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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第1章「禁忌破り」

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第1章「禁忌破り」3 子守唄は父が語る (挿絵追加2014/6/13)

カレワランの亜麻色の巻き毛と鳶色の目は、息子にそっくり受け継がれる気配だった。というのも、2歳までは彼の髪は直毛なのに伸びてくると毛先だけがくるくると小さな輪を描くからだった。
カレワランがこの世を去ると、ヒューゴは子供を連れてアナザーアメリカを旅して回る生活に戻った。
カレナードはたくさんの母親を持っているも同然だった。鳶色の目をした子供は、行く先々で女達の膝に乗せられ可愛がられてはまた旅立った。
父と息子はアナザーアメリカを取り囲むサージ・ウォールの禍々しくも雄大な姿が眺められる辺境にも行った。ヒューゴは子守唄代わりに、サージ・ウォールの不思議を語って聞かせた。
「いいかい、カレナード。サージ・ウォールは嵐の塊に見えるが、あれは決して気象現象ではないのだよ。
なぜならアナザーアメリカの創生伝説に照らし合わせても、2500年前に壁が現れてから、消えることもどこかで途切れることもなかったんだ。
さらに高山でも海上でも地形や気候に左右されず、常に強烈な暴風現象を保ち続けているのだよ。
サージ・ウォールはほぼ環状…そう…円い形をしていてね、東の端は北メイス領国、北は遊牧民だけがいる寒い湖沼地帯、西はロシェック大山嶺を跨ぎ、南はオスティア領国のはるか海の上まで、ぐるりと我々を取り囲んでいるんだ。
私は不思議に思うよ、あのエネルギーはどこから生まれ、どのように費やされているのか。それを研究するのが私のもう一つの仕事なのだよ、カレナード」
挿絵(By みてみん)
こうしてカレナードの記憶に黒灰色の壁のような嵐の塊り、サージ・ウォールが焼きつき始めた。
「父さん、あれはこわいけど、きれい」
彼は多くの子供が怖気づくこの光景に、畏敬と感動を持って飽きることなく眺めることができた。
カレナードの一番古い記憶は、黄色い夕暮れの中に山のように横たわるサージ・ウォールと夜営テントで父が焼いていたジャガイモとベーコンの鍋だった。それから遠浅の砂浜に打ち寄せる波、そのはるか彼方の海上のサージ・ウォール。
一面の麦畑の向こうの険しい山々を横断しているサージ・ウォール。
アナザーアメリカの有史以来、誰一人として越えることを許さなかったサージ・ウォール。それによって閉ざされたアナザーアメリカの大地だが、人々が暮らすにはいまだ十分すぎる広さがあるのに、あえて嵐の壁を越える必要があるのかと厳しく問うかのように、サージ・ウォールは巨大な円を描いてアナザーアメリカと外界を遮断していた。
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