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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第2章「新参訓練生」

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第2章「新参訓練生」30 秘密協定成立

T班のホーン・ブロイスガーが手を揚げた。彼は新参班長会の代表を務めていた。
「女の体に男の心、か。カレナード・レブラント。確かに見せてもらった。それで俺達に何を求めるんだ」
カレナードはありのままを打ち明けた。
「僕はこの体でいることが、時としてとても苦しい。そして辛い。だからこそ皆に見ておいて欲しい。この胸が男の羨望の的だとしても、僕にはいらないものだ。切って取れるものなら、今すぐにでもそうしたいほどなんだ」
カレナードの周りは静かになった。彼らは徐々に目の前の女男の痛みを受け入れた。
「だから興味本位や下心で近づく奴には拳を用意している。V班の傷痕を見てもらえば分かるだろう、僕はやる時はやるからな」
V班全員が壇上に上がり、ミシコは皆に語った。
「カレナードを見かけで判断するなよ。彼のこぶしは鋭く入るぞ。いきなり食らったキリアンは吹っ飛んだんだぜ。なぁ、キリアン」
「ああ、目から火が出た。しばらく立ち上がれなかったさ。みんな、下手に彼に構うとこうなるぞ」
ミシコは続けた。
「僕達もカレナードを『彼』ではなく『彼女』と呼ぶ連中には厳しく対処するつもりだ。V班班長として頼む。彼を男として付き合ってくれ」
放ったらかしにされていたサナールが、班長の風格を保って言った。
「ふん、俺をダシにしやがって。おい、男子棟の諸君、V班のヤツらがカレナードを女扱いしていたら、俺たちが殴ってやろうじゃないか」
ホーンが後を受けた。
「どうだ、皆。カレナードにスカート履かせるようなことは無しということで」
周りからも笑いとともに、「よし」を示す声とサインが広がった。それを見たナサールは音頭を取った。
「じゃあ、ここはひとつ、新参男子の秘密協定だ。ヴィザーツの誇りにかけて、守り抜くことを誓おうじゃないか。このことは女達に言うなよ」
衣服を身に着けたカレナードに向かって、彼は腕を伸ばしパンパンと拍手を促した。周りの新参男子達が後に続いた。
大講義室に響く拍手の中で、ナサールはカレナードと握手した。男気を見せたい連中が次々とカレナードに握手を求めた。15分はすぐに過ぎて行った。
ヤッカ隊長が壁を叩きながら大講義室に入ってきた。
「男子諸君、会合は円満に終わったようだな。私の地獄耳には聞こえたぞ。カレナード・レブラントの件は私もよく知っている。彼の禁忌破りをこの目で見ているからな」
女子達が戻ってきた。彼女達は男同士の話がいい具合に落ち着いたのを肌で感じていた。ヤッカは授業を始めた。
「さて、男だ女だと言っている暇はもう無いぞ。今日はしっかり飛行艇の構造と操作の基本を頭に叩き込み、明日からは体で覚えるんだ。
知ってのとおり、アナアーアメリカの空は高度3000メートルより高く飛ぶことは出来ない。ガーランドのエンジンでさえ機能不全となるこの空の謎が解けるまで、まだ時間が必要だろう。まことに厄介だが、我々ヴィザーツにとって空は道であり、どの種類の飛行艇も手足のように使いこなして一人前だ。君達は高度2500メートルを疾駆する感覚を十分味わってもらおう。飛行艇演習の第二段階は毎日が船酔いと覚悟したまえ。オンヴォーグ!」
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