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俺の日常につき
作:高田高



11月.文化祭につき そのニ



 羽を羽ばたかせ天に飛翔する……カエル。
 タイトルは『かえる』
 なんなんですかね? 色々ツッコめそうなタイトルにしてしまいましたが、まあ、なかなかの出来になりました。
 なにせ、ボツをくらわず、出展されましたから。
 あれかなぁ、合コンとかで言う引き立て役?

 そんな考えを巡らせながら、俺は自分のクラスの出し物の手伝いを頼まれ、教室を訪れた。

「来ましたよー……って、誰もいないじゃないよ」

 教卓の上には完成済みの看板が置かれている。2−C、クレープハウスと書かれてある。
 噂ではあるが、なんでもタケはクレープ焼き名人らしい。自分でも、僕はクレープ三級だから、とわけのわからん自慢をしていたくらいだ。

 誰もいない教室。とりあえず俺は自分の席から椅子を取り上げると、窓際に置いて腰掛けた。
 ちなみに、机は全て後に詰められ、教室半分が作業可能なように空けられている状態。

「……やる事無いし、帰るかなぁ」

 ウチの高校は体育祭や文化祭の準備期間中、登下校はほぼ生徒まかせ。そのため当日まで休む者も少数ながら存在する。実はしっかりチェックされており、内申に影響しているらしい。 などと考えていると、グラウンドに、なにやら人だかりが出来ていた。

「なんだ? 喧嘩か?」

 よーく見ると、中心となっているのは、よく知る人物だった。

「カマ兄……。なんちゅー格好してんだ」

 奏太はスリットの入ったチャイナドレス姿、頭も雰囲気を出すためだろう、おだんごに編んでいる。
 似合い過ぎて怖いんですよ。三年になって部活辞めてから、筋肉が落ちて、それと同時になぜか肩が丸くなって、余計に女っぽくなってしまいました。もう本当に姉だよ。

「チャイナ喫茶でもやるのか?」

 グラウンドを見ながらつぶやいていると、教室の戸が開く音が響いた。

「おっ? トーさん。はいさーい!」

「リョウ、みんなどこ行ったのさ?」

「さあ?」

 良太はいつも通り菓子袋を片手に持っている。袋に描かれているのは、ウインクする爽やか笑顔のとうもろこし。このとうもろこしは、自分が食べられるのを知っても尚笑顔なのだろうか? それとも知らないだけ? どうでもいい話だけど。

「それより、なんかヨっちゃんが呼んでたぞ?」

「あぁ、そう。どこに居んの?」

「2−A。なんか仮装喫茶やるらしくてさ、自分とこの出し物無視して、そっち手伝ってる」

「仮装? メイド喫茶みたいな?」

「わからん。行ってみるか?」

 メイド喫茶のメイドは実際は、ただのウェイトレスなわけだから、言うなれば仮装みたいなもんだろう。仮装と言うか、なりきり? と言うわけで、俺と駄菓子王子は2−Aに向かった。向かったと言っても、歩いて1分と掛からない距離なんだけど。

「ヨっちゃん、来たよー」

「いらっしゃいませー」

 出迎えたヨっちゃんの格好は、以前ケーキ屋で見たエプロンドレス。他の連中は、タキシードに黒マント、ドラキュラか? 他にも、漫画やアニメに出てくる感じの魔女ルック、中世騎士の甲冑姿、巻き髪ブロンドのマリー・アントワネットみたいなの、とにかくごちゃごちゃ。ごった煮と言うか、もはや闇鍋。

「なに? ここなに? メルヘンなんだかホラーなんだかセレブなんだか、統一感と言う言葉を丸無視した、とりあえず全部入れた、みたいな感じはなんなの?」

「だから仮装喫茶」

「……それで、なんか用事?」

 俺の言葉に芳江はにやりと笑みを浮かべると、教室奥にある段ボール箱の山に向かった。
 段ボール箱には、タキシード、ドレスなど書かれてある。つまり衣装が入ってるわけだ。
 その中から段ボール箱を一つ取り出すと、俺に手渡した。書かれてあるのは……。

「ゴスロリ?」

「そうそう」

「俺が?」

「え? 着たいの?
 清美ちゃんに着て欲しいんだよ」

「そう言う事か」

 清美は確かに背が一般女子よりやや低め、スタイルもやや残念な感じ。ロリータファッションなわけだから当然、そう言ったロリータスタイルに合う。問題は着てくれるかだ。

「キヨちゃんのゴスロリか。見てみたい」

「俺も……」

 俺と良太はしばし思考があちら側に飛んでしまったわけだが、その妄想を現実にすべく、とりあえず家に帰る事にした。
 現在15時53分。授業も終わって、時間的にはすでに家に帰っているだろう。家事があるから清美は部活やってないわけだし。

「よろしくね、トーさん!」

「はいよー」

「よーし、行くか」

「リョウ、来るのか?」

「当然だ!」

 良太の目は、スポコンならメラメラと炎が出ているだろう。

 段ボール箱を担いでグラウンドを抜け、正門に向かう途中、俺の名前を呼びながら駆け寄るチャイナドレス姿の姉みたいな兄が見えた。

「帰るんでしょ? たまには一緒に帰りましょうよ」

「制服は?」

「ここ」

 持っていた少し大きめのバッグをひょいと持ち上げ、俺に見せた。学生鞄ではなくバッグ。
 一応言っておくが、普段からバッグ片手に登校しているわけではない。

「そもそもバッグなんて持ってたか?」

「もらったの」

「誰に?」

「岸ちゃん」

「あぁ、あの人」

 岸ちゃんとは、岸部典子と言う一応教師。教師なんだが、普段から学校とクラブを間違えてないか? と言う色気出しまくりな格好をしている。
 バカな男どもから頂いたバッグやら服やらを、教師や生徒にあげたりしている。当然、風紀がどうのと注意を受けているが、どう言うわけだか、PTAの方々とは仲が良く、ずっとそんな感じ。

「あ、あの! 俺、いや、僕、峰岸って言います! そう姫のファンなんです! 応援してます!」

「ありがとうー」

 なんだ、これ。芸能人にばったり会った、みたいな。握手してるし。
 応援てなんだ? そう言えば、モデルやってんだっけな。それの事か?
 しかしよぉ、そいつ男だよ? 女みたいな外見だけど男だよ? それでいいのか、お前は?

「僕もこれからお家にお邪魔しようかと思っていたんですが、ご一緒してよろしいですか?」

「どうぞどうぞ」

 なんだろう、気持ち悪いって言うか、ぶっ飛ばしたい。普段敬語使わないヤツの聞き慣れない敬語って、なんでこんなにも苛立つんだ?

「おーい、トーさん、置いてくよー!」

「置いてっちゃうわよー」

「デカイ声で名前を呼ぶな! こっちを見るな!」

「久しぶりに一緒に帰るから恥ずかしいの? まだまだ子供ねぇ」

「まったくですね」


 そんな11月の夕方……


《続く》












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