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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第2章「新参訓練生」

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第2章「新参訓練生」13 通気口に沈む

事故は3日後に起こった。
新参訓練生は初めてガーランド最上階での作業に向かった。空気取入れ用の縦管に入り、管内の梯子の強度をチェックしつつナノマシン滓を回収する仕事だ。
縦菅は直径2mの大きさがあり、5mおきにゴミ取り用の紗膜が張ってあった。その紗膜も外すのだ。
縦菅は20m下で幾つかの横配管へ別れていて、その日の作業は横配管に到達し、4枚の紗膜を回収すれば終わりだった。
監督官が説明を始めた。
「縦菅に入るロープの操作は先週やった通りだ。
梯子の最初の3段目まではロープだけで体を支えて清拭コードと再起動コードを使わねばならん。これは2人組でやるんだ。十分に体を支えられるよう1人は補助してやれ。
3段目までの強度が確保できたら、あとは順次梯子に命綱を掛けて下の段をチェックしながら降りる。残る3人目は仕上げの更新コードをかけることと緊急時の連絡係りを勤めてくれ。
では手袋とライト付きヘルメットとマスクを付けろ!」
V班は第6通気口と第7通気口を受け持った。カレナードの役目は第7通気口をキリアンとアレクのあとから仕上げをすることだった。
作業は手際よく進んでいった。管内の空気は止められていて静かだった。紗膜はアレクの解除コードでやすやすと外れ、下の紗膜までふわりと落ちていった。
3枚目の紗膜を外す直前のことだった。
カレナードは29段目に足を置いて、27段目の梯子に更新コードをかけた。
26段目に繋いでいた命綱を外し、27段目に移そうとした時だった。
突然29段目が折れた。
彼はバランスを崩して3枚重なった紗膜の上に落ちた。キリアンとアレクが急いでカレナードの命綱を引こうとしたが、紗膜は次々と破れて彼はそのまま4枚目の紗膜まで落ちた。
アレクが緊急用のホイッスルを吹いた。キリアンは3枚目の紗膜の裂け目から、カレナードが4枚目の紗膜を破り、もがきながら横配管の一つへ滑るのを見た。
アレクが叫んだ。
「キリアン、あいつの命綱があっちの金具に引っ掛かってる!引っ張れるか!」
「やってみる。体を押してくれ!」
彼は自分のロープを振り子のようにして梯子から離れ、金具へ手を伸ばした。カレナードの命綱を掴む寸前、それは金具を離れて下へ落ちていった。
カレナードは横配管の緩やかな勾配を滑り落ちていた。何かに掴まろうとしたが、横配管の内部は驚くほど滑らかで、かろうじてヘルメットのライトを付けても淡い暗闇の中があるばかりだった。その中をナノマシンの滓と一緒に落ちた。
行き着く先は通風孔だと予想していたが、いきなり足元が柔らかい沼のような所で止まり、上から大量の滓が流れてきた。ライトが効かなくなり、パニックが訪れた。彼は窒息死の恐怖から管内をところかまわず叩き、でたらめなコードを叫んだ。横配管の一部が壊れた。彼は光と空気を求めて、壊れた穴に突進した。
パリンと乾いた音がして見知らぬ部屋に転がりでると、彼はマスクをむしり取った。咳き込んでいる彼の上から、聞き覚えのある女の声がした。
「そなた、訓練生になったのだな」
見上げた先に女王マリラがいた。
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