1. 紅の幕開け
女は微塵のためらいも見せず、刀を自らの喉に突きたてた。
仰向けにのけぞったその喉から、声出さぬ断末魔の代わりのような血柱が、高く、高く青天に吹き上がった。
その血は、女自身を、地面を、そしてそれを眼前にした砕蜂の体を、しとどに黒く濡らしていく。
「う・・・」
それを見守る男の目が、ひとつ。
何も映さぬ深い穴のように、その瞳には何も映っていない。
音もなく。男の中で、何かが砕けるのを聞いた気がした。
仰向けに倒れる女に駆け寄ろうとして、男は立ち止まる。
まるで操り人形のようにガタガタと不器用に震える体を、押さえつけるように。
その拳が、血管が浮き上がるほど固く錫杖を握り締めた。
その口が、背後にいる僧達に怒鳴る。
「死神どもを、一匹たりとも生かして帰すな!!」
打てば響くように、背後に続く法衣をまとった男たちが、錫杖を振りかざし雄叫びを上げた。
彼らの持つ錫杖から、恐ろしいまでの霊圧が放たれる。
そして、彼らは最早迷うことなく、砕蜂率いる隠密機動に一斉に襲い掛かった。
―― 一体・・・
砕蜂は、斬魂刀を構えながら思う。
取り返しがつかない、泥沼の戦いが始まってしまったことは分かっていた。
―― どこで間違ったのだ?私達は・・・!
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