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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第2章「新参訓練生」

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第2章「新参訓練生」11 男子V班の連中

彼がまず恐れたのは今以上に筋力が減ることだった。実習はどうしても男の力を必要とするように組まれていた。彼は自由時間に腕立て伏せと腹筋を自分に課した。隣のベッドのヤルヴィが付き合うようになったのは嬉しかった。
彼は北メイス領国の出身で、年齢よりもしっかりして見えた。しかし、話をするうちに相当な寂しがりと分かった。彼の父が新しい妻を迎え、すぐに弟か妹が誕生する運びになった。それで彼は家を出る決心をしてガーランドの新参訓練生になった。
カレナードは訊いた。
「訓練生になるには資格が要るんだろう」
「うん、おもしろかった。選抜試験が3回あって、体技が2回あって、僕は年が問題だからって、追加のコード実習試験もやったよ。スコラの先生がもう教えることがないからって隣町のヴィザーツ屋敷まで勉強に行ったんだ、父には内緒で」
ヤルヴィは一種の天才だったが、妻を亡くして間もない父が再婚したことに納得できなかった。彼は家に手紙を書いたのはまだ1回きりだと言った。
「カレナードがお兄さんならいいのに」
「アナザーアメリカンの兄貴が出来るよ、ヤルヴィ」
「それもいいよ。僕はよく馬に乗って隣町へ行ってたんだ。途中で寄り道してアナザーアメリカンの子と釣りをしたり、家に寄せてもらったりしたよ。父上には内緒さ」
アレクがそばで聞いていた。
「ヤル、彼らは総じてヴィザーツを近寄りがたい存在と見ている。それはすでにアナザーアメリカの秩序の一つだ。彼らにヴィザーツと個人的な関係をもたせないのは、ヴィザーツ屋敷の原則だろ。」
「僕だってそれくらい分かるよ。素性は知られないように気をつけてたよ。だけど玄街に注意していれば、屋敷の外に行ってもいいじゃないか。アレクもそうじゃなかったの」
アレクは穏やかに人差し指を振った。
「それは秘密だ」
カレナードはヴィザーツが抱える不自由を垣間見た。
「アレク、ヴィザーツの世界は、もしかしたら…狭いのかい」
彼は悠然としていた。
「確かに深い世界と重い役割はある。調停、誕生呪、玄街、コード、それらに対して責任を負うんだ。その誇りとコードの恩恵の代わりに、多少の不自由は当たり前だな。ヤル、今頃、お前の親父さんが尻拭いしているかもしれないぞ」
「もう!意地悪言わないでよっ!」
口を突き出して言い返すヤルヴィの頭を撫でて、アレクは当番のリネン交換の仕事に行った。ヤルヴィは子供扱いを嫌ったが、子供そのものの願いを言った。
「ねえ、カレナード。週末はベッドをくっつけて一緒に寝ようよ」
カレナードは無邪気な願いを拒まなかった。眠る間、胸は布で巻くことにした。
V班のメンバーの個性は際立っていた。
アレクは口数こそ少ないが、応用に強く、実習では作業の遅れがちなカレナードにやり方を教えた。全体の流れを見る点ではミシコ以上の視野を持っていた。
ミシコは数理系の講義に強く、統率力と人望があった。
シャルはムードメーカーかつアウトサイダーだった。
彼はすでに自分の世界観を持っていたが、そこに逃げ込むようなことはしなかった。コードの発音は正確で狂いがない。
そして、キリアン。彼はそつがなく、なんでもこなした。それが時には無理をしているように見えるのだが、本人は否定していた。弱みを見せないプライドがあった。
ミシコと仲がいいサナールに言わせれば、いいヤツばかりで羨ましいのがV班だった。
「そこが問題でもあるのさ」というのがミシコ班長の見方だった。
「確かに我がV班はいいヤツ揃いだ。かなり忍耐強いし、良識も備わっているし、あのシャルでさえ破目を外しそうに見えて実はマジメさ。今までこれと言って班長の苦労はなかった、不思議なほどに」
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