1月.正月につき 前
12月31日の23時45分。今年も残すところ15分となった現在。
俺こと、木之下東吾17歳。趣味は読書(主に女性が載っている。更に裸体)、映画鑑賞(主演は女性。更に裸体率高し)。
健全男子な俺は、リビングのおこた(こたつの意)にて、半裸のりん(下着は付けてる)が腕に抱き着いて寝息を立てている、と言う不健全極まりない状況にある。
ここまでの説明だと、どう考えてもリビングにてヨロシクやった後かと思われそうだが、実際はまるで違う。
向かい側で寝転がるヨっちゃん畜生が持ち込んだ、アルコールっぽいジュースのせいである。
当然未成年故、アルコールは飲めませんが、あくまでアルコールっ“ぽい”だけであって、ジュースである事は確かだ。
理解頂けただろうか?
つまり、ヨっちゃん畜生の持ち込んだそれにより、りんは若干酔っ払い、『あれ? このジュース、アルコールっぽくね?』、と誰しもが思った時はすでに手遅れ。
『暑いよぉー』とか『脱がしてぇー』だのわめきながらセーターを脱がし――もとい、脱ぎだし。ブラウスを脱がし――もとい、脱ぎ。『と〜ご〜、しゅきらよぉ〜』とか『と〜ご〜、キスしれぇ〜』だの幼児退行しながら俺に抱き着き、デレ状態の猫のごとく甘えまくり、ヨっちゃんの手前、俺はなけなしの理性を引っ張り出し、りんのガン甘えに耐えていたら、いつの間にやらゴロン。
しばらく起きていたヨっちゃんも同様に眠ってしまい、今現在にある。
今年も後15――いや、すでに13分となった今、まるで締まりの無いどころか、パッキンがイカれてダダ漏れの水道状態の性生活を思わせる状況で、新年を迎えて良いものか?
否。断じて否。
新年の始まりがその年の明暗を分かち候。
わけわかんない事言ってますが、とにも角煮も、いや、かくにも。りんを叩き起こし、服を着せ、いつも通りの新年を向かえねば。 平凡、サイコー。
「りん。起きろ」
「ん〜……、と〜ご〜、大しゅきよぉ〜」
なんだ、コイツ?
幼児退行しっぱなしか? これはこれで有りだが、ってか、性格が180度どころか回りまくって、540度くらい変わっちまってるよ。
「俺は笹本も好きだよ」
「死ね」
お、起きてる?
死ねって、素で死ねって言われた。
彼女に素で死ねなんて、一生のうち有るか無いか。いや、そもそも他人からも言われる確率低いよ。
未確認飛行物体に連れ去られる人を眺めてたら、流れ星見付けて、願い事三回言い切れちゃったくらい有り得ないよ。
「嘘だって。俺はお前の事が、」
「――っくし!」
言いかけた時、りんがくしゃみ一つ。
微妙な空気が流れた。
「…………ねぇ」
「へっ?」
「続き、言ってよ」
つまり起きてたわけで。
「起きてんなら離れなさいよ。それと今すぐ服を着なさいよ。風邪引くぞ」
「……うん」
りんはおこたから出ると、放ったままのブラウスとセーターを手早く着込み、俺の横に戻って来た。
俺をじーっと見ているわけで。
「続き」
「えっ!? あー、俺もお前の事、す――」
『ただいま〜』
監視されてる? この部屋。ってか、俺個人?
声は野暮用で出掛けていたカマ兄のものだ。
ちなみに野暮用と言うのは、商店街でのカウントダウンイベントの客集めだったとか。巫女ルックにより。
商店街の連中はカマ兄が男だと言う事は知っているわけ。知っててもか?
頭の中の事が本気で心配になる。
「あら、りんちゃん。いらっしゃい」
「お邪魔してます」
お邪魔してくれたのは、どっちかと言うと、カマ兄ですけどね。
ついでに知らせておくと、キヨはタケとデート。
キヨは完全に女の子になり、最近では気味が悪いくらい優しい、事もある。
基本凶暴。
「あらら? 芳江ちゃんも来てたの?」
「ええ、私が誘いました」
「あらー、じゃあ着替えて来なきゃ」
男っぽくない男だが、ヨっちゃんはこんな彼氏でいいのかよ。
いや、待て。芳江ちゃんとな? 少し前まで浜岡さんて呼んでなかったか?
おいおい、あっちもこっちもか? なんだか俺とりんだけ取り残された感があるんですけど。
だからと言って、そんな理由でりんとするつもりはないが。
「なに? さっきからじーっと」
「お前さ、その、あれ……取り残されてる、と言うか、置いてかれてる、みたいな感じある?」
「は?」
オブラートに包みすぎて、工場長に『君ねぇ、オブラートもタダじゃないんだから。ゼリー菓子をゆるくコーティングするぐらいでいいんだから。あんまり無駄使いしちゃ困るよ』と脳内寸劇で怒られる程だ。
「いや、気にするな」
「東吾。私、待たされるの嫌いだけど、東吾だったら待たされても、いいよ?」
可愛い事言ってくれちゃって。
あれだろ? 上目使いで瞳を潤ませて、俺をその気にさせて、既成事実的なものを作ろうとか思ってんだろ? バレバレなんですよ。
いや、別にりんをポイするつもりはサラサラないから、既成事実的な事をやらかしてもいいんだが、精神的拘束力は緩い方がいいに決まってる。つまり意気地無しなわけですけど。
「そうか。ならいいや」
「えっ!?」
めっちゃ驚いてる。やっぱそうだったか。コロっといくと思ってたな? まったく、女は怖いよ。
「東吾もしかして……不能?」
「おいー! 失礼だし、そんな事女子が口にしちゃいけませんよー! 深夜番組じゃなかったらピーとか入るレベルだからー!」
「だったらさぁ、なんでそんなに我慢するわけ? 私ってそんなに魅力無い?」
開き直ると女は怖い。
例えるなら、アッコをおまかせ出来るくらいの怖いもの知らずな怖さだ。
「我慢、て。我慢出来ないからって理由でお前、納得出来るのか?」
「出来ない」
なんだ、このヤロー。
日本語通じてんだよなあ? 良いのかダメなのかわかんねぇんですけど?
てか最近、りんはずっとこんな調子だし。
あれか? 人間にも発情期とかあんのか?
「東吾さ、京子や高良さんと仲良いでしょ? なびかないか心配なのよ」
なびかないか心配ねぇ。 普段器用になんでもこなすクセに(料理以外)、変なとこ不器用だよな(料理とか)。
「りん」
「な、んっ!?」
りんが言いかけた瞬間、ドラマのワンシーンのように俺はりんの唇を奪った。 しばらく――いや、実際には数秒。俺とりんは少々濃厚に、お子様には見せられない程度のキスをすると、適当なところで唇を離す。
数瞬、りんの瞳にはいつもと違う光が宿っていたが、すぐに我に返った。
なんか小説の文章みたいで、恥ずかしっ。
「きゅ、急にしないでよ。びっくりするじゃない」
「じゃあ、もう一回」
その時部屋に戻って来たカマ兄に、ビンタをくらったのはなぜだろう?
お前こそヨっちゃんとヨロシクやってんだろ?
そんな12月――いや、1月の年明け……
《続く》
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