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BLEACH in FLAME −晩冬の踊り娘−
作:切香



14. 裏切りの疑惑


「水天逆巻け、捩花ねじばな!」
海燕の凛とした声が響き、斬魂刀から放出された水が、炎を一気に押し戻した。
「ここはどの辺だ?」
汗だくになりながら、海燕が後ろについた死神達に怒鳴った。
「そろそろ中心部です!しかし、このままでは・・・」
海燕は返事をせず、汗を拭った。

途切れなく次々と湧き出す炎。
そして、炎の中からいつ飛び出してくるとも知れぬ僧たち。
もし自分が力尽きれば、後から来ている十人ほどの死神全てが一巻の終わりだろう。
「くっ!」
自分に振り下ろされた錫杖を、海燕は鋭い動きでかわした。
―― 敵のやつら、分かってるな。
攻撃が自分に集中しつつある。

「何だ?震えてんのか?お前ら」
炎の中から、声が聞こえた。続いて、笑いさざめくような声も。
「死神の癖に、死ぬのが怖えのかよ」
海燕は、隣で正体を失ったかのように震える部下の肩をぽんと叩く。
「大丈夫だ」
確かにこの温度、この状況、怖くなっても仕方がない場面だ。

その時。海燕は、見知った霊圧に思わず声をかけた。
「更木隊長!」
返事の代わりに、凄まじい衝撃波が海燕たちを襲った。
炎の中にいた気配がスッと消え、海燕たちの周囲の炎が吹き散らされる。
「追いついたぜ」
姿を現した更木だが、その顔といわず腕といわず全身に火傷の跡があった。
後について現れた、十一番隊士も似たようなものである。

「このままでは危ないですね」
更木と背中合わせに刀を構え、海燕が言った。
チッ、と更木が舌打ちをし、炎に捲かれる建物を見まわした。
「何やってんだ、あのガキは・・・」

その瞬間、炎の中から疾風のように人影が飛び出し、唐竹割に更木の頭に打ち下ろした。
シャン、と更木の頭につけられた鈴が鳴り、身を翻した更木が繰り出した一撃と、打ち下ろされた一撃が激しく交差する。
「更木剣八。ここで死んでもらう」
それは、別人のように目を爛々と光らせた清十郎だった。

フン、と更木は満足そうに笑うと、跳び下がった清十郎に刀を向けた。
「抹香くせえ坊主と戦うのかと思ってたら、まんざらでもねえ。
てめえらからは血のにおいがする」
「否定はせぬよ。こちとら元は野盗の身だ」
「ほぉ。野盗が坊主を名乗るとは、とんだペテンだな」
言葉を交わしながらも、激しく打ち合う。2人が打ち合うたびに、金属の破片が周囲に飛び散った。
「戦いに疲れた俺たちを、この街は受け入れてくれた。
この街に根を下ろし、護って暮らすのも悪くないと思ったのさ」
「一度修羅の道に身を落した奴等は、他のものにはなれねえんだよ」
火花が散る中、更木の言葉に、清十郎はかすかに微笑んだ。
「確かに。一理ある」


「おーおー、やってはるなァ」
建物の外から、燃え盛る建物内をみやった市丸は、熱気にイヤそうに顔を引いた。
「あたしの傍にくっついてどうすんのよ。ちゃんと働きなさい!」
「乱菊がそんなこと言うようになるやなんて・・・」
市丸は乱菊の小麦色の頭を見下ろし、ため息をついた。
「あんたんとこの隊長にそのまんま返すわ。このまま出てこんかったら、死人が出るで」
「うちの隊長は仲間を見捨てたりしないわ」
「睨むなや」
猫のような乱菊の両目が釣りあがるのを見て、市丸は顔の前で手を振った。

「市丸!戦況を報告しろ」
その声に、2人は顔を上げる。
そこには、さきほどやちるの肩にいたのと全く同じ姿の黒揚羽が舞っていた。
「まぁ、ボチボチやな」
「適当なことを言うな!」
「建物内全てに火が回っています。
志波副隊長の働きで炎を撃退してはいますが、そろそろ限界かと」
「日番谷は何をしている!」
砕蜂の声に、苛立ちが募る。乱菊は、ぎりりと歯をかみ締めた。

「ただな、ちょっと気がついたんやけど」
沈黙を破ったのは市丸だった。そして、塀の上を指差す。
「あそこに、日番谷隊長はんの霊圧がかすかに残ってるんはなんでやろ」
「え?」
市丸の指差すほうを見た乱菊の表情が凍りつく。
「今さっき現れたってほどでもなく、そんな昔でもない。言ってみれば昨晩、くらいやな。
おかしいよなぁ。精霊邸で戦闘準備を整えてたはずの時間に、こんなトコで何をしてたんやろな」
「まさか、日番谷の奴・・・」
「大事な話をしてたんかもな。ここにいる誰かさんと」
「適当なこと言わないで!」
市丸と砕蜂の会話に耐え切れず、乱菊が激しい勢いで遮る。
市丸は、笑みさえ浮かべて乱菊を見下ろした。
「でも、乱菊も知らんかったんやろ?この日番谷はんの行動」
「・・・!」
乱菊がぐっと言葉に詰まる。

その時。ふたりの頭上に、影が差した。
見上げた市丸がほくそ笑んだ。
「いやぁ、可愛い娘やなあ。こんなトコで何・・・」
市丸の言葉は、途中で遮られる。
娘が手にした錫杖から、一瞬にして巨大な炎が放たれたからだ。
市丸は乱菊の肩を掴み、後方に飛び下がる。
「なんや、あの時ボクの刀を受け止めた娘か」
「あたしは天道揚羽」
乱菊が息を飲んで、その姿を見やった。
それこそ炎のようにたぎる瞳をまっすぐに市丸に向け、揚羽は言い放った。
「次は叩き折ってみせるわ。その斬魂刀を」







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