1月.正月につき 後
初詣とは、正月にはじめて社寺に向かいお参りする事を言う。
ちなみに大雑把に言うと正月とは一月中を言う。
つまり、1月31日に新年はじめて寺なりに行った場合も初詣になるわけだ。 とまあ、そんな役にも立たない知識はポイして。我々四人は、近くの神社に来ていた。
四人とは、俺、りん、オカマ、オカマの彼女だ。
後半の紹介がいい加減? んなこたぁ、いいんだよ。
しかしながら、毎年恒例とは言えこの人込み。なんともはや、某天空の城から落っこちたメガネ野郎の言った『人がゴミのようだ!』という言葉を思い出さずにはいられない。
「りん。迷子になるなよ」
りんは差し出した俺の手を照れ臭そうに――あれ? りんの手ってこんなちっちゃかったか?
振り返るとそこにいたのは、いつぞやの幽霊少女じゃ、あ〜りませんか。
「兄ちゃん、明けましておめでとう!」
「あぁ、おめでとう。えっと、早苗だっけ?」
「冴だよ」
となにやら仲良くちびっ子と新年の挨拶をしていると、それを見ていたりんの目はジェラシィ全開。
りんさん、相手は小学生くらいのちびっ子だよ?
「あの人、兄ちゃんの?」
俺の。なんかとんでもなく背徳的な言い方だ。まるで俺のものみたいな。
「東吾ロリ。その子は誰なのロリ? 返答次第じゃ新年早々、警察のお世話よロリ」
コンプレックスにあたる意味合いのロリって言葉じゃなくて、すでに語尾だが口癖だかみたいになってますよ?
「文化祭ん時の幽霊屋敷にいた幽霊少女の早苗ちゃんだ。変な誤解すんな」
「冴だよロリ」
意味もしらないくせにロリとか言うんじゃないよ、ロリータ。ちびっ子に言われるとダメージがデカイよ。効果はばつぐんだ!
「冴ちゃん。どうしたの? 迷子なの?」
冴は首を振ると、なぜか俺の後に隠れ、りんを睨むように見つめている。
勇気あるな、冴。俺がそんな事したら、りんに何されるか。
「兄ちゃん、あげない」
いつの間に俺はお前のものになったんだよ。
「……」
なぜ俺を見る、りん。そんな哀れむような目で。そんな蔑むような目で。
「冴。おマセな事言うな。変な事言うと後が怖いから。とにかく親探すの手伝ってやるから、りんを睨むのやめて」
冴はうなずきはするものの、りんと睨めっこしている。そう、睨めっこしていると言う事はりんも睨んでいる。
なんだ、コイツら。新年早々、掴み合いの喧嘩でもはじめそうなんですけど?
「りん、ムキになるな。相手はちびっ子だぞ?」
「ちびっ子じゃないよ。冴、中学生だもん」
あれ、日本の義務教育期間て縮小されたのか? だって、冴ちんどう見ても小学3、4年だよ? こんなチンチクリンが中学生って……。
あ、ゆとり教育の影響で、身体成長にもゆとりが? 何かしらのゆとりが?
しかも中学生と聞いたとたん、りんの表情がいっそう険しいものに。
「冴ちゃん、いくつ?」
「じゅ、14」
嘘付け。その半分にしか見えないんですけど?
悪い魔法使いに何かしらのゆとりを与えられたのか? ゆとりってなんだっけ?
「冴。嘘付くなよ。中2は文化祭や初詣で迷子にゃならんぞ?」
「ホントは13」
謎なサバ読みだな。
体は子供、頭脳は大人な、響きだけ聞くと妙にいかがわしい気がする、某名探偵でも迷宮入り確実な謎だ。
どうでもいいけど、今時『ばぁーろぉ』は無いと思うよ? 名探偵さん。
にしても、13歳が本当だとしたらミニマム過ぎだろ。
「嘘はダメよ?」
「ふえっ!?」
おいおい、りんさん? ガキんちょに対して殺気立ち過ぎじゃあございませんか?
「……じゅ、10歳」
「そー、10歳かぁ。ちゃんと言えたわねぇ。えらい、えらい!」
いや、りんがえらいよ。えらい怖いよ。お前のそれは質問じゃなくて脅迫的な、尋問的な、10歳が本当なのか怪しい感じになっちゃったんだけど。
「誰と来たの?」
「お、お姉ちゃん」
「お姉ちゃん? どんな人かな?」
「そこにいる」
冴がりんの背後にいる少女に指差した。その少女は文化祭の時、冴を探していた女子生徒。冴の姉ちゃんだったのか。
「木之下先輩、ですよね? はじめまして。私、二葉礼子って言います」
二葉……。二葉って言やぁ、知らぬ者のいない大財閥、とまではいかなくとも、この辺りじゃ有名な金持ちだ。何を隠そう俺の親父が働く会社の社長様だ。
親父は海外転勤中なんですけどね。
しかし、社長令嬢様が俺を知っておられるとは。
「二葉さん? 冴ちゃんの事ちゃんと見てなきゃダメじゃない」
「あ、はい。すみません」
社長令嬢様にもお構いなしかよ。りんがいれば、無人島でも暮らしていけそうな気がする。
あ、ダメだ。料理出来ないんだ。
「あの、それで、木之下先輩。ここであったのも何かの縁。頼みがあるんですけど」
「随分時代がかった前フリだな。頼みって?」
「あの、私と結婚してくれませんか?」
・ ・ ・ ・
「「はぁーっ!?」」
そりゃハモりますよ。ユニゾンしますよ。シンクロ率100パーセントで、人型決戦兵器が自分の手足のごとしですよ。
心の障壁ごときデコピン一発だよ。
いや、そんな少数しかわからんようなネタはどうでもいいの。
出会った縁でいきなりプロポーズって、ネタが無いからって無茶ブリが過ぎるよ、あなた!?
「あ、ふりですふり。結婚と言うか、結婚前提にお付き合いしている事にしてもらえれば」
「なに? 政略結婚でもさせられるとか?」
「いえいえ。おじい様があまり長くないんです。すごく良くして頂いたんですが、恩返しが出来なくて。だからせめて、幸せだよって教えて上げたいんです」
じい様思いの良い娘だけど、出来ればそのいたわりを俺にも向けて欲しい。りんがめっちゃ睨んでんだよ!
「いや、そんなの無理だから。あったばかりで無理だから。俺不器用だから」
「二葉さん。おじいさん、後どのくらいなの?」
りんの言葉は地雷だったのか、二葉は泣き出し、あろう事か、俺にしがみ付いて来てくれやがった。
もう、なに? 冴と言い、この姉妹。俺をおもちゃにしてそんなに楽しいわけ?
「おじい様、後、十年持つかどうかって……」
「「ふざけんなあぁ!」」
そりゃあさ、りんだってブチ切れるよ。
なんだよ、これ? 天然ちゃんにも程があるだろ? しかも、じいさん元気に毎朝ジョギングしてるだと? 十年どころか、一年戦争も生き残れるんじゃないんですか?
新年早々、とんでもない事に巻き込まれそうになったわけだが、脳ミソが緩い二葉の頼みは当然断った。が、なぜか妙になつかれちまったようで……。
あ、そう言えばキヨが巫女の衣装着てうろうろしてたけど、あいつコスプレにハマったか?
タケは見なかったけど。
ま、いっか……。
1月.正月につき
おしまい
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