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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第2章「新参訓練生」

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第2章「新参訓練生」9 コード特訓

翌日、ミシコは休日返上でカレナードに清掃実習に使うコードの仕上げを課した。シャルが助手になり、各種のコードが完璧な発音になるまでチェックした。
「いいか、カレナード。一音違えば別のコードになる。それが対象物に無効果ならまだいいが…」
「つまり…間違った効果を与えてしまうと…すごく不味いんだ」
カレナードは危険な道具に慣れようと真剣だった。シャルが解説した。
「そのとおりさ。船体に小さい穴を開けるくらいなら復元コードで何とかなる。問題は対象物の変質や大きな破壊を招きかねないことだ」
「シャル、復元コードに頼るなよ。あれは1回の実習に3回までだろ。コードは万能じゃないんだよ」
「はいはい、ミシコ班長はお厳しいこと」
「勝手に言ってろ。実習はV班が一つのチームだ。コードとそれ以外の作業をうまく組合せて、古くなったナノマシン滓を回収するんだ。集中してろよ。チェックするから最初から発音してくれ」
カレナードは息を吐き、気を引き締めた。
「起動コード、dicourvertdèeupettir。再起動コード、unessdicourvèerttireè。復元コード、anexxurcourvertire。更新コード、nouvvfurr-et-voiteppeèr。固定コード、rushurfull-et-oikuuhurr。解除コード、rushuùvfull-et-dithhuquir。清拭コード、sorzzittzà-quès-vouffellr。
範囲指定起点設定コード、dunouure-cof-won。範囲指定終点設定コード、dunouuru-vonu-wog。時間指定開始コード、dictoivoufùuppiti-cof-tempus。時間指定終了コード、dictoivoufùuppite-vonu-tempusu 」
ミシコは親指を立てた。
「いいぞ、その感覚を忘れるな」
カレナードは空中を見つめた。
「不思議だな…僕たちが吸ってるこの空気に…その…ナ。ノ。マ。シ。ンがあって…人間がそれを取り込んで正常に作動させるための起動コードが生誕呪…。目に見えないものがそんなに重要な働きをしているんだ…」
シャルがあくびをしながら言った。
「そうさ。間違ったコードを大勢が一斉に使ってみろ、何が起こるか分からない。だからさ、コードの練習はこうやって遮音室でやるんだよ」
「シャル、班長からの頼みを聞いてくれ。給湯室から何か持ってきて一休みしよう。女の子がいたらお菓子をねだって欲しいな。君の美辞麗句でもってさ」
「へへ、美辞麗句なんて女王の女官にしか通用しないのよん、ミシコ君。素直にお願いするのみさ。あー、喉がカラカラだっ」
静かになったところでミシコはカレナードに切り出した。
「前に君の呪いのことは君に任せると言ったよな、覚えてるか」
カレナードの顔が曇るのを見てから班長は続けた。
「楽しい話じゃないことは承知している。僕は編入生が来ると知ってけっこう心配だったんだ、どんな奴が来るんだろうって。今日ずっとコードの練習してて、心配は消えた。カレナード・レブラントはやる気があって、素質も十分で、イヤな奴じゃない。ずっとそうでいて欲しいね」
「ありがとう、ミシコ。僕も班長の期待にそいたいよ」
「それで、気を悪くしないで聞いて欲しい。君の呪いについて出来る範囲で話してくれないか。もちろん秘密は守る。君の信頼が欲しいんだ」
カレナードは最初ミシコを見ていたが、視線はすぐに宙に泳いだ。
「途方もない話だ。最初はヤッカ隊長にも信じてもらえなかったんだ」
「…話しにくいか…。シャルは君が呪いのために怪我をしてると」
「そうじゃないんだ…」
「体のことではないのか…違うのか」
カレナードは葛藤の中にいた。ここでミシコに全てを話せばこれから先は隠さなくてすむ。しかし、呪いが明らかになったあとを思うと怖かった。女の体を持って男子V班でやっていける自信がないのだ。
下を向いて黙り込んでいる彼の肩にミシコが手を置いた。
「頼む。なにか言ってくれ」
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