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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第2章「新参訓練生」

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第2章「新参訓練生」17 雄々しいお嬢様と端麗な女官殿と

週末の夕方、カレナードはマヤルカに会いに行った。講義で会うことはあっても、互いの姿を確認するだけの毎日だった。
彼女は濃淡のあるバラ色のワンピースを着ていた。赤毛をポニーテールに結って、胸にレースのリボンを垂らしていた。カレナードは彼女の胸のふくらみに気づいた。
「お嬢さん、も、元に戻ったのですか」
「違うわよ。リリィ・ティンが2年かかるって言ってたのを忘れたのね。これはハリボテよ。Y班のみんなで作ったの。どう、素敵でしょう」
カレナードは驚き、声をひそめて言った。
「知られたのですか」
「いいえ、私が秘密にしておかなかっただけよ。あなたはどうなの。…いえ、あなたの顔を見ればわかるわ。言ってないのよね」
「…言えるわけ…ないじゃないですか」
マヤルカはミンシャが言う男のプライドというものが少々恨めしかった。が、それはそれで仕方ないと割り切った。彼女はいきなりカレナードを平手で打った。
「情けないわね!まるで女の腐ったみたいになってるなんて」
彼は突然のことに頭が空っぽになった。
「それでもヒューゴ・レブラントの息子なの!腑抜けてるんじゃないわよ!カレナード!」
マヤルカは女子棟の前庭にもかかわらず、大声を張り上げた。
「私は男じゃないカレナードを許さないわ。マヤルカ・シェナンディは許さない!」
カーテンの影から見ていた女子Y班一同は感嘆した。
「雄々しいわね、マヤちゃンたら」
カレナードはマヤルカの啖呵が効いたのか、目に力が戻った。
「さすがはシェナンディ家のお嬢さんです。参りました」
「ね、話を聞かせて。3週間もろくに会えなかったんだもの」
ところが、門の外からシャルが両手で緊急のサインをしながら、カレナードを呼んだ。
「おおい、女王さまの女官がお前をご指名だよん。詰所に来てくれ」
その一言で女子棟の窓のあちこちからどよめきが起こった。マヤルカは力を込めてカレナードの手を握り、励ました。
「お役目は立派に勤めるのよ、私のカレナード」
彼はうなずくと彼女に抱擁を返してから、男子棟へ走っていった。
Y班の部屋ではララとルルが今のシーンを再現して、アラートの失笑を買っていた。
詰所には女官のベル・チャンダルの若々しく優美な姿があった。新参訓練生には眩しすぎる女官の佇まいだった。彼女は黒髪を結い上げ、古風なビロードのドレスを着ていた。彼女は女官長の代理だと言った。
「女官長さまの発案で、今宵の余興にあなたが必要なのです。一緒に来ていただきます。帰りは点呼の時間に間に合わないかもしれません。ミシコ・カレントと詰所当番には言い渡してありますから。では、参ります」
有無を言わさない勢いでベルは歩きだした。
付いていくカレナードの後ろから男子訓練生のヤジと口笛が飛んだ。ベルの歩みは滑るようだった。
「男の子は元気ですこと」
カレナードは居住区の街路を歩きながら、春分に何があるのか訊ねた。道化の言葉が気にかかっていた。女官は黙々と歩み、後ろ姿は「人前でその話は出来ない」と語っていた。
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