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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第3章「生き脱ぎ」

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第3章「生き脱ぎ」4 男と女の間には・艦長と女王 

ともかく彼女は、10年前に女王とカレナードが出会った可能性は十分あったと結論づけた。次はあの少年に会わねば。
ジーナがそそくさと立ち上がると、エーリフは「気にかかることをじっくり話し合いたい、食事でも御一緒しながら」と申し出た。
「マリラさまに関することでしょうか。それとも食事の方が主な御用事でしょうか」
「どちらも大切なことです」
ジーナは艦長の誘いにほいほいと乗る女ではなかった。
「女官長にはそのような暇はございません」
ちょっとつんとして部屋を出たが、女王の変調に彼も気を寄せていると思い直した。
「食事するほど時間は取れませんので、今ここでお話ししませんか。艦長殿の執務室で」
エーリフは女官長の提案を受け入れ、お茶を持ってこさせるため電話をした。小一時間の話で、彼もジーナ同様に女王を心配していることが分かった。ジーナはカマをかけた。
「マリラさまをよく御観察のようですけど…お慕い申し上げておられますの」
「もちろんですよ、女官長殿。あれほどの女人にときめかぬ男などおりますまい」
「女王と艦長という肩書きを外しても、でしょうか」
「もちろんです。が、随分まえにふられてしまいました」
ジーナは「そりゃそうよ」と言いかけて止めた。
エーリフはジーナの心中など知らずに思い出を漏らした。
「私は艦長になりたての頃、これでやっと女王に言い寄れる資格を得たと考えていました。15歳で新参訓練生になり、途中で地上勤務をはさみながら30年。その間、マリラさまを想わない日はなかった。マリラさまは度々私と夕食を取られ、会話を楽しみ、踊られた」
「そうでしたわね。私はまだ女官長ではありませんでしたが、何度かお見かけしましたわ」
「ある夜、長らく恋人の1人も持たれない理由を尋ねました」
「それでふられたのですわ」
ジーナは艦長の古傷をからかったが、彼は全く意に介さなかった。
「女王は驚くべき話を聞かせてくださった。あたなも聞きたいでしょう」
それはジーナが知らない話だったので、彼女は身を乗り出した。
「女王は恋人になった男達がことごとく権力や金を欲するようになることに飽いているようでした。私はそうはならないと言うと、苦笑いされて『いや、お前もそうなる』と断言したのです。彼女の言葉で印象的だったのは何だと思います、ジーナ殿」
「え…」
「女王は言った、『一体何人殺したやら…』と。さらに『生涯をまっとうしたのは静かに私のもとを去った男だけだった』と。私は持っていた茶碗を落としそうになりました。」
女官長はまさかと首を振った。
「それはマリラさまのご冗談でしょう」
「いや、男の直感ですが、ほぼ真実でしょう」
「…あの新参訓練生は長生き出来ませんわね」
「ほう!彼が100年ぶりの恋人ですか」
「いえ、全く違いますわ。カレナード・レブラントはMの紋章を持っているだけの未熟者です。艦長殿が口外なさらぬと約束してくださるなら、先日のマリラさまが紋章人を打った件を詳しく話しますわ」
エーリフは約束し、ジーナは語った。
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