春の恋人
春になった。
だいぶ気候も暖かくなり、日が伸びた今日この頃。
弟と妹がそれぞれの学校へ進学するので、
今日はお別れ会もかねて花見をすることになった。
妹は全寮制の高校、弟は東京の大学、地元へ残るのは私だけである。
そしてアタシの弟は今日も馬鹿であった・・・
「貴様! 俺の恋人に小便を引っ掛けるとは何事だ!」
アタシは酒飲みながらそんな風景を眺めている。
徹宵の暴走の後に続いて遥と桜ちゃんが謝りながら徹宵を追いかけている。
「おい、そこのクソガキ! 俺の恋人に登るんじゃねえ!」
「うぇ〜んママ〜怖いよ〜」
「泣いて事が済んだら警察官はいらねえぞぉ!」
徹宵が子供にアイアンクローをしつつ説教をする。説教したいのはこっちだっつうの
その時、遥と桜ちゃんが徹宵に追いついた。おぇ・・・酒飲み過ぎて気持ち悪い。
「やめんかいっ! この馬鹿徹宵」
「死ね、馬鹿兄貴」
桜ちゃんの拳が徹宵の顔にめり込み、徹宵は倒れた。
そしてすかさず遥が足を振り上げて徹宵を踏みつける、いいコンビネーションだ。
しかしタフがとりえの徹宵はすぐさま復活した。
「貴様ら何をする!?」
「アンタね・・・アレは虐待よ!」
「桜ちゃんのいうとおりよ・・・お兄ちゃんってホント馬鹿」
遥と桜ちゃんが徹宵を踏みつけながら言う・・・うわ、周りに人が集まってきたよ・・・
「しかしだなぁ・・・あのガキは愛しの彼女を踏みつけたのだぞ?」
「いいじゃない! 子供なんだから・・・」
「そうそう、桜に登るなんて子供なら当たり前じゃない!」
いがみ合う三人・・・いい加減馬鹿らしくなってきたのでアタシは喧嘩を止める事にした。
うおっとと・・・酒が入りすぎたせいか上手く立ち上がれない。
アタシは寄りかかっていた桜の木の枝に手を伸ばすとそれを使って立とうとした。
─ボキッ─
鈍く大きな音が響き渡り枝が折れた。そして喧嘩をしている三人も、観客達もアタシのほうを見た。
しばらくシーンとした空気となり、やがて徹宵が一歩前に出た。
「姉貴〜! よくもやりやがったな・・・今ここで松茸と蜜柑と桜の恨みを晴らしてやるぜ!」
徹宵を助走をつけて飛び上がると私に向かって襲い掛かってきた・・・
徹宵を片付け、また酒を飲んだりしていると花見もそろそろお開きの時間だ。
遥はゴミ捨てに出かけ、アタシはトイレで死ぬほど吐いてきて、
桜ちゃんは徹宵の看病をしている。
そしてトイレからの帰り、アタシが場所へ戻ろうとすると、
二人ははたから見てもいい雰囲気になっている。
アタシは茂みに隠れると聞き耳を立て始める。
「ねえ・・・徹宵は桜がすきなの?」
「ああ、俺の恋人だ! 誰にも否定はさせん」
「・・・・・・ふーん・・・じゃあ問題です。私の名前は何でしょう?」
「藤川 桜だろ?」
「正解です・・・・・・じゃあ私も恋人にしてくれるのかな?だって私も桜じゃん」
うはー!! ついに桜ちゃんあの馬鹿に告ったよ・・・義妹になるのかな?
あ〜昔から薄々気づいてたけどまさか今日かましてくれるとはハッピーハッピー!
徹宵はそれから五分くらい黙っていたが、やがて小さくつぶやく。
「──────ば」
小さすぎてほとんど聞こえなかったがアタシには言いたいことはわかっている。
さーてそろそろ出て行ってからかってやるかな!
アタシはそう思うと立ち上がって二人のほうへ向かった。
|