5月.黄金週間につき 前
5月早々訪れてくれる短期連休。俗に言うゴールデンウイーク。
もっとも、金が無い学生身分にとって、やる事と言えば、
「……2時、寝よ」
午後2時。太陽がサンサンと陽を地面に落とす時刻。
宿題? 知りませんねぇ、そんなもの。宿題するくらいなら、昼ドラでも見てた方がよっぽど勉強になる。男女関係についてのみ。
枕元に置かれた携帯電話が、一昔前のアニメのオープニングテーマを鳴らしながらメール着信を知らせた。
「まったく、誰だよ、こんな時間に……」
折りたたみ式の携帯電話を開くと、画面上辺りにメールマークが点いていた。 手慣れた手つきで操作し、受信メールを開いた。
『件名 宿題終わった?
勉強会やろうと思ってるんだけど、どう?』
ん? 誰コレ? 登録されてないけど。あ、そうだ。こないだケータイ洗濯しちゃったんだよな。で、買い替えたんだっけか。
すると、りんかな?
『件名 大原さんですか?
こないだ、ケータイ洗濯したら、壊れちって』
1分もしないうちに返信メールが届いた。
『件名 だよ
知ってる。泣いてたじゃん。で? 来る? ヨっちゃんが今いるけど』
行かないわけがない。宿題など1ページどころか、1文字足りとも書いてないさ!
当然勉強会に行く事をりんに伝えると、バッグに宿題プリントを詰め込み、家を出た。
りんの家は自転車で行けば10分ほどの場所にある。俺は愛車にさっそうと跨がり、自転車を走らせ……サドルがな〜い!
何コレ!? どんな嫌がらせ!? サドル泥棒ですか? 奇天烈な怪盗もいたもんだ……。
犯人は当然、清美だ。
「キヨバカタレ! サドルが無い自転車なんて乗った日にゃ、痔とお友達ですよ、タコ助!
それとも何? 立ち漕ぎマックスで行けってか!? ふざけんな! 自転車くらい優雅に乗らせやがれ!」
あ、そうか。今日はカマ兄とショッピングだ。
ムリ! ムリ! サドル無し自転車で街中駆け抜ける勇気無いよ俺? だって、チャリンコドロボーだよどう見ても!? 何より立ち漕ぎなんて疲れるじゃないさ!
俺はサドルのため、自宅調査を開始した。
「…………」
サドル IN 冷凍庫。 ドコの銀河系にサドル冷やす生命体がいるんですか!? こんなサドルに座ったら、お尻だけ霜焼けになっちゃうよ!?
冷凍サドルを自転車に取り付け、腰を下ろすが、当然冷たい。サドルを隠し、さらに冷やす事での2段構え、か。やるな、トラップマスター清美。
「だが、しかーし! りんが! りんが待っている! 尻は冷たくとも、心はヒートアップ! いざっ!!」
…………。コレ無理。
一体いつから冷凍してたんだよ、あのバカタレ。冷たいって言うか、痛いよコレ? ジーンズ生地の防寒能力を突破しちゃってるよコレ?
仕方ないので、徒歩。
澤谷市は田舎と言えば田舎、都会と言えば都会。ビルの隣に目を向けると、有形文化財並の古式家屋があったり、1個5円のラムネが売られている駄菓子屋の近所に有名スイーツ店があったり。とにかくごった煮状態。
近くにある駄菓子屋を通りかかると、小さいお子様に混じって大きなお子様が見えた。そのお子様はこちらに気付き近寄って来た。
「はいさーい」
「ジャイアントなチャイルドがいると思ったら、リョウか」
「ラムネいるか?」
峰岸良太。駄菓子好きで、学校の授業中だろうが長距離マラソン中だろうが、駄菓子を手放さないある意味タフなヤツだ。ちなみにぽっちゃり系なわけでなくノーマルサイズ。身長もちびっ子と比べて大きいだけで、ノーマルサイズ。
リョウに頂いたラムネを口に放り込み、りん宅へ向かうわけだが、
「リョウ、付いて来るの?」
「道が同じだけだぜよ。オレは南台まで買い物ぜよ」
「ぜよってなんだよ。……南台っつぅとキヨとカマ兄が行ってたな」
「そう姫いんの!? うぉぉ! テンション上がってきやがった! じゃ、な!」
良太は叫び声を上げながら、物凄いスピードで走って行った。
そう姫ってのは、奏太姫じゃキツイだろ、と言う理由から付けたアダ名。ファンクラブが。
「友人がオカマの兄貴のファンて……複雑だなぁ」
そうして俺は家路に、って違うよ! あれぇ〜? なんの用事だっけ。いや、待て、こう言うのは思い出さないと、脳が老けてくって昼間のご長寿番組で言ってたな。
「……あ! 勉強会に行くんだっけな!」
時刻は午後2時36分。 たかだか勉強会に行くだけでなんでか疲れたな。帰りたいかも……。しかし、宿題は片付けなければならんし。
面倒だが、やはり宿題片付けるため、りん宅へ向かう事にした。
そんな、5月の昼下がり……
《続く》 |