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俺の日常につき
作:高田高



2月.少し違うお話 その三



 2月14日。
 恐怖のサバトです。
 今年は気のせいか、去年以上に恐怖を感じる。
 朝、学校に行く前に、カマ兄とキヨからチョコを頂いた。
 カマ兄に『義理でごめんね』と言う意味のわからない謝罪をされる。
 本命だったらあらゆる意味で落ち込むよ。余裕で引きこもりだよ。
 キヨのチョコはハート型で可愛いらしいが、デカデカと『バカ』の一文字が。しかも油性ペンの白で。
 せめてホワイトチョコで書けよ。
 しかも、食わないとめちゃめちゃ怒るんだよなぁ。

 通学路の途中で待っていたりんと遭遇す。

「おはよ。はい、これ」

「チョコ?」

 りんから渡されたのは、

「なに?」

「アポロ」

 アポロ? 月に行ったヤツ? あれ、違ったか? エンデバー?
 まあいいや。しかし、バレンタインに彼女からアポロって。

「嫌なの?」

「頂くけど……あのさ、あなたは私の彼女なんですか?」

「飼い主」

 即答!?
 いっそ、清々しいよ。
 だから、りんに惚れたんだろうなぁ。
 だから? どこから来たDAKARA?
 文法的にあってる?
 まあ、いいか。

「ねえ、東吾。噂……聞いたんだけど」

 出来れば聞きたくないよ、その噂。
 あの半笑いバカタレが流した噂か?

「二葉さんと婚姻したって。あれ、なにかな?」

 なにかなぁ〜?
 めちゃめちゃ怖ぇよ。
 笑ってるけど、笑ってない、みたいな。
 殺気じゃないもの。殺す気配じゃなくて、必ず殺す、必殺だもの。
 こう言う時は、真剣に答えんと、取り返しが付かなくなる。

「実はさぁ、冴が俺を気に入ったとかで、まあ向こうが勝手に騒いでただけだ。作り話ですよ」

「冴ちゃん? 私が聞いたのは礼子さんよ?」

 あれれ、話が変わってませんか?
 噂って進化するのか?
 いや、出所はわかってる。あの半笑い悪魔だ。

「あれも向こうが勝手に盛り上がっただけだ。気にするな」

「うーん、今更気にはしないけどさぁ。大丈夫なの? なんかややこしい事になってんじゃないの?」

 気にしないってのは逆に寂しいかなぁ。
 しかし、まいったな。
 学校中に知れ渡ると、面倒だよな。

 なんて心配無用だった。



『私、二葉吉野は、木之下東吾様と結婚を前提にお付き合いしております。
 そこで彼女を気取る、大原りんへ宣戦布告す。
 本日16時。澤谷自然公園へ来られたし!』

 校舎入口の生徒連絡板に、恥ずかしげもなく張られた挑戦状。それに群がるやじ馬畜生ども。
 当然ですが、りんは大激怒。挑戦状をくしゃくしゃに丸めると、俺に投げ付けた。

「東吾、あんたも来なさいよ」

「イエッサ!」

 二葉三姉妹。なんとも面倒な事ばかりやってくれる。
 騒ぎを聞き付け、現れたのは、二葉長女の半笑い悪魔こと半笑い悪魔。
 いいだろ、半笑い悪魔で。間違ってないから。

「先輩、すみません! 吉野がなんか、昨日から部屋にこもってると思ったら、いつの間にかこんな事に。あ、噂は私が流しましたけどね」

 なんとかしてよー。逮捕してよ、この悪魔。
 後、ツインテール眼鏡も一緒に。
 それを聞いたりんは、二葉長女に対し凄まじい殺気を放ち、腕組み仁王立ち。今にも掴み掛かりそうな雰囲気です。いえ、ぶっ飛ばしそうです。

「二葉さん。あなた、自分が何したかわかってるわよ、ね?」

「や、あ、あの……す、すみません」

「謝って済めば神様いりませんよ」

 警察どころか神様いらないってか?
 これは相当キテるな。
 死人が出なきゃいいんですけど。

「吉野さんに伝えて下さい。死んでも文句言うな! って」

「ぅえっ!? わ、わかり、ました」

 俺の心配よそにヤる気満々だよ、この娘!
 しかし、こうなると止めに入ったら俺があちらの世界だからなぁ。
 とりあえず16時までは平和に学生生活を送れるよね。
 もう、俺傍観者になりきろう。だって命が危険だから。


     ◆


 時間の流れとは早いもの。平穏を願えば願う程、幸せであればある程、流れはより早く、決壊したダムの鉄砲水上等です。
 つまり、あっという間に16時を迎えた。
 ちなみに授業中も休憩中も、りんは苛々しっぱなしで、誰一人話し掛けられなかった。

 りんに引きずられながら向かった先は、澤谷自然公園。
 自然がパノラマビューな、落ち着く風景です。
 そして、自然公園の数km先では、宅地開発やらゴルフ場建設やらで林をばっきばきにしてる。
 なんだかなぁ〜。

「東吾、あの娘?」

「そうだな。胴着に袴姿で竹刀持ってるあれだな」

「へぇ、なかなか可愛い娘じゃない。ねえ?」

 俺はなんて言ったらいいの? 何か言ったら一瞬で俺物語マイストーリーが終わる気がするんですけど?
 無言のまま、ツインテール眼鏡少女のところへ辿り着くと、横に立っていた半笑い悪魔、いや、今は泣きそうな顔してる礼子が、りんに竹刀を差し出した。

「つまり、剣道?」

「はい。あの……大原先輩、睨まないで下さいよぉ」

「え? あはは、ごめん。無理」

 りんは竹刀を受け取ると、吉野の前に立ち、ボクシングの試合前並の緊迫感と睨み合い。

「で、決着方法は?」

「どちらかの戦闘ふの、」

「ストップ! 待て待て! 物騒過ぎるぞお前ら。面一本で終了だろ? どんだけ完膚無きまでに叩きのめしたいんだよ!」

「トーゴ様の命令には従います。あなたはそれでいいの? 大原りん」

「なんでもいいわよ。首討ち一本でいいわよ」

 なんでもよくねぇよ!
 首討ち一本ってなんだよ! 処刑だろ、それ!?

「勝ったらトーゴ様を頂きます。負けたら切腹」

「OK」

「おい、コラ! ダメだよ! 今は何時代だ!? 戦国乱世ですか!? 負けたら手を引くでいいだろ!」

 俺の提案に対し、吉野は首を振りこちらに駆け寄ると、俺の手を取り、潤んだ上目を向けた。

「いいえ、ダメです。この薄汚い女狐の事、あなた様を追い回すような変質者になるやもしれませんから」

 俺を追い回した変質者はお前だよ。
 部屋に盗聴器まで仕掛けたヤツが言うセリフか?
 ……そう言えばコイツ、なんでストーカー卒業したんだ?
 今はいいか。りんが見てるから、上段構えで。
 狙ってるから。俺を。

「吉野さん。先に言っておくけど、私剣道やった事ないの。だからルール無用でいい?」

 と同時に縦一閃。繋いでいた手を切り離すように落とされた一撃を、たやすく竹刀の腹で防ぐ吉野は、にやけ面。

「ルール無用? わかってるんですか? 面を付けていないのに、喉元に突きを受けたら死にますよ?」

「じゃあ、突きは無しね。本当に死なれたら困るし」



 えーと、あの。これ、なんて作品?
 『俺の日常につき』の作風と違わない?


 2月.バレンタイン死闘編へ、


《続く》


 いや、有り得ないから。


 展開がなんだかドタバタコメディーになってきましたよ! 暴走すると止まりませんよー!       先に言っておきますが、剣道に関しては作者全然知りません。決闘と言えば、剣道と言うノリです。後、女性剣士が個人的に好きだからです。











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