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BLEACH in FLAME −晩冬の踊り娘−
作:切香



11. 夢ノ終ワリ 後編


日番谷は、足元でまだブスブスとくすぶっている雑草に視線を落とし、ぎりっ、と歯をかみ締めた。
「砕蜂、お前!」
振り返りざま、そこにいた砕蜂の胸倉を取った。
「あの一族に何をした!あの一族は、ただ流魂街を護ろうとしてただけじゃないか!
それを・・・」

砕蜂は自分の着物を掴んだ日番谷の手を無表情に見やると、パシン、とその手を払いのけた。
「斬魂刀に類する力の隠匿、という死罪を犯している以上、討伐するのは当然だろう。
秩序を護るのは我らの任務だ」
「違う!俺たちの仕事は、人を護ることだろうが!!分かり合うことだって出来たはずだ!」

砕蜂は言葉を止め、強い瞳で自分を睨みつける日番谷を見返した。
その表情に、混じりけのない敵意が浮かぶ。
「分かり合うとは、敵の娘に手も出せず、無様に立っていることを言うのか?
さっき私が突きのけなければ貴様など、今頃骨も残らず燃え尽きている」

ぐっ、と日番谷は返す言葉に詰まる。砕蜂は更に言い募った。
「敵を倒す覚悟もないなら、隊長の資格は貴様にはない!」
「砕蜂隊長、言葉が過ぎます!!」
2人を押しのけるように、乱菊が2人の間に入り込んだ。
「いい度胸だな、松本。私に意見するなど」
乱菊は無言で砕蜂の小柄な体を見下ろした。しかし、2人の隊長格の殺気に挟まれ、その額にはあっという間に汗が浮かんだ。

「やめろ。もういい」
日番谷が、乱菊の腕を掴み、自分の側に引き寄せた。
「隊長・・・」
「俺は護ると決めた奴は絶対に護る。俺にとってそれが死神になった理由だ。
それができないなら、死神も隊長も、こちらから願い下げだ」

砕蜂は冷たい目で日番谷を見返し・・・
やがて、かすかにため息をついて視線を逸らし、2人に背中を見せた。
「この事態を精霊廷は放ってはおかぬ。
総隊長の結論を聞けば、貴様も分かるはずだ。死神の矜持とは一体何かとな」
それだけ言うと、砕蜂はざっ、と2人に背中を向けた。




2月18日、夜。
厳寒の隊首室で、一から十三番までの隊長が一同に会する、臨時の隊首会が行われていた。
一番奥に立つのは山本総隊長。総隊長から10メートルほど離れた場所で、日番谷と砕蜂が跪いていた。
その2人の両側には、そのほかの隊長が立ち並び、砕蜂の報告に無言で耳を傾けている。

「なるほど、の」
砕蜂が語り終えた後、しばらく無言だった総隊長が、タン、と軽く杖の先で床を打った。
「なるほど。その者ども、一度剥いた牙を納めはしまい」
「総隊長!」
それを聞いた日番谷が、スッと立ち上がった。
「彼らは、決して精霊廷に刃向かうために力を手にしていたわけではありません!」
「しかし今は違う」
「ですが、話し合わず、いきなり刀を返すのは・・・」
「話し合いが通じる時期は過ぎておる!
いつ攻め込んできてもおかしくない状況なのだ。異議は認めぬ!」
「総隊長!」
なおも日番谷が言い募ろうとした時、その袖を京楽がすばやく押さえた。

日番谷が見返すと、京楽は目を閉じ、軽く首を振った。
「もう戦争は始まってしまってるんだよ。
一旦回りだした歯車を止めることは極めて難しい。・・・不可能なくらいにね」

「砕蜂隊長!」
総隊長が、跪いたままの砕蜂に声をかけた。
「此度の失態の挽回のためにも、お主に指揮を執ってもらう。
隠密機動100名でも完敗した敵じゃ。遠慮なく隊長格を連れてゆけ」

砕蜂は、ざっ、と自分の両脇に立つ隊長たちに視線を走らせた。
「更木。市丸いちまる。そして浮竹うきたけ。おぬしらで先陣を切ってくれ」
更木は、それを聞きニヤリを笑った。
「かまわねえよ。退屈しのぎにはピッタリだ」
「退屈しのぎになればいいけどなぁ・・・」
口角を上げて返したのは市丸。細いその目からは、感情がうかがえない。
浮竹は、目をつぶったまま、無言で頷いた。

「そして・・・」
砕蜂の感情を伴わぬ目が、日番谷を捉えた。


その頃。
北流魂街の天道寺では、清廉な空気の中、座敷に寝かされた母親の死体のそばから離れない揚羽の姿があった。
「母様・・・!」
その胸にすがり、何度も何度も名前を呼び、終わりない涙がその頬を伝う。
清十郎が揚羽の隣で立ち上がり、傍で絶句していた僧達を振り返った。

精霊廷では、張り詰めた空気の中、隊首室に響き渡る言葉にぐっと拳を握り締めた日番谷の姿がある。
―― 逆らう可能性があるものを根こそぎ殺して、殺して・・・
そんなことで、ソウル・ソサエティの平和は護られるのか?
握り締めた拳が震えるのを、砕蜂は目の端に捉えていた。
「明日が出陣じゃ」
その日番谷の疑問を断ち切るように、総隊長が締めくくる。

図らずも同時刻、2人の長の声が重なっていた。
「死神どもを殲滅せよ!」
「全力を持ち、天道教を殲滅せよ!」







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