第五章
「それで車返しに来たから。後はもう何もないわ」
「おい」
確かにこいつはニューハーフだ。そのことは正直言って気持ちが悪い。けれどこいつはちゃんと車を返しに来てくれた。そのことについて思ってである。
声をかけた。それで言ってやった。
「何か食わないか?」
「何かって?」
「だからだよ。御礼にだよ」
それをしないと話にならない。おいらだってそういうことはわかってるつもりだ。それで声をかけてやったってわけだ。
「いいか?それで」
「御馳走してくれるの」
「御礼にだよ。嫌か?」
「何か悪いわね」
「悪いのは御前の趣味だけだよ」
そのニューハーフだってことだ。とにかくそれだけは我慢ができなかった。変態そのものにしか思えない。まさか世の中に本当にこんな奴がいるとは思えなかった。
だが性格はいいみたいだ。そうじゃなければわざわざ車も財布も返しに来てくれたりはしない。それで御礼をしたくなったってわけだ。
「だからだ。どうだよ」
「それじゃあお言葉に甘えさせてもらって」
「入れよ、家族がいるけれどな」
「御家族に紹介してくれるのね」
「馬鹿言え、誰が御前なんかと付き合うかよ」
こうして御礼はさせてもらった。これがそのニューハーフとの一部始終だ。誓って言うがこいつとは本当に何ともない。けれどだ。
それをからかわれる日々が続いている。いい加減うんざりしているのが本音だ。
「それでそのニューハーフは元気かい?」
「まだ付き合ってるのか?」
「付き合ってはいねえよ」
それははっきりと言ってやった。
「だがな」
「だがな?」
「何だよ」
「ダチにはなったぜ」
それにはなった。これは本当のことだ。
「気のいい奴だぜ。何なら紹介しようか?」
「そうだな。何か面白い奴みたいだな」
「それだったらな」
周りもこの話に乗ってくれた。とにかくとんでもない経験だったし笑い者にもなったが何故か悪い気はしていない。これもロックンロールかも知れない、キザにそんな風に考えてもいるおいらだった。とりあえず財布と車は無事でそれは何よりなことだった。
恋のGO GO DANCE!
2009・12・31
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