俺の日常につき(14/30)PDFで表示縦書き表示RDF


 作中、三人称文では名前、一人称文では名字、と分けたため、若干わけわかんないかもしれませんが、気にせず読み流して下さい。ごっちゃな部分もありますんで。グダグダなんで。
俺の日常につき
作:高田高



10月[延].情けない俺につき 後



 翌日。月曜日は日曜日のドシャ降りが嘘のように――ドシャ降りだ。もういいよ雨は。鬱になるどころか、怒りが込み上げてくるんだよ。あんまり降りすぎるとダムのコンクリがふやけて決壊するんだぞ。

 朝のホームルーム。対して気にするはずもない毎朝のそれだが、

「笹本ー……は、休むって電話あったか」

 落ち込んでるよなぁ。当然だよなぁ。泥沼に浸かってるよな、きっと。
 繊細な乙女心傷付けちゃいましたか?
 グラスハートにくっきり傷痕残しちゃいましたか?

「……東吾」

 ホームルームが終わると、頭を抱えてうなる、一見ヤバイ病に見舞われたような俺に、りんが話し掛けてきた。

「昨日、京子から電話があった」

 京子……、あぁ、笹本の下の名前って京子だっけか。

「なんて……?」

「お前にフラれた、って」

 おいおいおいおい! 何言ってくれちゃってんのあの娘! 彼女にバラしちゃうって、めっちゃ怨んでるだろ! 俺の交遊関係をスッキリさせるつもりなの? いっそ呪い殺してほしいんですけど!

「京子が東吾の事好きなの、知ってたんだ、私」

 まさか、怨まれてるのは俺じゃなくて、りん?
 友人の気持ち知りながら付き合うって、そりゃあ怨まれるわな。しかも、今まで通り友達面されたら、その怨みったら呪怨なんか目じゃないよね。貞子も逃げ出すね。

「今日、行くからさ、付いて来て」

 りんはうじうじ悩むタイプじゃない。喧嘩を売られたら、ロケットランチャー担いで行くようなルール無用のタフネスだ。
 女の戦いは怖い。正直行きたくない。


     ◆


 行きたくないって言ってもダメなんだよね、これが。拒否権なんて生まれた時から無いんですよ。
 と言うわけで、放課後。授業終了とともにりんに連れられ(引きずられ)笹本宅へとやって来た。

「2階建てか、なかなかのお住まいですね」

「学校からも結構近いしね」

 玄関のインターホンを押すと、女性の声が聞こえてきた。京子の声ではなく、落ち着いた印象のそれは、母親だろうか。

「はい」

「あ、どうも」

「あら、りんちゃん」

 りんは京子の家に何度か来ているらしく、母親とも顔見知り。

「上がって、今は京子も起きてるから」

 起きてるって、風邪とか言って休んだのか。しかし、母親は仮病を見抜けないのか? どれだけ天然な母ちゃんだよ。

 2階を上がって左右に伸びる廊下の左奥が京子の部屋。
 少し緊張した面持ちでりんは扉をノックした。

「……京子」

「……りんちゃん? 開いてるよ」

 返って来た声はひどく弱い。それどころか咳込む声がする。
 あれ? 仮病じゃなくて、本当に風邪引いて休んだのか?

 部屋に入ると、ベッドで横になる京子が弱々しい笑顔を見せた。顔は熱を帯びているらしく真っ赤。でこには冷却剤の入ったタオルが巻かれている。

「……あれ、木之下君もいるの? お見舞いに来てくれたんだ、ありがと」

「風邪……だったのかよ。妙な心配して損した」

「……私も」

 りんも俺と同じく、なにやら面倒な事になるだろうと覚悟していたらしく、ほっとした表情を見せている。

「なんか調子悪いなぁ、とか思ってたんだぁ。木之下君に抱き付かれたからかなぁとか思ってたら、熱があったみたい」

「……東吾」

 笹本怖い娘! なにげに復讐してるよね、これ。事実なだけに何も言えんのは、笹本の策だろう。

「ふぅーん。そう。フっておいて抱き付いたわけ」

「えっと、あの、あれだよ……ごめんなさい」

 しょぼくれる俺を見て、笹本はくすくす笑っている。ただ、嫌らしい笑みではなく、いつもの明るい笑み。俺もつられて微笑んでいると、

「何笑ってんだ!」

 りんは俺の襟首を掴み上げると、鬼の形相で睨み付けてきた。
 何一つ解決してない状況で、笑みを浮かべるとは何事だ! って、軍曹が言ってたなぁ。軍曹って誰だ?

「ごめんなさい。あの、ほんと、ごめんなさい」

「ごめんなさいって……。ごめんで済めば戦争なんて起きないんですよ!」

 ごもっともだ。戦争のはじまりなんてつまらん小競り合いなのに、終わらせるには多大な犠牲が必要だ。結果的に良い事なんてないのに、それがわからないのかねぇ、偉い人は。
 とか言ってる場合じゃないんですけどね。

 二人のやり取りを見ながら、くすくす笑っていた京子は笑い止むと一息つき、体を起こすと真剣な表情でりんに話し掛けた。

「あの、りんちゃん」

 それに気付いたりんは俺をようやく解放すると、笹本の隣に腰を下ろした。

「落ち込んでるから休んだと思った?
 ……本当はすごく落ち込んでるし、りんちゃんの事、ちょっと怨んでる」

 本人を前にしてよくはっきり言えたもんだ。怨んでる相手とこうやって話し合えるもんなのかねぇ。
 まあ、それ以前に友達付き合い長いからって理由はあるわな。

「でも、そんなの自分が惨めなだけだし。何より、りんちゃんの事、好きだから」

 そう言って微笑む京子に、りんの表情も緩む。
 恋愛が絡むと友情は崩れると言うが、俺は……わかんないな。あえて言うなら、何事にも例外は存在するって事だ。

「……でもね。私、やっぱり諦め切れない」

「東吾じゃなくても、他に格好良くて、頭が良くて、性格良いのなんてごろごろいるじゃない。なんで東吾なの?」

 コイツ、本当に俺の彼女なのか? 言葉の節々にトゲがあるんですけど。

「じゃあ、りんちゃんはなんで木之下君なの?」

「……え?」

 りんは俺に視線を向けると、首を傾げ、それに合わせて俺も首を傾げた。

「情けない、ところ?」

「うぉーい! コラ! 情けないところが俺のチャームポイントか!
 まあ確かに顔も身長も普通だし、頭も……普通レベルだけど。なんかあんでしょ? あんた俺の彼女でしょ?」

「彼女って言うか……飼い主?」

「ふざけんな! 俺はペットか? ペット扱いか?  あぁー、でも悪くない……わけないから! そんな変質的感情持ち合わせてませんから!」

 と力説する俺を無視して、二人は今日一日の出来事を談笑していた。
 あれだけ振っておいてポイ捨てかよ。投げ捨てジャーマンだよ。そんな態度なら俺はもうあれだよ……帰るよ。

「俺、先帰るから」

「東吾、帰るならジュース買って来てよ」

 帰るならジュース買って来いって、どんな文法の使い方だよ。明らかに間違ってますよ、それ。パシリとか言うレベルじゃないもの。飼い主って言うか女王様だもの。

「……ミルクココア?」

 で、結局逆らえないのが俺のダメなところ。あぁ確かに情けないは、これ。

「さすが東吾。ちゃんとわかってるじゃない。京子は何飲む?」

 笹本の悩む姿に俺はある事を思い出した。

「緑茶? 麦茶? はとむぎ茶? プーアル茶?」

 どこかで聞いたその質問に、笹本はくすくす笑っていた。
 以前耳にした言葉に、女性を美しく見せる最高の化粧は笑顔、と言うのがある。まったく鼻が曲がるくらい臭いセリフをよくもまあ言えたもんだ。
 でも、そうだよな。



 翌日。笹本はいつもの笑顔で学校に来ていた。
 りんとも普通に会話してるし、俺にも普段通り話し掛けてくる。普段通り振る舞う。逆の立場ならどうだ? 俺には出来ない。

「おーい。木之下君、話聞いてますかー?」

「聞いてますよー」


 やっぱ情けないヤツだよ。俺は。


 10月[延].情けない俺につき   おしまい


 最後の辺りでやるネタだったんでしょうが、出来るだけくだらない話を続けたかったので、早々にやっちまいました。       次回、11月.ペットは飼い主に似るって言うけど、多分気のせい。         お楽しみに〜











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