第二十四話 第一神核
でました!神核との戦闘!
ここからは基本的に戦闘ラッシュですのでお楽しみに!
よろしければブックマークと評価のほうもよろしくお願いします!
では第二十四話です!
「はあ!?何を言っているんだい君は……。神核?第一ダンジョン?……そんなことありえるはずがないじゃないか……。君はダンジョンの鉄則を忘れたのかい?」
大慌てで詰め寄ってきた冒険者にセルカさんは、何を馬鹿なことを、といった雰囲気を滲ませながらこう呟いた。
曰く、ダンジョンは世界に五つ存在する。それらのダンジョンは「神核」という人類の守護機関が眠っており、ダンジョン内に魔物を生産し最深部への道を阻んでいる。またその魔物はダンジョン外には出ることが出来ず、それは永遠不変の摂理であると。
この冒険者はその鉄則を神核自らが破り、外に出てきたというのだ。
「な!?俺だってそう思っていたよ!で、でも事実なんだ!い、今は近くにいた冒険者総出で食い止めているけど、まったく歯が立たない!このままだとこのルモス村に到着するのも時間の問題だ!」
それを聞くとセルカさんは、真剣な顔つきで手を顎に当てて何かを考え出した。このときのセルカさんは目が細くなり、元冒険者というだけの威圧が放たれていた。
「…………。どう思うハク君?」
「……ええ、まあ嘘は言っていないようです。なんなら気配探知で調べましょうか?」
「ああ、頼む」
そして俺は気配探知を限界ギリギリまで効果範囲を広げる。俺の限界探知範囲は半径百キロまで捕捉かのうなので間違いなく何か引っかかるはずだ。
五キロ、十キロ、十五キロとどんどん範囲を拡大していく。
「ッッッ!!!!」
すると二十キロほど離れた場所に、この世のものとは思えない気配が存在していた。圧倒的気配。本来気配探知では気配の大きさは測定できないのだが、そんなものは関係がないくらい絶対的な存在感を示す存在がそこにはいた。
「い、いました。ここから西に二十キロほど離れたところです……」
「そ、そうか……。おい!君!君はこのことを出来るだけ村中に伝えて戦えるものを村門に集めるんだ。急げ!」
「は、はい!!!」
そうセルカさんに言われた冒険者は全速力で冒険者ギルドを出ていった。
「…………。さて、これはとんでもないことになった……。ぶっちゃけ君はどう思う?今回の件について」
今回の件、つまり普段姿を現さない神核が地上に姿を現したことだろう。
「私は正直言うと地の土地神よりたちが悪いと思っている。そもそも神核は世界を構成する五大要素だ。それは人間や他の生物たちからすれば神にも等しい存在だろう。というか神そのもの。本来姿を見ることすら危ぶまれる存在だ。去年SSランクの冒険者がこの村に来たときに、あの第一ダンジョンに入ったそうだが最深部にて神核が出現したとの報告が上がっているが、手も足も出なかったそうだ……。これを踏まえて君はどう思う?」
どう、か…………。
この圧倒的存在感。間違いなく今まで戦ってきた中で一番ヤバイのは確かだ。それはおそらくフルパワーのクビロよりも遥かに強力だろう。
なにせ神核。神にしてその核を担うもの。
俺たちの世界で言えば十二階神と同格の強さを保有していると考えられる。
だが、なぜ今このタイミングで地上に出てきた?今まで何千年以上の間、ダンジョンに引きこもっていた存在が、なぜここに来て現界する?
「リア、クビロ。お前たちの意見を聞かせてほしい」
するとアリエスの頭の上に乗っかっていたクビロが先に口を開いた。
『うーむ、神核とはのう……。まためずらしいものが出てきたものじゃ。正直言ってわしはここの神核とは一度相見えたことがあるのじゃが、今なら露知らず、あのときのわしでは手も足もでんかったな。…………しかし、話はわかる奴じゃった。こんななんの前触れもなくダンジョンから出てきたり冒険者に攻撃するやつではなかったと思うのじゃ……』
ふむ、なるほど。
クビロが何年前か知らんが、神核と出会ったときはそれなりの人格者だったようだ。このようにいきなり現界して冒険者を襲うということはなかったらしい。
「んじゃ、リア。お前はどう思う?」
『むう……。私はこの世界についてはよくわからんからなんとも言えんのじゃが、神という立場からすれば、暴走するとすれば二つの理由が考えられるじゃろう。一つは世界そのものに嫌気がさし自暴自棄になっとるパターンじゃ。これはまあ人間にもあることじゃろうから、なんら不思議ではない』
実際にリアは神ではないが世界が自暴自棄になり襲い掛かってきたという実体験を持っている。それは神という存在の万能ゆえの脆さを写し取っていると言える。
『二つ目じゃが、自分よりさらに格上の存在に命令、もしくは洗脳させられとる場合じゃな。これはその神核よりも高次の存在がおらんと厳しいからなかなか現実的ではないのじゃがな。ともあれ実際にあってみんとなんとも言えんのじゃ』
命令、洗脳。これは神核本人の意思でない何かが介入しているというパターンだ。この場合問題の中心点が神核からその神核に命令、洗脳を施した奴へと摩り替わる。
つまり一筋縄ではいかなくなるのだ。
どちらもありえそうな理由だが、少なくとも今回の件は何か厄介な問題がからんでいそうだ。
「そうか。…………俺は二人の意見を尊重します。おそらく普段は守護者として働いている神核になにかしらの問題が起きたのだと思います。であればこのイレギュラーな状態も納得できるでしょう?」
するとセルカさんはさらに眉間に皺を増やしてこう言った。
「……そうだな。正直神核ともあろう存在が何かを仕出かすなど微塵も思っていなかったが、まあ神核とて生きているのだったな。絶対ではない以上、なにがおきてもおかしくないか……。では君はこれからどうするんだい?やはり行くのか?」
「……正直行きたくはないんですが、この村には俺よりランクが高い人はいないんでしょう?王都に応援を送っても早くて半日といったところでしょう。まあ倒せはしなくても撃退くらいはしたいと思います」
「すまないね……。君には損な役ばかり押し付けてしまって……」
「もういいですよセルカさん。今回の件は誰のせいでもありませんから」
そう言ったとき不意に服を引っ張られる感触が伝わってきた。
「ハクにぃ、また行っちゃうの……?シラとシルも心配すると思うよ……」
アリエスはまたしても目頭に涙をためて、俺に呟いてきた。
「ハハハ……。まったく冒険者になってもアリエスは泣き虫だなぁ。たしかに今回は俺も無事で帰ってこられるという保証がない。けど、俺は負けない。それだけは約束する。何があっても絶対に帰ってくるよ。シラとシルにもそう言っておいてくれ」
俺はそう言ってアリエスの白い髪を撫でた。
アリエスはしばらくされるがままになっていたが、やがて目元を手で拭い顔をあげた。
「う、うん!待ってる。だからハクにぃも早く帰ってきてね!」
「ああ、約束だ。アリエスも何かあったらシラとシルを守ってやってくれ。それとクビロ、お前は今回俺と一緒に来い。神核の元の様子を知っているのはお前だけだからな」
『了解した!』
「うん!まかせて!」
そう言って俺はアリエスに小指を差し出す。その指にアリエスも小指を重ねる。
そして俺は最後にセルカさんにこう言葉を紡いだ。
「セルカさん、アリエスをお願いします。魔力量と氷魔術は圧倒的ですが、まだまだ危なっかしいので」
「ああ、まかせておきな。シラとシルもこちらにつれてきておこう。そちらのほうが安全だ。…………それと私から神核について話せることがもう一つある」
そう言うとセルカさんは俺の耳元に近づいてきてなにやら耳打ちしてきた。
それを聞いた俺は久々に、これはどうしようもないかも、と思ってしまった。
空中を飛びかけながら転移を繰り返し使い、現場へと向かう。
先程探知した気配はもう目の前に迫っていた。
すると直ぐに鉄くさい匂いが鼻を貫いた。
「チッ!少し遅かったか!」
そして俺はその圧倒的な気配の真上から地面へと着地する。
そこはとてつもなく凄惨な現場だった。
あたりは大量の土埃が舞い、腹や、腕、足や頭。いたるところを刃物のようなもので切り裂かれ無残にも倒れ付している冒険者たちがいた。
しかし、確認してみたところかろうじて全員息はあるようだ。
これならまだ間に合う!
そう思った俺は咄嗟に、感知の言霊を叫び、
「回帰せよ!集結すべくは一点の地!」
今まで使ったことのなかった集団転移を実行した。
集団転移。
本来転移は俺の体に触れていないと発動できず、また俺自身が移動地点の座標を頭の中でずっと指定しなければならない。
しかし集団転移は俺と触れている必要はなく、座標指定も一度思い描いてしまえば瞬時に適用される。しかし難点なのが強すぎる力によって時空の壁を少しゆがめてしまう点だ。もちらん絶離剣のように空間を壊すまでは至らないが、空間の強度を著しく落としてしまうのだ。
よって、俺は集団転移を行った直後、自身の力を空間に流し込み、空間の強度を底上げした。
とにかく、これで傷ついた冒険者たちは、一瞬にして冒険者ギルドに転移したはずだ。
これで心置きなく戦うことが出来る。
するとちょうど、辺りを覆い隠していた土埃が晴れてきた。
そこに現れたのは、圧倒的威圧を放ちながら仁王立ちする神核そのものだった。
見た目は完全に男。手には黄金の二本の槍が握られており、その刃には先ほどの冒険者たちの血がべったりとこびりついていた。
また上半身は裸で、腹筋がもう数えられないくらい割れており、下半身は古代ギリシア風のローブのような布を巻きつけていた。
俺はその姿を観察した後、殺気を放ちながらこう呟いた。
「お前はダンジョンの最深部にこもってたんじゃなかったのか?」
すると神核は表情一つ変えずにこう返答した。
「星神から告げられたのだ。いずれ人類を絶滅に追い込む冒険者が現れると……。俺は人類の守護者だ。人類の敵を成すものがいるならばダンジョンからだってどこへでも赴こう。…………して、その災厄の冒険者は貴様だな人間?」
「さあな。だが少なくとも俺は人類を滅ぼす気なんてないし、そんなことはできない」
「ぬかせ。その身から漂う、神格は普通のものではない。明らかに異常だ。そのような存在をこの世界に置いておくことはできぬ」
星神やら、神格やら俺の知らない言葉が出てきたが、今は気にしてられない。
目の前の相手に集中するんだ。
「だったらどうする?ここで俺と殺り合う気か?」
「無論だ。貴様のようなものに慈悲はない。ここで消えろ」
その瞬間目の前の神核の姿が消えた。
「チっ!!!」
神核はいきなり俺の背後に現れたかと思うと、二本の槍をそれぞれ違うタイミングで突き出してきた。
俺は咄嗟に身を翻し奴の右手の槍を何とか避け、左手の槍はエルテナではじき返した。
その後直ぐ俺は空中で一回転をし、神核の足を狙って切り払った。
しかしその攻撃はいとも簡単にはじかれてしまい、追撃が迫ってくる。
今度は同時に、右手の槍を突き出し、左手の槍で切りかかってきた。普通の人間なら体重移動の問題があるのでそんな器用な真似はできないのだが、さすがは神核。それをいとも簡単にこなしてしまう。
俺はとっさに絶離剣レプリカを取り出し左手に構え、奴の右手の槍を弾き飛ばした。またエルテナでもう一方の槍をいなすと、そのまま奴に肉薄しそのまま二本の剣で腹を全力で凪いだ。
「ぐっ!?」
それは当然、奴の体を二つに分離させ、地に叩き落した。
エルテナは基本折れることがないの腕の力さえあれば切れないものはない。一方絶離剣レプリカのほうはそもそも防御不可のため問答無用で肉を叩ききった。
本来ならここで勝負は付くはずである。
しかし俺は決して気を抜いてはいなかった。
すると、分離したはずの神核の体がいきなり蠢いたかと思うと、切られた体は灰となり、その切断面からグシャアア!という音とともに新たな体が生えてきたのだ。
「俺の能力は完全なる不死性。よもや知らずに挑んだわけではあるまい?」
そう、ギルドを出る前、セルカさんが俺に言ってきたこととは、
「第一神格は去年遭遇したSSランク冒険者によれば「不死性」を持ち合わせているらしい。十分気をつけるんだよ」
という内容だった。
…………。
もうこいつどうやって倒すの!!!
俺はそう心の中で叫びながら、二本の長剣を構えなおした。
正直言ってこの神核、チートすぎますよね?
ですがハクも負けてはいません!この戦いはまだまだ続きます!