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第八章     泰人先輩
 
もう放課後。

「琶月さん、僕は文芸委員会があるので、終わりしだい生徒会室に向かいます」
「あ、僕は部活かぁ・・・面倒だね~」
「遊先輩、おれも剣道部なんすよ!!姉さん、またあとでね!!」
「俺は生徒会長として、今日の学校生徒の様子を先生方に報告してくる」
「俺は・・・はあ、そういえば提出してねぇやつがあるんだった。琶月、生徒会室で待ってろ。30分もありゃ戻ってくる」

「はい、みなさん頑張ってください」

放課後は、部活も委員会もある。
みなそれぞれ付属しているようで、琶月はまっすぐ生徒会室に行くことになった。

真鶴は文芸委員会、桃真は先生に提出しなければならないものがあるらしい。
秋は生徒会の仕事で、遊と俊祐は偶然同じ剣道部だったとか・・・。

「あれ?波沢先輩は何もしていないんでしょうか」

「俺?」

生徒会室でぼーっとしていた琶月は、返事が返ってくるとは思わず、突然聞こえた声におどろいてしまった。

「俺は一応弓矢やってるけど、今日はお休み♪」

声が聞こえるほうを見ると、笑顔の波沢先輩がいた。

「波沢先輩、いらしていたんですか?」
「んーまぁ、今きたとこだけど」
「全然気が付きませんでしたよ」

波沢先輩が「そう?」と言って、私の隣に腰掛けた。
そして、なぜか頬を染めながら言う。

「今日の昼に言ったこと、覚えててくれてサンキューな」
「はい・・・?」

あ。
そういえば、お昼に生徒会室にくるように言われてたんだっけ?
・・・忘れていたとはいえなかった。

「ところで、なぜ私を呼んだんですか?」
「あ、あのな?ちょっと言いたいことがあって・・・」

波沢先輩はごにょごにょと言う。
どうしたんだろう・・・?

「言いたいこと、ですか?」
「えっと、まぁ、そうだ」

何かを決心したようにこほんと咳払いをした波沢先輩は、真っ直ぐに私を見ていった。

「そのな?お前は俺のこと“波沢先輩”って呼んでるけど・・・できれば、名前で呼んで欲しいな、なんて・・・」

「名前で・・・?」

なるほど。今まで波沢先輩と呼んでいたなあ。
一人で納得すると、琶月は笑顔でその名を呼んだ。

「“泰人先輩(たいとせんぱい)”でいいですか?」

「おお、おぉ・・・」

すると泰人先輩は、顔を真っ赤に染めた。
なぜかはわからない。
泰人先輩は、また顔を赤く染めながら言う。

「それでな?も一個伝えたいことあんだけど・・・」
「はい」

泰人先輩は、少し目を瞑ってから話し始めた。

「俺とお前、初めて会ったとき。俺の中のものは確かに何かを感じたよ。でもな?俺自身が感じた気持ちもあった。それに気付いたのは昨日の夜だけどな」

琶月は話しの先が見えず、ただ黙って聞いている。
そんな琶月を見てか、泰人先輩は何かを少し考えてからまた話し出した。

「・・・気付いてからはさ、妙にお前のこと気になっちゃって。それで、やっぱり俺伝えなきゃなと思ってここに呼んだんだ」

・・・?
伝いたいこと?
すっぱりいえないのか、泰人先輩はためらいながらも、必死に言葉を捜している。
そんな泰人先輩を、琶月はしずかに待っていた。

・・・そして、泰人先輩は琶月を真っ直ぐ見つめる。
伝えたいことを言う覚悟がついたようだった。

「俺はあのとき、一目でお前に――」

――惚れた。

そんな言葉は、琶月の耳に届くまえに・・・消されてしまった。




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