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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第3章「生き脱ぎ」

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第3章「生き脱ぎ」9 異変

儀式当日と翌日はガーランドは特別な日程が組まれていた。女王は春分の午前中、訓練生全員と非番の乗組員に大宮殿で謁見した。それが女王臨死式だった。
彼女は「しばしの別れである」と挨拶し、十ヶ月訓練生と新参訓練生は非常に抽象的な生き脱ぎの儀式の説明を受けた。
「女王が負うガーランド船主の義務であり、浮き船に宿る大いなる地霊にいったん命を預ける儀式である。今宵10時に私は一度死に、新しい日が明ける頃、地霊の力を身に帯びて戻ってくるだろう」
若者のほとんどは死の苦しみより蘇りの奇跡に関心があった。それでも、いつもより神妙な面持ちで大宮殿を後にした。カレナードは大宮殿で見たマリラが女王の威厳をたたえている姿に安心したが、白くなったマリラの顔はひどく寂しそうに見えた。彼はV班の部屋に戻っても、彼女のことが心から離れなかった。彼は祈った。
「マリラさまの苦しみが少なくて済みますように」
訓練生達は女王の一時の喪に服するため、翌日の蘇りの知らせがあるまで、訓練生棟の敷地から出ずに静かに過ごす習わしだった。夕暮れにはホールで死者のための詠唱が行われた。同じことがガーランドのあらゆる部署で行われ、夜の灯火はいつもより少なかった。
女王は午後に残りの乗組員に謁見したあとは何も口にせず、身を清めて夜を待った。例の白いドレスに身を包み、裸足になったのは夜の8時だった。艦長が最後の挨拶に来た。
「おかえりをお待ちしています、マリラさま」
「明日の昼には会えるだろう。いつものように。私が不在の間、浮き船をそなたに託す」
エーリフは女王の手にキスした。その手は氷のようで、微かに震えているように思えた。
訓練生達は静まり返ったガーランドの不気味さが気になって、寝付けなかった。灯りを落とし、さっさと寝支度をしたものの寝床で反転し続けていた。V班の部屋では、いきなりカレナードが出ていき、いつまでも帰ってこなかった。彼は寝間着の上からマントを羽織り、室内用の布靴を履いた姿で上層へのエレベーターに乗った。女王区画は警備隊が守っていた。ピード・パスリがカレナードをヤッカ隊長の元へ連れていった。
「隊長、またこいつです」
「なぜここまで来た。今日がどんな日か知っているだろう」
カレナードは左手の紋章をかざして言った。
「僕をマリラさまのところへ連れていって下さい」
「儀式の最中だ。帰りなさい」
「マリラさまに呼ばれたのです。行かねばなりません。ロロブリダ女官長さまにお伝えください。紋章が痛んで僕を呼んでいらっしゃると」
ヤッカはピードに女官長への伝言を頼んだ。女官長は彼と共にやって来た。彼女は白いエプロンドレスを着て、儀式を終えた女王を迎えるためにずっと何もないあの大きな部屋で待機しているのだ。
「カレナード・レブラント、マリラさまがあなたを呼ぶとはどういうことです」
少年は左手を差し出した。薄くらい廊下でMの形がほのかに青く光っていた。
「僕はマリラさまのところに行かねばなりません」
ジーナはカレナードの目を見た。焦点は定まっていて理性はあるようだ。それなのに、儀式の最中のマリラが彼を呼ぶと、ありえないことを言う。
「あの部屋には内側から閂が掛かっています。あなたが行っても入れませんよ。それにね、カレナード、マリラさま以外にあの部屋に入った者は生きられないのです」
「マリラさまの声を聞いたのです。あの部屋に行きます」
カレナードは言い切って歩きだした。
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