6. 暗転
「それにしても揚羽ちゃん。
あんた、なんで踊り娘なんてしてるの?
お寺の娘さんなら、そんなことしてお金稼ぐ必要ないでしょうに」
みたらし団子をもぐもぐ噛みながら、乱菊が隣に座った揚羽を見やる。
揚羽は、二杯目のぜんざいをずずっとすすりながら、うーん・・・と考えるしぐさを見せる。
「お寺がね、あんまり好きじゃないの」
「線香臭いからか」
2人の女の食べっぷりに、げんなりしていた日番谷が揚羽を見た。
「やーね、言葉のアヤよ、それは」
ケラケラと揚羽は笑い飛ばした。
「じゃあ何よ?」
「力で周りを脅してるから」
「・・・穏やかじゃないわね」
乱菊が日番谷をちらりと見て、そう言った。
「でも。町の人たち言ってたわよ。
あのお寺のおかげで、町は平和だって」
揚羽は、ウン、と頷いたまま黙ってしまう。
常に笑みをたたえていたのが、複雑な表情に沈んだ。
「確かにその通りなの。
天道教のお坊さん達の力が強いから、外の人はこのあたりは襲ってこない。
でもやっぱり・・・力で誰かを脅してるのには違いはないでしょ?
無理やり力で押さえつけたって、いつかは更に強い力に負けてしまうと思うの。
だから・・・力は嫌い」
その言葉は、日番谷と乱菊を黙り込ませた。
それを見て、自分が余計なことを言ったと思ったのだろう、揚羽は再び笑顔を向けた。
「あたしはね。
もっと、皆が笑えるような、愉しくなれるような方法で平和にしたいの。
たとえば、私の踊りみたいにね」
そういって、身軽に立ち上がり、狭い店内で、くるり、と回ってみせる。
「だから、お寺には滅多に戻らないわ。
自分でお金稼いで、ほとんどこっちで暮らしてるの」
「・・・そうか」
日番谷は、そういって頷くと、大きくため息をついた。
「なによ冬獅郎、急に」
「揚羽。お前、しばらく寺には戻るんじゃないぞ」
「え?」
揚羽が、きょとんと目を見開く。
乱菊が横から、日番谷を突っついた。
あまり色んなことをしゃべるのはまずい、とその目が言っている。
そのときだった。
ハッ、と日番谷は窓の外を見やる。
次の瞬間、
ドォン!!
大砲でも撃ったかのような大音響が響き、山々に木霊した。
「なに・・・」
通路にいた揚羽は、真っ先に外に駆け出す。
「お・・・おい、見ろよ!」
「寺が!!」
人々がどよめきをあげ、山の中腹を指差している。
その先に見える瓦屋根は・・・かなり離れた町から見ても分かるくらいに、炎上、していた。
――くそ・・・やっぱりタダじゃすまなかったか!
日番谷が歯噛みする。その視界の先を、赤い着物が舞った。
「揚羽!待て!」
日番谷が手を伸ばす。
しかし、その指先がかすかに着物に触れただけで、揚羽は人ごみに隠れ、見えなくなる。
乱菊が、その隣へと駆け寄る。
「隊長・・・!」
「松本、俺は寺へ行く!お前はこの町を護ってろ!」
「分かりました。お気をつけて」
乱菊の声に、日番谷は頷く。そして、人ごみの中に身を翻した。
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