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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第2章「新参訓練生」

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第2章「新参訓練生」26 男と女の間には・その2

リリィが猛然と入ってきて、診察するためにカレナードの毛布を剥いだ。居並ぶ友人達の前に彼の胸が晒された。背後の視線を無視して女医は聴診器を使い、それからおもむろに振り返った。
「見世物じゃないのよ。午後の実習に行ったらどうなの。サロンを病室代わりにされては困るのよ。今度こそ艦長に言って、分析室でも何でも増設してもらうわ!」
V班は実習の代わりに教官から罰の仕事を言い渡された。それに向かいながらシャルは言った。
「あの女医はオソロシイね。自分がカレナードを見世物にしたくせに、俺達を叱るんだぜ」
キリアンがつぶやいた。
「早くV班に戻ってくればいいんだ」
皆が怪訝な顔をした。班長は訊いた。
「お前、カレナードを嫌っていたんじゃないのか」
キリアンの答えはシンプルだった。
「やり直したいんだ。彼が許してくれるなら」
アレクが言った。
「彼は男として扱われるのかな…彼は男子棟にいられると思うか、おい」
「女子の実習服はスカート付きなんだぞ。男ならあれは着たくないだろ」とシャル。
ヤルヴィは切実だった。隣のベッドが空くのは寂しかった。
「カレナードに帰ってきて欲しい」
班長はヤルヴィの肩に手をそえた。
「帰ってくるさ、彼はV班のメンバーだ」
ミシコは教官に掛け合おうと思ったが、その必要はなかった。カレナードは自分でリリィや教官達を説得し、翌日の夕方には男子棟へ戻ってきた。
マヤルカとミンシャが綺麗な紙で飾った箱を持って、V班の部屋までついて来た。
「また、ここでよろしく頼むよ」
「おかえり、カレナード」
キリアン以外は彼を出迎えて囲んだ。ヤルヴィはカレナードに抱きついた。
「僕はもう君が女子棟に行っちゃうと思って!」
「泣くなよ、ヤルヴィ。僕は男だからここに居るよ」
シャルが早速ヤルヴィをからかった。
「ヤルちゃん、大好きなお姉さんが帰ってきて良かったねえ」
「おい、シャル、そういう冗談はやめろよ」
アレクはたしなめたが、カレナードはかまわないと言った。
「これから先、きっと僕は体のことで恰好の話のタネになるだろう。むしろ言ってくれた方が気が楽だ。いくらでも切り返してやるよ」
ミシコが班長らしく宣言した。
「よし、カレナードを女扱いしたりスケベ心で近づくヤツがいたら、僕達が殴ってやろう」
「それはいいなぁ」
アレクが自分達のことは棚に上げて賛成した。
カレナードはふとキリアンと目があった。キリアンは気まずそうに下を向いたが、また顔を上げた。カレナードも何か言おうとしたが言葉が出なかった。キリアンにほんの少し頷いてみせた。キリアンも少し頷いた。今はそれが精いっぱいの遣り取りだと、両人とも分かっていた。
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