第十六話 仲間
よければ評価、ブックマークをよろしくお願いします!
感想も待ってます!
では第十六話です!
俺は地の土地神との戦闘を終え、ルモス村に新たな仲間、クビロを従え帰還していた。先程俺と戦っていた地の土地神はどうやら本当の名前はクビロというらしい。魔物に名前があること自体が驚きだが、なんでも千年ほど前にクビロを生んだ母親が自分の死に直面したときに名づけたものらしい。
といわけで、クビロを左肩に乗せたままルモス村の村門を潜る。
すると目の前に広がっていたのは意外な光景だった。
道を埋め尽くすほどの冒険者とルモス村の住民が一斉に拍手をして俺を出迎えたのだ。
「おい!こうやろう!とうとうやりやがったな!地の土地神を一人で倒すなんて!いやー俺は最初からお前は出来ると信じてたぜ!」
「やるじゃない!SSSランクの魔物を倒すなんて、お姉さん惚れちゃうかも!」
「俺、あんな攻撃初めてみたぜ……。な、なあ今度教えてくれよ!」
「おい!野郎ども!今日は飲むぞ!宴だ!」
なんじゃこりゃ……。
いやいやいや、一体どういうことなんですかね?
俺ってそんな凄いことしたのか?正直実感ないんですけど……。
一応、クビロは肩の上に乗っていては目立つと思って俺の髪の中に隠れている。この状況で地の土地神を従えましたなんて言おうものなら、さらに大波乱を呼ぶだろう。
その人だかりの中心にジルさんとセルカさんが立っており、俺を発見するとこちらに近寄ってきた。ジルさんが俺の前に立ち話し出す。
「やあ。どうやら無事のようだね?」
「ええ、おかげさまで。……ところでこの騒ぎは一体何なんですか?」
「いやー君が戦っている間、危険だとはわかっていたんだが皆村門ギリギリのところで君の戦闘を見ていたんだよ。正直伝説級の魔物との戦いだからね。皆興味津々だったのさ。……それにしても君が串刺しにされたときはさすがに肝が冷えたよ。これは終わったかなってね。でも君はその後平然と地の土地神を倒してしまった。まったく末恐ろしいよ、君は。ところで腹の傷は大丈夫かい?」
まじか……。まさか俺が刺されているところまで見られていたのか……。もうちょっと離れて戦うべきだったかな……。
「はい、それに関してはすでに完治しています。……それより、バリマ公爵の件、どうなりました?」
すると、ジルさんの隣にいたセルカさんが俺の質問に答える。
「それは問題ない。むしろバリマ公爵は村に着くなり目を覚まして、私でも追いつけないぐらいの速さでフィルファ家の屋敷に走っていったさ。その後直ぐにアリエスちゃんとの婚約の破棄、ルモス村との外交継続、アリエスちゃんとは金輪際関わらないことを調印して逃げるようにこの村から出て行ったさ。フフフ、一応私たちも見届けてはいたが、終始『ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいぃぃぃぃ!』って言いながら顔を引きつらせていたよ。あれは傑作だったねえ……」
そうか。そちらも滞りなく終わったか。ならばもう安心していいだろう。
しかし、できることならそのバリマ公爵の顔を見てみたかったな……。絶対に面白いに違いない。
『相変わらず、えげつないな主様は……』
いや、だって!せっかくふんぞり返っていた貴族の吠え面かく姿が見られるんだぜ?そりゃ一家に一枚ぐらい写真として残したいぐらいですよ!永久保存版で。
「そうですか。安心しました。ではアリエスは今どこに?」
「アリエスちゃんは屋敷にいる。あとで会いに行くといいよ。……だけどその前に一度ギルドに来てもらえるかな?昨日の魔物の換金もまだだし、それにSSSランクの魔物を倒したんだ。褒賞金ぐらいでるよ」
いや、実は倒しはしたけれど死んではないんですよ?死体もないでしょう?
と、思いはしたのだが、村門の前はいまだに興奮が冷めていないようで、落ち着いて話を出来る状況ではないのは確かだ。早めに場所を変えたほうがいいだろう。
「了解です。では行きましょう」
俺はそう言うと、ジルさんとセルカさんとともに冒険者ギルドに足を向けた。
その間も集まった冒険者と村の住民はまるで何かのお祭りのように歓喜の声を上げていた。
「それじゃあ、改めて、おめでとう、ハク君。私たちギルド職員も誇りに思うよ」
場所は変わって冒険者ギルド内。それも昨日セルカさんから依頼を受けた一番手前のカウンター。そこで俺とセルカさん、その後ろに座っているジルさんという形で対面していた。
うーん……。そろそろ誤解というか、事実を伝えたほうがいいだろう。このまま行くというタイミング逃しそうだし……。
「あ、あのそのことについてなんですが……。俺、大蛇を倒しはしましたけど殺しはしてないんですよ」
「「え?」」
すると二人は目を丸くしてぼーっと立ち尽くしている。
まあ口で言うより目の前で見せたほうが早いか……。
「出てきていいぞ、クビロ」
『うむ、わかったのじゃ主』
そう言うとクビロは俺の髪の中から飛び出し、俺の頭の上で着地した。
『すまぬな、人間たちよ、迷惑をかけた。主の強さに惹かれて、つい派手に出てきてしまった。しかし、今は見ての通り主の従僕になっておる。気にせんでいいぞ?』
その瞬間、ジルさんとセルカさんはズザザザッと音を立ててギルドの壁の際まで物凄い勢いで飛びのいた。
「な、な、な、ちょ、なんで地の土地神がハク君の従僕になってるの!?私意味が理解できないんだけど!?」
「さすがにこれは驚いた……。反射的に飛びのいてしまったが、ハク君。これにもう脅威はないのかね?」
「ええ、なぜか知りませんけど、俺についてくるって聞かないのでしかたなく同行を許しました。もしまた何かあるようなら俺が叩き伏せます」
『な!?も、もうちょっと信用してくれてもいいのではないか主!』
あのなぁ……。伝説の魔物って恐れられてる奴がいきなり目の前に出てきたら普通誰でもビビるだろうが……。
その警戒をとくにはこちらが謙るしかないんだよ……。それぐらい考えてくれ、クビロ……。
「そ、そうか。ならばいいだろう。……えーコホン。セルカ、続きの説明を」
「は、はい…………。まったく君は私をいくら驚かせたら気が済むんだ……。まあいい、とりあえず、これが昨日の魔物の査定金額だ。合計で百万キラ、確認してほしい」
な、なに!?ひ、百万!?
それなりの額にはなると思っていたがまさか百万とは……。
うん、これで当分楽して過ごせるぞ!
『ニートはダメじゃぞ、主様?』
ははは、冗談だよ、冗談!
異世界にもきて俺が引きこもっているわけないだろう?
あ、あれ!?リ、リアさん!?目が笑ってないんですけど!?
「それと、今回の褒賞金だ。地の土地神はシルヴィニクス王国から懸賞金がかけられていのさ。それも追加だ。その懸賞金は合計で五百万キラだ。あまり無駄遣いしないようにね」
…………なんですかそれは。
異世界の金稼ぎ、ちょろすぎじゃないですか!?
もう冒険者なんて辞めてプチ富豪になってみるのも悪くないかもしれない……。
まあ嘘だけど。
「……はい、確かに。……でもいいんですか?俺クビロを討伐はしてないですよ?」
すると後ろに座っていたジルさんが口を挿んできた。
「地の土地神は強力すぎるゆえ、討伐もしくは無力化という条件の下で懸賞金がかけられたんだ。だから君が制御できているなら問題はないよ」
ああ、さいで……。
というかクビロ!お前どんだけ恐れられていたんだよ!もうなんか災害みたいな言われようされてますよ!?
「さらに、だ。ハク君。冒険者カードを少し貸してくれないかい?」
「え?ええ、いいですけど……」
そう言われて俺はジルさんに自分の冒険者カードを差し出す。
するとジルさんは、昨日セルカさんがやったように冒険者登録用の魔具を取り出しカードをはめ込んだ。
途端に光があふれ出し、俺の冒険者カードに何かを書き込んでいく。
「はい、おまたせ。一応冒険者ランクを更新しておいたよ。今日から君はSランクだ。正直なところ、君は既にSSSランクですら計測できない強さを持っているけれど、Sランク以上のランク更新は地方のギルドでは出来ないんだ。すまないけど、これで我慢してほしい」
俺は冒険者カードを受け取りランクを確認してみる。
あ、本当だ。Sって書いてある。
にしてもランクが急に上がって、ちょっと内心心配なんですけど……。この村では問題ないとは思うが、他の町や国に行ったら間違いなく問題の種になりそうだ。
注意しておかねば……。
それか他に何か変わったところがないかカードを眺めていると妙な一文を見つけた。
「この、二つ名っていう項目はなんですか?」
「ああ、それは何か大きな功績を残した場合、偶に付くことがあるんだよ。しかもその二つ名を決めるのが完全に魔具自身の気まぐれだから少々困っているんだけどね。それでハクくんは、どんな二つ名だったんだい?」
そして俺はその二つ名の欄を確認する。
「えーと……なになに……『朱の神』!?……な、なんじゃこりゃー!?」
その名前を聞いた途端ジルさんとセルカさんは同時に笑い出した。
「クスクスクス、ハ、ハク君……。い、いい名前だね……君に、ぴ、ぴったり、だ。クスクスクス……」
「ああ、ま、まったくだ。クスクスクス。今の君を表すには実にあってる……」
「なぁ!?絶対にからかってるでしょう!というかもう笑わないでください!」
一体なんなんだ、この名前は。痛すぎるだろう!
『案外似合っておるかもしれんぞ主様?まあ私は面白い限りだが!』
『むう、わしは別になにも言わんのじゃ……。決して馬鹿にしてはおらんぞよ?』
ぐわーーーーー!
余計に傷つくからやめてーーーーー!
というかどうなったら「朱の神」なんて付くんだ?理解ができない!
「ほら、今の君の姿を見てみなよ?凄いことになってるよ」
ん?どういうことだ?
そう言われて俺は自分の姿をまじまじと見てみた。
そこには魔物の返り血で真っ赤に染まった俺の姿があった。
あ、まさか……。
「さながら、返り血で赤くなった鬼神のごとき冒険者、という意味だろうね。うん、まあおめでとうと言っておくよ……」
「それ絶対褒めてないでしょーー!」
そんなわけで不名誉な二つ名と、合計六百万キラを頂いたのでした。
報酬を受け取り、ギルドから出ようとしたとき、不意にセルカさんから声をかけられた。
「あ、ハク君。カラキのやつが屋敷に来てほしいと言っていたよ。アリエスちゃんのこともあるしこの後行ってみたらどうだい?」
「あ、そうなんですか?……わかりました。行ってみます。……では」
ふーむ、まあ俺自身アリエスがどうなったか確かめたかったし、元々行く予定ではあったのだが、そういうことなら急いだほうがよさそうだ。
そして俺はアリエスの屋敷に転移した。
「よう」
「あ、ハクにぃ!」
アリエスの屋敷に転移すると、そこには既にアリエスとカラキさん、そしてフェーネさんの三人がそろっていた。
俺は飛びついてくるアリエスを抱きとめるとカラキさんにこう切り出した。
「それで、なにか用か、カラキ?セルカさんから屋敷に来てほしいと言われてきたんだが」
「ああ、すまない、わざわざ。ではそこに座ってくれ、今お茶を用意する」
すると一分程して、いい香りの紅茶らしきものが運び込まれてくる。
うん、うまい。きっといい茶葉を使っているのだろう。
すると俺がお茶に手をつけたのをみてカラキさんは話し出した。
「ハク君、バリマ公爵の件、本当にすまなかった。盗賊のときに続いて、また娘を助けられてしまった。父親としてお礼を言うよ、本当にありがとう」
それと同時にカラキさんとフェーネさんは頭を下げた。
貴族に頭を下げられるというのはさすがになんかむず痒いな……。
「いや、別にかまわない。俺はアリエスの背中を少し押してやっただけだからな。……言っておくが御礼なんて考えるなよ?そういうのはいらないんだ」
「ああ、君がそういうのを嫌がるのはわかっている。だから今回はただ感謝の気持ちを伝えたかっただけなんだ。……それと」
「それと?」
「これ以上君に何かをお願いするのは気が引けるんだけど、一つ頼みがあるんだ、聴いてくれるかい?」
は?頼み?
い、いやまあ俺のできる範囲でよければいくらでもやるが……。
「内容によるな……」
「そうか……。ほら、アリエス。自分の口で言うんだよ?」
ん?アリエス?
なんでここでアリエスが出てくるんだ?
「あ、あのね、ハクにぃ……。私ハクにぃが戦っている姿をみて思ったの。私も誰かを守れるくらい強くなりたいって。だ、だからね、私もハクにぃに付いていきたいの!」
…………はい?
「そ、それは、あれですか?お、俺の旅に付いてくるってこと?」
「だ、だめかな?」
『お、おい!リア!これは一体どういう状況だ!』
『そんなこと言われても知らんわい!私だって驚いとるのじゃ!』
すると隣にいたカラキが口を挿んだ。
「一応、これは家族でも話し合ったんだ。もちろん君についていけば危険なこともあるだろう。でももしまたここにいたら、第二のバリマ公爵のような人が現れるかもしれない。できればそれはアリエス的にも僕たち的にも避けたいんだ。それに他でもないアリエスの意志だからね。親としては娘の意志を尊重したいのさ」
いや、まあそれはわかるが……。こんな小さい子を十八歳とはいえ男の隣に置くというのは親としてどうなんだろうか?
「ああ、もちろん、旅の途中でアリエスと何かあっても僕たちは何もいわないよ。むしろ君なら僕も気兼ねなく娘を嫁にだせるからね」
ちょっとぉぉぉ!!!
何言ってんだ、カラキ!?
仮にも娘の前でなに言ってんだ!
「ということでどうだろう?娘を連れて行ってはくれないだろうか?」
あーこれはもうどうしようもないやつだ。引くに引けない状況になっている。
なら腹をくくるか。あ、もちろん如何わしい真似はしないよ!本当だよ!
「アリエス」
「う、うん……」
「本当にいいんだな、多分俺の旅は物凄く危険だぞ?それでもいいのか?」
「うん、それでも私はハクにぃについていきたい!」
「……よしわかった!それじゃあ今日からお前は俺の仲間だ……それと」
「それと?」
「今日からよろしく、アリエス」
「うん!よろしくハクにぃ!」
そうしてクビロに続いて、俺の仲間にアリエスが加わりました。
今回にて第一章の半分ほど終了しました!
次回からは少しお話が変わります!
誤字、脱字がありましたらお教えください!