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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第3章「生き脱ぎ」

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第3章「生き脱ぎ」14 紋章人を呼んだのは誰

ジーナが浮かない様子で言った。
「マリラさま、もう一つ重要な問題が残っております。なぜ彼はやすやすとあの部屋に入れたのでしょう。不思議でなりません。誰も彼を止められず…」
ヤッカが証言した。
「カレナードは非常に自然な振舞いでした。嘘を言っているとは思えない自然さがあったので、女官長殿を呼んで確かめようと考えたのです」
リリィは、カレナードが女王の声を聞くことは不可能だと言った。
「理屈で考えればありえないでしょう。彼が空耳を聞いたのです。が、我々には未知のプログラムがあり、それが偶然発動したのかもしれません。彼の耳元でマリラさまの声がささやかれるように」
艦長がニヤリとした。
「それはまた、ロマンチックなプログラムですな。ドクター・リリィ。この場合、コード仕掛けのプログラム発動のせいにするよりは、虫の知らせのように彼は女王の呼びかけに応えたことにしておきたいですな、私としては。世の中、理屈ばかりではつまらんでしょう」
リリィは艦長を無視し、艦長はそんなリリィを可愛くないと思いつつ、可愛いものを見る目で眺めた。彼女は艦長の男性性を否定するかのように冷たく自説を唱えた。
「儀式のお部屋の閂は最初から掛かっていなかったのはありませんか。それならカレナードはあっという間に部屋に消えますわ」
ジーナは思い出していた。
「そういえば、彼の左手が青い光をはなっていましたわね、ヤッカ隊長」
「ああ、そうだった。紋章があのように光るとは」
マリラは膝に茶碗を抱えていたが、小机に戻した。
「ジーナよ、紋章は紋章に過ぎぬ、そんな仕掛けがあるとは思えぬ。が、理屈でないことが起こったのだろう。私がカレナードを呼んだ…か…それは…分からない。生き脱ぎでそのあたりの記憶は全て失われた」
エーリフはおおらかに言った。
「気に病まれますな、マリラさま。彼は紋章人です。あなたに魂までも捧げた唯一の人間です。生き脱ぎという生死のかかった大事に…何か…我々の理解を超えた現象が起きたのでしょう」
「だからといって、命を危険にさらしてよいことにはならぬぞ、エーリフ」
「おや、マリラさまは彼が乗船したときに『私が死ねと言えば死なねばならぬ』とおっしゃいましたぞ」
ヤッカが自分もあの場にいて、そのお言葉を覚えておりますと言った。
「私はあれに相当厳しい扱いをしたようだな…。やれやれ、記憶がないとえらく心もとない」
リリィが失礼ながら、と前置きした。
「彼と契約した際の詳細な記憶が女王のものとして残ってないのでしたら、彼は私人のマリラさまにその身を捧げたことになりませんか」
全員がリリィの説に聞き入った。
エーリフが「論理的」と一言つぶやいた。リリィは続けた。
「言い換えると、マリラさまが女王としてでなく、彼にプライベートな認識をしているため、生き脱ぎで彼に関する記憶が失われ、かろうじて名前だけが残ったのです。」
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