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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第2章「新参訓練生」

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第2章「新参訓練生」18 着せ替え人形

エレベーターには他に誰も乗っていなかった。 ベルはやっと口を開いた。
「あなたが知らないのは当然ですが、これを降りたら春分のことは一切口に出さないように。
その日はマリラさまが生き脱ぎの儀式を行うのです。儀式は死の苦しみを伴いなす。女王の義務ゆえ誰も身代わりになれませぬ。
毎年のこの時期、マリラさまは大変お辛いのです。ご心労をお慰めするため、今宵はあなたもお力添え下さいませ。」
「女王臨死式…ですか」
「それは春分の日の午前中に、女王が乗組員と訓練生にしばしの別れを告げる式です。」
カレナードは信じがたかった。
「マリラさまが…亡くなる…と」
「私は言いましたよ、生き脱ぎの儀式は死の苦しみを伴うと。しかし、あなたはこれ以上知る必要はありません」
「承知しました、チャンダル女官。でも、僕は先日女王の浴室を壊し、ご不興を買っています。お役にたてるとは思えません」
ベルは少年に微笑みを返した。彼女はお高い女官の仮面を少し取ってみせた。
「カレナード・レブラント、教えておくわ。女王の前で女官を呼ぶ時は『マダム』を付けて呼ぶのよ。私なら、マダム・チャンダル。でも二人きりでいる時は、堅苦しいことは抜きにしましょう」
エレベーターは最上層の3階にある女王区画に着いた。カレナードは何をすればいいのか訊いた。
「人形になってもらうわ。等身大の人形に。エーリフ艦長が言うことには、あなたはお芝居が上手いそうね」
女王は週末の夕食を軽く終えた。ジーナ女官長がお茶を差し出しながら「今日はお目にかけたいものがあります」と告げた。
「もったいぶってないで、見せなさい」
マリラは台車に乗って押し出されたものを見て、茶碗を落としそうになった。ついで、手にした茶碗が震え、茶がこぼれる前になんとか碗をテーブルに戻した。
「アハハハハハハ!」
マリラは腹をかかえて笑った。
彼女の前に運ばれたのは古風な女道化の人形に扮したカレナードだった。頬には丸く真っ赤な頬紅が塗られ、タヌキのようなアイシャドーと縁どり、唇はわざとおちょぼ口に描かれた。彼は目を見開き、軽く曲げた腕に花籠を通し、派手なボンネットとポンポン玉だらけのドレスを着けていた。
マリラは発作のように笑い続けた。
「ひどい!なんというひどい恰好だ。アハハハハ。いや、こんなに笑っては人形に失礼か。しかし、ひどい。この化粧はひどすぎる」
そう言って目尻の涙を指で拭いながら、また笑うのだった。
「ジーナ、良く出来ているぞ。よくこんなものを思いついたものだな。アハハハハ!」
女官達もつられて笑っていた。ジーナは恐れ入りますと腰を下げた。
「ふむ…人形よ、良く出来ている…が、ベル・チャンダル、化粧箱をここへ持っておいで」
女官長は女王の遊び心が動いたのが分かった。
「拭き取り化粧水とケープを用意したしますわ」
マリラはそうしておくれとうなずいた。
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