそう……」
「ちょっとこわい…………」
アリエス、シラ、シルが口々に感想を述べるが、この程度でビビッていては話にならない。
「おい、早く入るぞ。多分ダンジョンの中はこの比じゃないぞ?今のうちに慣れておけよ?」
と言って俺はズカズカと一人で洞窟の中に入っていく。
「あ!ま、まってよハクにぃ!」
「お、置いていかないでくだーい……」
「まって、ハク様……」
なんとも情けない仲間だ。いや、女の子っていうのはこんなものなのか?
男の俺からすれば、まさにゲームに出てくるような洞窟は、むしろわくわくしているのだが。いや、神核のことさえなければメチャクチャ楽しかっただろうに……。
そして俺は気配探知を発動し、アリエスたちのことを気にしながらダンジョンへと足を踏み入れたのだった。
ただ今、第二層。
既にダンジョンに潜入してから一時間ほど経過していた。このダンジョンはどうやら逆ピラミッド上に形成されており、下層に進むにつれ魔物の強さに反比例して階層面積が小さくなっていくらしいのだが、俺たちはまだ全体の十分の二も攻略できていなかった。
というのも、ダンジョン内は先達の冒険者が親切にともし火を置いていってくれているおかげで意外と明るいのだが、それでもアリエスたちには十分な恐怖らしく、俺の体や腕に絡み付いて離れようとしないのだ。
第一層はほとんど魔物も出現せず、罠らしい罠もなかったので、十五分程度で突破することが出来たのだが、第二層はそう簡単にはいかなかった。
いや、俺一人だけなら問題ないんですよ……。まじで。
まず初めに発動したトラップは、目の前からくもの巣が降ってくるというダメージ皆無の罠である。
しかしアリエスたち三人は途端に絶叫し俺の体にしがみついてきたのだ。こうなっては俺もろくに動くことが出来ず、言霊でそれを吹き飛ばして先に進む。
今度は何度も見かけたことがあろうゴブリンが一体登場した。さすがにこれは大丈夫だろうと思い安心していたのだが、またしても絶叫の嵐となった。
おい!シラとシルはともかく、アリエスは対処できるだろう!と思いはしたのだが涙目になってまったく動こうとしないので、仕方なくこれも言霊で吹き飛ばした。
そんなこんなで、まったく攻略が進行しない。
予想だにしなかった事態だ。
これはどうしたものか…………。と考えることさらに三十分、ようやく第三層の階段を見つけたのだった。
ただ今、第五層。
ここに来て攻略のスピードが格段にあがった。
それはこの前の層、第四層に原因があった。
第四層は言うなれば魔物の巣窟であった。それも緑や黄色といったワーム系の。
これはさすがに俺でさえ気持ち悪いと思ったのだが、かくいう三人は、何かが吹っ切れたように静かに笑い出すと、その魔物めがけて一直線に走り出した。大蹂躙の始まりである。シラとシルは獣人族なだけあって身体能力が抜群で、俺が二人に与えた、短剣でバッサバッサっと魔物を切り飛ばしていった。アリエスはというと氷魔法の中級呪文、「氷の大河を使い、何十体もの芋虫たちを抹殺していった。
正直怖いんですけど……。
何がって、アリエスたちが……。そしてワーム諸君、御免!
俺はなぜか江戸時代の侍のような心持になりながら、魔物を狩っていった。
そして第五層。
もう完全に吹っ切れたようで、アリエスたちは、
「なんか、ダンジョンって言う割にはけっこうしょぼいよね?」
「そうね……。罠も魔物も大したことないし。このまま最下層まで行っちゃうんじゃないかしら?」
「ぜんぜん余裕……」
え、ええー。
なんかさっきまでの雰囲気が嘘みたいだな。ここまで人は変わるものなのか……。
常識崩れちゃうなー……。
そんなことを思いながら俺たちはダンジョンをひたすらつき進む。
すると、明らかに今までと違う空気感を醸し出す扉が、俺たちの前に姿を現した。
「これは……。なんだ?」
「さ、さあ……。アリエス、わかる?」
「うーん、私はこんなの知らないなー。シルは?」
「私も……わからない……」
君たちはチェーンメールか何かですか!!!
なにその見事なコンビネーション!?
仲がいいのはいいことなのだが、俺だけ疎外感が半端ない。
うう……。お兄さん悲しいです……。
ということで俺は気配探知で中の様子を探ってみる。そうすると部屋の中心になにやら一つだけポツンと反応が確認できた。
ははーん。これは、あれだ。いわゆるあれだ。
そう、簡単に言えば中ボス部屋なのだろう。明らかに仰々しい装飾の扉に、部屋の中の佇む一つの気配。おそらく間違いないだろう。
「多分これは、中に魔物がいる。それもそこそこ強い奴だ。みんな気をつけて入ろう」
「「「了解!」です!」です……!」
返事まで息ぴったりなんですね…………。
そして俺は扉に手をかけ部屋の中に入った。
そこには二つの首を持ち、イノシシのような顔をした五メートルほどの二足歩行の魔物が立っていた。
そいつは俺たちの存在に気がつくと、「グゴアアアアアア!!!」という声を上げて襲い掛かってきた。
初撃は腕に持つ二本の斧を振り下ろしてきたので、それは俺がエルテナで弾き返す。そして俺は仲間に対してこう叫んだ。
「この敵はアリエスに任せる!おそらく今のアリエスならば問題なく倒せるはずだ!いつもの成果を見せてくれ!」
そして俺とシラとシルは部屋の壁際まで下がり、戦闘を眺めることにした。
「クビロ、オカリナ!いくよ!」
『任せるのじゃ!』
アリエスは俺の声に戦闘態勢を以って答える。
『ほう、これは思い切ったことをしたものじゃのう主様?いくら五層のボスとはいえアリエスにはちと荷が重いのではないか?』
『いいんだよ。むしろそのくらいのほうがちょうどいい。楽勝で勝てる奴と戦っても成長しないからな』
そうして、俺はアリエスの戦闘を観察することにした。
「アイスボール!」
するとアリエスは初級氷魔術のアイスボールを発動し、二つ頭のイノシシに投げつける。
しかしそれはあっけなく敵の斧にはじかれ空に消えていった。
だがアリエスはそれが壊される前に既に次の行動に入っており、リブロールを開くと次の魔術を発動した。
「氷の地塊!」
それはすぐさま地面に魔法陣を描き出し二つ頭のイノシシの足元に氷の棘を出現させる。それはなかなか高威力で敵の足を串刺しにすると、いきなり砕け散った。その破片が敵の体を傷つけ、さらにダメージを与えていく。
だが二つ頭のイノシシも負けておらず、二本の斧を振り上げると、そのまま地面に振り下ろして斬撃を放ってきた。
『アリエス!右に避けるのじゃ!』
「うん!」
クビロの指示も入り見事その攻撃をかわすとアリエスはまた次の魔術を発動した。
「氷の霧!」
その瞬間俺にも伝わってくるほど、部屋の気温が下がった。それも一気に氷点下まで。
それはこの部屋全体を包み込み、次第に壁を凍りつかせる。
俺の隣ではシラとシルがとても寒そうにしていたので、青天膜を発動し、一応その冷気をガードする。
一方アリエスは、そのまま凍りついた床を滑りぬけ、手に持った氷剣で次第に凍り始めている二つ頭のイノシシの体を切りつけていった。
その攻撃は血を一滴も垂らすことなく敵に切り傷を刻んでいく。二つ頭のイノシシはもはやうめき声も上げることが出来ず、手に持っていた斧を無我夢中でアリエスに向かって投げ飛ばす。
しかしアリエスは既に最後の魔術を発動し終えていた。
「氷の終焉!!!」
その次の瞬間、部屋の天井から物凄く巨大な氷の雪崩が降り注いだ。
氷の終焉。
上級氷魔術。氷塊を大量に含んだ雪崩を頭上から叩き落す、世界の終焉にふさわしい破壊魔術。
正直、俺はこの魔術をアリエスが使っているところを初めて見たのだが、魔力のコントロールも問題はなく、十分合格点に到達していた。
うーん、弟子は見ないところで成長すると言うけれど、本当に強くなったな、アリエス。
それは率直にそう思った。
そして二つ頭のイノシシが最後の力を振り絞って投げ飛ばした斧は、あっけなくアリエスの魔術にもみ消され、あっという間に二つ頭のイノシシの体を飲み込み、絶命させた。
それをもってこの第五層の攻略は幕を閉じたのだった。
「よくやったな、アリエス」
俺は戦闘が終わったアリエスに近づくとその頭を撫でてやり、素直に称賛の言葉をかけた。
「えへへへ。どう?なかなかよかったでしょ!これでも毎日訓練頑張ってるからね!」
おおう……。自慢げに話すアリエスもかわいいな……。
ここが戦場でなければ、抱きしめていたかもしれん。
『それは普通に犯罪じゃからやめておけよ主様……』
すると俺の後ろから両腕で自分の体を抱いているシラとシルがやってきた。
「ガクガクガク……。あ、あ、アリエス……。さすがにこれ、は、やり、すぎじゃ、ない?も、ものすご、い、さむいん、だけど!?」
「あ、アリエス……。お、大人気ない……。ブルブルブル」
「えーー。だってこうでもしないと勝てそうになかったし、いいじゃん別に!」
ま、まあ、確かにここまで大規模な魔術は使わなくてもよかったかもな……。
なにせ次の層へと続く階段が先程の氷の終焉で完全に埋まってしまっている。これは除雪作業から取り掛からないと下の層には行けそうにないな……。
というわけで、俺も少し実験してみることにした。
俺とてここ数日間何もしなかったわけではない。ちゃんと色々研究していたのだ。……本当、色々ね。
そんなこんなで俺は隣にいるアリエス、シラ、シルに青天膜をかけこう告げた。
「んじゃ、あの雪と氷、退かすからちょっとそこから出るなよ?」
「「「え?」」」
そして俺はその単語を口にした。
「炎の始祖」
すると一瞬にして目の前を物凄い熱波が通り抜けた。それは最早、炎の形をしておらず、目にすら視認できない炎の原点。
瞬く間にその炎は部屋中に広がりアリエスの魔術の雪と氷を溶かした。
そう、これは俺が自分なりにこの世界の魔術を研究し作り上げたものだ。少々威力が強すぎるため使いどころを考えなければいけないのだが、今回はいい消火剤があったので使ってみることにした。
その効果は上々であっという間にさっきとはうって変わって熱気が充満した。
「ふう、大成功だ!」
「「「どこがよ!」ですか!」ですか……!」
と、後ろから三人の文句が飛んできた気がするが、多分気のせいだろう。
そして俺たちは次の第六層へと進むのだった。
ダンジョンは回はもう一回続きます!そのあとは神核と再戦です!
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