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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第3章「生き脱ぎ」

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第3章「生き脱ぎ」12 死線再び

生命の危機を告げる叫びが部屋中に響いて、マリラの正気が呼び覚まされた。彼女は自分がひどい姿でカレナードを組み敷き、彼が瀕死で助けを求めているのに驚いた。
「なぜ…、なぜそなたはここにいる。確か…カレナード…だな、答えよ」
少年は力なく答えた。
「僕をお呼びになりました。…あなたの声が…ここに来て欲しいと……僕を呼びました。マリラさま、僕は死にます…。燭台が、燭…台…」
あとは言葉にならなかった。
マリラは儀式用の燭台が深々と刺さった背中を見た。寝間着はべったりと血に濡れていた。燭台が刺さった場所は背骨の右脇の第九胸隙だった。すぐさま少年に喝を入れた。
「気を抜くな。死なせはしないぞ。しっかり気を保て!」
マリラは燭台が刺さった場所に強力な清拭と殺菌のコードを用いた。さらに燭台を固定コードで止めると、扉を開けた。
「施療棟のリリィ・ティンのチームを呼べ。大至急である!生死にかかわると言え」
ジーナはいつもと全く違うマリラの蘇りに気づいたが、控えている医師を呼びに走った。
「ベル・チャンダル、アライア・シャンカール、手伝え。カレナードを前室まで運ぶのだ。灯りと布と湯を十分に揃えよ」
「マリラさま、ガウンを召して下さい」
マリラはアライアが差し出したガウンをカレナードに掛けた。彼は背中からの出血と寒さに震えつつ、死の恐怖に耐えていた。ベルが籐の衝立を運んできた。彼女達は何とか彼を載せた。
前室には医師のウマル・バハが待ち構えていた。彼は傷を診ながらカレナードを励ました。
「致命傷ではないぞ。太い血管は無事だ。燭台を抜くまでは気絶しちゃあいかん。がんばるんだ、女王の紋章人!」
マリラはジーナが引っ張り出した予備のガウンに袖を通し、負傷者の横に座った。
「ウマル医師、止血コードに何人必要だ。リリィが来るまでに出来ることはしておきたい」
「女王とロロブリダ女官長と私で十分です。が、その前に軽く圧迫をかけた方がいいでしょう。静脈からの出血が多い。布と油紙を」
ウマルは固定コードで動かない燭台に注意しつつ傷を押さえた。呻くカレナードをなだめるようにベルが濡れたハンカチで彼の額や頬を拭いた。マリラは手を洗ったが、体中に乾いた血糊が張り付いていた。彼女はそのままカレナードの治療に加わった。彼女もまた手練のコード遣いだった。
「では、範囲指定とタイミングを頼む。私は補助に回ろう」
「まず一番深い静脈から参ります。カレナード、息を整えられるかね。無理なら出来るだけゆっくり呼吸するんだ。いいかね」
カレナードはかろうじて返事した。ジーナもコードを唱えるために傍らに座り、ベルがカレナードの肩を押さえた。
1回目の止血コードを終えるのに3分かかった。
施療棟からリリィ・ティンのチームが到着した。アントニオとリリィの助手2人が一緒に来た。
リリィは燭台が刺さったままのカレナードにまったく動じず、医療者の自信を見せた。彼女はマリラに招集されたことが誇らしげだった。
「女王、応急処置をしていただき助かります。おかげですぐに取り掛かれます」
「なんの。お前をあてにしている分、私もやれることをやったまでだ。礼はウマルに言え。ここで治療を見ていたいのだが、邪魔にならぬか」
「いえ、少しも。」
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