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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第1章「禁忌破り」

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第1章「禁忌破り」5 父の命の代償に

毎年、春分の日に彼女は大地霊ウーヴァに殺され、血肉を与えてきた。そして、ウーヴァの霊力により、ガーランドと深く結び付けられた真新しい体に再構成されて蘇る。
それが生き脱ぎの儀式だ。
その苦痛のため、かつての黒髪は淡いブロンドに、緑の目は灰色に変わり果てた。
「ああ、人でないウーヴァは人の死の苦しみを知らないし、知ろうともしない。あれは一度として一瞬で死に至らす事なく私を殺した…。
諸々の大地の精霊たちよ、耐え難い苦しみを受け入れる力を我に宿らせ給え」
ガーランドとアナザーアメリカのために、女王に課せられた義務を遂行するために、彼女は霧の湖畔で一人祈った。
その時、マリラの耳に微かな声が届いた。それは彼女のなかの何かを呼び覚ました。
「子供の声が。こんな所に」
マリラは鮮やかなオレンジ色の戦闘服の上に真珠色のコートを羽織り、飛行艇のドアを閉めた。くっきりと形を保つ唇が、短い操作コードを唱えると飛行艇はロックされた。
それから彼女は女王の顔に戻ると、恐れのない足取りで泣き声の主を探しに谷を遡った。
谷は禍々しい匂いがした。六歳ほどの少年が板切れを手に、呆然と立っていた。
女王はひと目で事のあらましを悟った。旅の途中の親子が土砂崩れにあい、難を逃れた子供が力の限り土を掘って父の遺体を見つけたのだ。土砂の中から太い大人の男の腕と馬車の破片、荷物の入った鞄が突き出ていた。
少年ははじかれたように板切れを捨て、彼女の足元に突っ伏した。
「ガーランド女王!マリラ・ヴォーさま!」
彼は気づいたのだった。マリラの真珠色のコートの肩に女王の紋章が縫取りされている。これを身につけられるのは、このアナザーアメリカで浮き船の女王だけなのだ。
彼女は少年の言葉に頷き、「よくぞ我を呼んだ」と応じた。
彼はひざを折り懇願した。
「ガーランドの女王さま。どうか父の命をお助けください。代りに僕の血と肉をお取りください」
マリラは静かに答えた。
「そなたは禁忌を犯すぞ」
アナザーアメリカの人々は命や魂を代償にガーランドに個人的な願いことをしてはならなかった。それは誰に対しても、どの領国に対しても、ガーランドは中立であらねばならなかったからだ。
追い詰められた人間たちは時としてこの禁忌を犯したが、伝説が言う彼らの最期はこのうえなく悲惨なものだった。
子供は微かに震えたが、再び願いを言った。
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