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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第2章「新参訓練生」

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第2章「新参訓練生」16 ワイズ・フールが言うことには

「遠慮召さるな、紋章人よ。あなたも時には泣き、物思いに沈み、孤独を友にしたいでしょう。どうぞここを使いなさい。小生は歓迎しますよ。
ただし、こちらが野暮用の時はそっとしておいて下さいませよ」
「野暮用ですか」
「なんですかー、この冴えない道化に女は全く寄り付かないとでもー、おおー、嘆かわしや嘆かわしや!命短し恋せよ少年少女!あなたは恋心を知らないとでもおっしゃるか。黒髪の熱き血潮に触れませい!それ!」
道化は胡坐のまま跳ねて立ち上がると、クルクル回った。帽子についた黒い房がブンブン振り回された。やっとカレナードは微笑んだ。
「あなたはいつから女王に仕えているのですか」
「そうですねぇ、道化としては7年くらいでしょうかねぇ。それ以前の小生は独立遊撃隊の候補生でございましたから。落第の常習犯で、その古参ぶりには教官が手を焼いたという話はおいといて、それが何か」
「マリラさまは…どういうお人なのです」
道化は勝手に喋りたてた。
「魂の契約をなさったあなたが、何を今更マリラさまのお人柄を問うのです。いや、待て!紋章人は悩んでござる!それにお答えするのも小生にとっては一興ですな。
では!女王!それは博愛のお人!ヴィザーツもアナザーアメリカンも分け隔てなく接され、またご冗談もお好きで、道化の出番がないくらい」
「暴力もお好きなのでは」
「あなたもご冗談が好きですか。滅相もない。人の暴力性を否定はなさいませんが、それに寛容ではございませんよ。玄街のテロ行為と400年近く闘って来たのが、我らヴィザーツ!調停とは表裏一体で成してきた女王の大仕事!その歴史たるや、一部のアナザーアメリカンしかご存知ない。おや、ヨデラハン参謀室長の軍事史講義はまだですか」
「まだですよ。それよりマリラさまの昨日のあれは一体…」
「マリラさまだって御加減の悪い日もあります。特に玄街に乗船されそうになってからは穏やかではいられますまい」
「昨日は殺されるかと思いました。あれが女王のすることですか」
道化は少年の険しい眉間に、ピンクの尻尾を尻ごと「えい!」と当てた。
「わっ!何をするんです」
カレナードは慌てて道化の尻をどけた。道化は得意の宙返りをした。幅狭い室内にもかかわらず、大した身のこなしだった。
「ほらね、油断してたらこうなるの。女王には気をつけなさい。春分まで60日を切ったことですし」
「春分に何があるのですか」
「2年生にでも聞いてご覧なさい。ところで、あなた、実習中でしょ。休憩時間はどうなのです」
カレナードは大急ぎで持ち場に戻った。キリアンが監督官に叱られていた。彼は残りの作業が終わるとカレナードに憤懣をぶちまけた。
「少しは骨のあるヤツだと思い直してたんだよ。俺達みたいにスコラで学んでもないのにコードをさっさと覚えて使いこなしてさ。大したものだと見直して損した!」
「悪かったよ、キリアン」
「お前は甘ったれのうえに気分屋だ。女王の紋章を持ってれば、平気で仕事をサボれるんだからな」
「女王の紋章とは関係ない!」
「嘘付け!ムキになるのがいい証拠だ」
その後の2日間、罰の錆落としは続いたが、ほとんど目を合わさずに仕事した。互いに最低の気分だったが、どうしても歩み寄れないのだった。
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