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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第3章「生き脱ぎ」

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第3章「生き脱ぎ」8 道化が教官の仮面を以てやることは

浮き船全体が春分を前にいつもと違う空気に包まれていた。そんな中、道化はエンゾ・ボンゾと名乗り、最初の講義を基礎解剖学にした。円形講義室に新参訓練生を全部詰め込んで、格闘術の何たるかなどはすっ飛ばし、いきなり科学的解説を始めた。
シャルが「変な名前だ」とつぶやいた。カレナードはエンゾの声をどこかで聞いた気がして思い出そうとしているうちに、当のエンゾから指名された。
「お手本になってもらおうか。レブラント君」
カレナードはエンゾの言うとおりに体を動かした。彼は動く人体標本になったのだ。エンゾは標本を巧みに使い、筋肉や血管の流れを説いていった。
「では、春分明けから皆さんにやってもらう体術では、どうなるか。レブラント、足を開いて膝を軽く曲げる。腰を落として、そうそう、柔らかく立って。エイ!」
カレナードの体は一瞬で回転して背中から転がった。あまりの早技に訓練生達は何が起こったのか分からなかった。
カレナード本人もぽかんとしていたが、次の瞬間、エンゾの拳がみぞおちに落ちてきた。
彼はニヤリとした。
「なかなかやる。咄嗟に防御姿勢を取りましたね」
エンゾの拳をカレナードの左手がかろうじて止めていたが、間をおかずエンゾは空いた手で拳を止めた左手を捻り上げた。女王の紋章が歪んだ。エンゾはすぐにカレナードを離し、解説に戻った。
少年はすぐに立って、ゆっくりと先の動作を説明する教官にもう一度転がされた。調子に乗った教官は小さな声で言った。
「お上手、お上手」
その声でカレナードはエンゾの正体を知った。道化は知られたことを察した。彼は少年に手を差し伸べて立たせながら「余計なことを喋るなよ」と威嚇にも似た視線を投げてよこした。
カレナードはその日、17回目の誕生日を迎えてV班でささやかなお祝いをした。
シャルが詩を読み、キリアンは故郷から送ってもらった新しいセーターをカレナードに着せた。ヤルヴィがフィドルを弾いた。アレクは木片を魚の形に彫り、皮紐を通した。
「女系一族からカレナードへの贈り物だ。命のお守りさ。」
あくる日もエンゾはカレナードを指名して投げようとした。ミシコが抗議した。
「教官殿、自分も組手をお願いします!」
「部下思いだな、班長さん」
ミシコが投げられた次の日はキリアンが、そして次の日はアレクが投げられた。自分の番だとシャルが前に出るのをナサールが止めて、年上の面子を保った。
彼らは明らかに曲者の香りがするエンゾ教官からカレナードを守りたかったわけだが、彼を女性として扱ったのかは彼ら自身にも判らなかった。そして儀式の日が来た。
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