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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第3章「生き脱ぎ」

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第3章「生き脱ぎ」16 夢だったとしても残酷な

カレナードはうとうとしていた。
夢に瀕死のマリラやウーヴァが現れては消えた。そのうちに彼は目の前にみつあみを垂らした女王が居るのに気づいた。しかし、これも夢のうちなのだと思った。夢なら何でも言えると思った。
「マリラさま、あなたに殺されそうでした。僕を呼んだのは殺すためだったのですか。
あなたの呼び声は助けを求めていました。
傍に居てさしあげるくらいしかできませんが…来ずにはいられなかったのです」
マリラはじっと彼を見つめるだけだった。いつもの彼女と違って頼りなく、戸惑いが滲んでいた。彼にはこのようなマリラは初めてだったが、夢の中では何でもありだと勝手な理屈に従った。
「ウーヴァに会いました…真っ黒な…あの世のような闇があった…。ガーランドの中なのに大地の匂いがして…それから血の匂い」
女王の髪が小さな灯りをうけて淡く輝き、カレナードはマリラを老いた妖精のようだと思った。それでもマリラは美しかった。美しさは慰めになった。
「マリラさま、みつあみがよくお似合いです…。女王の髪型よりお優しくみえます」
カレナードは夢うつつのまま目を閉じ、また眠ろうとした。マリラが口を開いた。
「私が助けを求めていたと…それでそなたを呼んだと…」
カレナードは目覚め、女王は言葉を探して一度遠くを見た。
「そなたの名は覚えていた。だが、ほかの記憶は失くしてしまった。そなたは私に全てを捧げる契約をしたカレナード・レブラントなのだな」
カレナードはこれが夢ではないとやっと気づいた。そして生き脱ぎでマリラに起こったこの変化に衝撃を受けていた。夢と勘違いして女王に言いたい放題をしたことより、自分が忘れられた存在であることにひどく動揺した。
「マリラさま…僕は…カレナー…ド…・レブラ…ントで…す。」
それだけしか言えなかった。
女王もまた過去のかかわりを失った相手を前に戸惑っていた。
「そなたとの間にあった…詳しいことを知らぬ。女官達や艦長どもが知っておろう。彼らに教えてもらわねばならぬ。…情けないと思わぬか…」
女王の唇は震えていた。彼女はカレナードの額に手を当てた。手は冷やりとして心地よかった。
「マ、マリラ…」
「少し熱がある。そなたはまず傷を直すことだ。よく休みなさい。要らぬ話で疲れさせたようだ」
去っていくマリラの後ろ姿に向かって声を掛けたかったが、何も言えなかった。そのまま眠りに落ちた。
彼女が立っていた跡には、ウーヴァと契約した者の独特の孤独の香りが残った。
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