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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第3章「生き脱ぎ」

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第3章「生き脱ぎ」17  道行きて・男子V班と女子Y班

V班には朝食のあとになってカレナードの大怪我が伝えられた。それまでミシコ達は思い当たるところを探し回っていた。 訓練生棟をこっそり抜けて講堂や遮音室のある階まで行った。
「女王区画にいるって…どういうことさ。」
口うるさいシャルに、キリアンは言った。
「マリラさまの紋章を持ってるだろ。だから…彼はマリラさまとどこかで通じてるんじゃないか。施療棟に移されたら様子を見に行こう。そうだ、マヤルカ・シェナンディにも知らせてあげなきゃ」
ミシコは諸手を上げて賛成し、自分が伝えに行くと張り切った。堂々とミンシャに会えるからだ。
「ミシコ君、退屈だわ。一緒に遊ばない」
ミンシャは蘇りの知らせが待ち遠しくてたまらない様子だった。
「お昼のサンドイッチを持って施療棟群の隣の林へ遊山に行きましょうよ。あそこは眺めも抜群よ。せっかくのお休みなンだから、楽しみたいわ」
彼女の小麦色の肌が眩しかった。鋼のように艷やかな黒髪からは乙女の香りがした。
「それはいいね。ついでに施療棟に寄る用事が出来たんだ」
「なンなのよ。」
ミシコがカレナードの一件を話している最中に鐘が鳴り、女王の蘇りが知らされた。ミンシャは親指をぐっと突き出し、グッドタイミングと言った。
男子V班と女子Y班は一定の距離を置きながらも、チラチラと互いに視線を送りながら施療棟へと歩いていった。その中でマヤルカとキリアンは心配の方が先立ってピクニック気分ではなかった。オーレリーがいつものおっとり口調できわどい質問を投げている相手はアレクだった。
「それでカレナード君と一緒にシャワーや湯船を使うときはどうしてるの」
「どうもしないね。彼を男扱いするのが男子棟の礼儀だからな」
「そうなの。つい見えちゃった時はどうしてるの。男扱いしてるの」
「基本的に見て見ぬふりだ。いちいち騒いでたら詰所から舎監が飛んでくるからな」
「そうなの。今日は姿が見えないわね、彼」
「大怪我したらしい。もうすぐドクトル・リリィの研究室に運ばれて来る。それでこうして待ち構えてるんだ」
双子は相変わらず賑やかにシャルを翻弄していた。それに巻き込まれているのがヤルヴィで、傍で面白がっているのがアラートだった。
キリアンはマヤルカに訊ねていた。
「カレナードはガーランドに来る前のことをあまり喋らないんだ。君や君の家族のことは別だけど」
「彼はもうオルシニバレ領国に戻ることが出来ないから…。でもシェナンディの家のことは喋るのね。それを知ったら父も姉も喜ぶわ」
「彼はシェナンディの家族同様だったのかい」
「私はそう思ってたわ。私は五歳のときから彼と一緒に寝てたのよ」
キリアンは添い伏しを知らなかったので誤解しそうになった。
マヤルカは笑って、オルシニバレ地方独特の民間療法を説明した。
「面白い風習でしょ。でも効くのよ。彼のおかげで私は死なずにすんだわ。祈祷師が言うには彼と私の相性はすごく良いの」
「それは添い伏しでの相性なんだろう」
キリアンの問いはマヤルカの心に波を立たせた。
「もちろんそうだけど、添い伏しの相性が良いということは特別なのよ。特別な縁なんだから!」
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