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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第3章「生き脱ぎ」

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第3章「生き脱ぎ」5 男と女の間には・年嵩者と若輩者と

艦長は腕組みした。
「マリラさまは身代わりが欲しいというわけですな。それはそうでしょう、2500回もウーヴァに殺されてご覧なさい。誰だって嫌になりますよ。Mの紋章を授けた彼なら身代わりにしたくなっても無理はない」
「女王の変調も彼が現れたからでしょうか」
「当たらずとも遠からず、でしょうな。ところで、お茶が冷めました。替わりに一杯いかがです」
エーリフは酒瓶を取り出した。
「結構ですわ。私は真昼間からはいただきませんの」
「では、次は夜分においでなさい」
夜分に来たら私を食べるつもりね。マリラがエーリフをふった気持ちが少し分かった気がした。
ジーナは12歳で新参訓練生となり、15歳から女王付き女官を勤めた。20歳で婚約した相手は飛行艇の事故で亡くなり、その後は何人か恋人もいたが、女官長になってからはご無沙汰している。恋が若者の特権でないことは承知しているが、エーリフのつまみぐいの相手になるつもりもなかった。
彼女は下層天蓋の大講堂食堂へ向かった。訓練生達の昼食時であり、カレナードは飛行訓練に備えてコルセットを付け直したところだった。彼はその日の夕刻、大宮殿の玄関でジーナと落ち合った。素直になろうとつとめた。ベルやアレクが言うとおり、女王は気遣ってくれたと信じようとした。
ジーナは玄関脇の女王控え室の鍵を回し、彼を落ち着いた調度品の中へ導いた。
「10年前、マリラさまとあなたが出会った時のことを詳しく知りたいのです」
ジーナは話を聞きながら、彼がマリラにもともと深い尊敬と憧れを抱いていると知った。しかし、ガーランドに乗ってから、それらはたいそう揺らいでいるのを感じた。
「マリラさまからの品はもう口にしましたか」
「あれはほとんど友人達と分けましたが、友人の一人が女王さまのお気遣いはちゃんと受け取れと叱ってくれました。今思うと申し訳ないことをいたしました」
「少し痩せていますね。あなたを人形に仕立てたのは、あのような目に合わすためではなかったのですよ。マリラさまも悔いておられました」
カレナードはそう聞いてマリラへの恐れが和らぎ、目に喜びが現れた。それはジーナにも分かるほどだった。彼女は問うた。
「マリラさまのお召があれば、ふたたび来て下さいますか」
「…はい、僕でお役に立てることがあれば」
まだためらいを残してはいるが、少年は女王を尊びていたいのだと分かった。それで十分だとジーナは思った。
浮き船はミセンキッタ領国北部の湖水地方に向けて南下し始めた。そこで春分を迎える準備に入った。生き脱ぎの儀式の前後に玄街ヴィザーツに悩まされたくないエーリフの作戦だった。五つの巨大な湖は天然の防衛地であり、その上空では玄街の攻撃を受ける確率は低かった。
三の月は何度か警備隊を中心に非常事態訓練が繰り返された。新参訓練生は浮き船からの退艦とサバイバルの訓練が課された。シャル・ブロスは3年生の兄が警備隊と一緒に船内にバリケードを築き、コードを駆使して訓練に参加しているのを羨ましがった。
「新参はあしでまといじゃないぞ。俺達も後方支援くらいは出来そうなものなのにさぁ」
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