BLEACH in FLAME −晩冬の踊り娘−(4/20)縦書き表示RDF


BLEACH in FLAME −晩冬の踊り娘−
作:切香



4. 日番谷と乱菊


同日2月18日、正午。
日番谷冬獅郎は、部下の副隊長・松本乱菊と共に、天道教がある山の麓にある町にやってきていた。
二人とも死神の制服である死覇装でなく、平服姿である。

「はい。お蕎麦あがりましたよー♪」
地味な茶色系だが、大振りな花柄の着物と、袴をまとった乱菊が、笑顔で日番谷に丼を手渡す。
「ああ・・・」
受け取った日番谷は藍色系の着物に、黒い袴をまとっていた。
男にしては白い肌に、深い藍色が映えている。

端から見れば、姉弟にしては外見が違いすぎ、親子にしては年が近く、友人にしては離れすぎている。
馴れ合いすぎているようにも遠くも見えない、言い表せない雰囲気をかもし出していた。
しかしさすがに、2人が死神で、上官と部下の関係などとは、誰も思わないだろう。

蕎麦からあがった蒸気が食欲を誘う。茶屋の机に向かい合い、2人は同時に箸を取った。
「何事もないようだな」
日番谷は、茶屋の窓から見える山の中腹を見上げて言った。
そこには、立派な瓦屋根の寺が小さく見えていた。
そこが彼らの目指す場所――天道教の寺院だった。
「砕蜂隊長だけで十分じゃないですか?あたしたちがわざわざ来なくたって・・・」
「総隊長が言っていた。奴等が隠し持ってるのは、炎熱系の力っていう可能性があるそうだ。いざとなったら協力しろと言われてる」

ふーん、と乱菊は蕎麦をすすりながら、気のない返事をした。
「だからって、何であたし達、こんなコソコソしてるんです?」
「ここでは死神だってばれたらまずい。後は想像しろ」
日番谷はそれだけ言うと、ズズっと茶をすすった。

―― なるほど。
日番谷に言われるまでもない。
砕蜂は、他人に助けられることを徹底的に嫌うのだ。
そんな人物と協力すると申し出るなど、場合によっては侮辱と取られかねない。

中でも、半年前に隊長になったばかりの日番谷を、砕蜂が対等とみなしていないことを、乱菊はうすうす感じ取っていた。
キャリアの短さだけではなく、その少年にしか見えない年齢、流魂街出身という経歴、その全てが砕蜂には認められないのだろう。

ただ、嫌悪のまなざしの中に、微妙な感情が見え隠れしているのを、感じることがある。
自分も同じ感情を、ある男に感じたことがあるから分かる。
天才肌で、どんな試練もやすやすと乗り越えてしまう男に対して、天性の才能には恵まれなかった自分が、時に感じた気持ち。

「はいお茶。お代わりあるよ」
そんな乱菊の思惑など露知らず、日番谷は茶屋の娘に茶を注いでもらっている。
―― 最もそんなこと、この隊長は気づきもしないだろうけど。
ふふっ、と乱菊が微笑んだ。

その時、わああっ、と通りから歓声が上がった。
通りは縁日のような賑わいで、大勢の大人や子供が賑やかに行きかっていた。
「今日は縁日か何か?なんだか人が多いわね」
乱菊が茶屋の娘に声をかけると、娘は人懐こい笑みを浮かべて首を振った。
「お客さん、この辺の人じゃないね。この町はいっつもこうだよ」
「平和ねぇ」
「あそこのお寺さんのおかげだよぅ」
娘は、エプロンで手を拭くと、山の中腹の天道教寺院のほうを指差した。

「あのお寺の人たちが来てから、この町は本当に平和になったのよ。
お坊さん達の神通力で、私たちを護ってくれてるの。
みんなホントにあの人たちには感謝してる」
「神通力ってどんなものなんだ?」
日番谷が聞くと、娘は首を捻った。
「知らない、誰も見たことはないみたいよ。でも、野盗達はすごく怖がってるわ」
ふぅん、と日番谷は彼には珍しく子供じみた返事をして、黙った。

少なくともあの寺が、この町を平和に導いてることは間違いないようだ。
人を護る、という目的は、死神と同じはず。
それなら話し合うこともできるのではないか、と日番谷は思っている。
最も、あの砕蜂が積極的に話しあいに応じるとは思えないが・・・

わああっ、と、ひときわ大きな歓声が上がり、日番谷と乱菊は思わず店の外に目をやった。
「行って見ましょうよ、隊長!」
「おい、松本。俺たちは遊びに来たわけじゃ・・・」
「だからって、ここに座って茶飲むくらいしかすることないじゃないですか!
どうせなら楽しまなきゃ」
苦笑する娘の手のひらにチャリン、と金を落とし、乱菊は日番谷の肩を押して通りへと向かった。







新しい小説は、HP「halcyon days」上で更新しています。
「小説家になろう」で掲載中小説のリバイス版も順次、追加していますので、
よろしければこちらもどうぞ^^





ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう