部活の引退式。
三年の先輩が泣きながら最後の練習をしていた。
泣いた先輩はいなくなり、誰もが泣かずにもくもくと練習に励む。
残されたのは青のラインが入った、三年間丁寧に使われてきた、主を失ったテニスラケット。
ラケットは見ていた。三年間。
そしてこれからどうなるのかも知っていた。
想像通り、ラケットは捨てられた。それなりにラケットとしての役割を果たしていた。
そんなことは関係ない。
古いものはただ去るのみ。
ラケットは暗闇にいた。
植物の中で埋もれていた。
何も見ず、音だけが聞こえていた。
一体どれくらいがたったのだろう?
それすら分からない。
グリップが外に出ているのは知っていたけど。だからといって何ができるわけでもない。
――声が聞こえた。聞いたことのないような高く、鈴を鳴らすような声だった。
「先輩! 何でこれ捨てられてるんですか?」
「さぁ? よく分からないな」
「もったいない……。これもらっていいですか?」
「いいよ。どうせ誰も使ってないし。でも、そんなぼろいもんでいいの?」
「いいんです!」
ラケットは引き抜かれた。握られた感じが初心者だった。
光を得たラケットは歓喜の叫びと悲しみの声を上げた。
久しぶりに見た景色は、昔インターハイで握られていたときと変わらず、青く青く澄んだ空だった。
この少女もすぐ、このラケットとお別れするのだろう。それまで、ラケットはラケットであろうとするだろう。
再び主を失うときまで。 |