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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第3章「生き脱ぎ」

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第3章「生き脱ぎ」13 夜明けに白く

リリィの自信は鉄壁だった。カレナードの傷は確かに難しい場所にあったが、やりぬく決意に溢れていた。施療棟のチームとマリラの女官達は彼を助けるために力を尽くした。
カレナードは治療の間に何度か気が遠のいた。その度に周囲の緊張感に満ちた声に引き戻された。
『傷口を洗うぞ…コードではなく洗浄水を使え…手足が冷えきっている…女官長殿…もっと洗浄用の水を…深い傷だ
…ウマル医師の見立ては……肺に達している…解析コード行くぞ…
同時にマハ助手は縫合ナノマシン起動コードを…
リリィ・ティン、解析反応出ます…単位設定を…アントニオに任せる…
壁側胸膜裂傷…胸膜腔はどうか…気管支循環系血管チェック…マハ、いいか…
よし起動コード…カレナード聞こえるか!息を止めていろ。
女官長殿、患者に気付けを!しっかりしろ、女男!燭台を抜くぞ…』
アントニオはリリィが口は悪いものの、珍しくカレナードを励ましているのを聞いた。それに応えるかのように少年は気力をふりしぼっていた。
生き脱ぎの夜は更け、空が白白と明け始めた。カレナードは女王の居間に急ごしらえしたベッドに移され眠っていた。
灯りを落としたその部屋にはベル・チャンダルとリリィの助手の1人マハ・コジマがいた。2人は同期の訓練生で顔見知りだった。
「マハ、しっかりやってるようね。あなたが一緒だと心強いわ」
「彼が助かってよかった…。本当に…」
マハは心底ホッとしているようだった。施療棟に務めるようになって6年になる彼女の口調は、燭台がいかに危険な場所に刺さったかを物語っていた。
「もう一つ上の肋間に刺さっていたら心臓を傷つけていたかもしれないし、神経の損傷が無かったのは奇跡だわ。
しばらくは痺れや痛みが残るでしょうけど、ドクトルがずっとチェックしてる人ですもの、体の方は心配ないわ。体の方はね…」
「マハ、何が言いたいの」
リリィの助手は声をひそめた。
「ドクトル・リリィは彼を憎んでるの…。理由は分からない、でも憎んでるのよ」
マリラはやっと体を洗い、新しい部屋着になって執務室に出た。
そこにはリリィとヤッカ、ジーナ、そしてエーリフ艦長がいた。エーリフは熱い茶をすすっていた。
「マリラさま、目撃者の話をまとめますと、カレナードが儀式に立ち会って重傷を負ったことは間違いございません。マリラさまご自身はいかように考えられますかな」
女王はため息をついた。
「私が新しい体になって数時間は…闇の中をさ迷っているようなものだ。苦しく浅い眠りが続き、やっと目覚めるような感覚しかない。何も覚えておらぬ。
いつも前の肉体が流した血にまみれ、自分はマリラ・ヴォーなのだと気付くまで…おそらく恐ろしい姿をしているのだろうよ」
皆は沈黙のまま女王の次の言葉を待った。
「私はあの部屋に椅子を置き、座ってウーヴァを待つのだ。手に燭台を持ち、自らを弔いながらな…。彼に刺さったのはその燭台に違いない。私が我に戻った時、彼の背中にはすでにそれが刺さっていた。自分では刺せない場所だ。ならば何らかの事故か私が刺したか、可能性は二つある。彼が回復したら、何があったかはっきりするだろう」
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