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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第2章「新参訓練生」

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第2章「新参訓練生」6 乙女の園で

女子Y班の5人娘はマヤルカの身の上に興味津々だった。
女王のお客さまを預かる名誉と素直な好奇心とヴィザーツのちょっとしたプライドにかけて、彼女達はマヤルカを歓待した。全員が盛装の私服で出迎えた。最初は蜂蜜入りのお茶から始まり、あっという間にお菓子が飛び交った。
そして話は佳境へと向かっていた。
「それで、2人でガーランドを追って旅してたのね。辛かったでしょう」
「マヤルカはなんて強いの!」
双子のララ・ケラーとルル・ケラーはマヤルカを両側から抱きしめた。栗色の髪のオーレリ・ラドゥーがその姿どおり、おっとりした調子で提案した。
「私の故郷はオルシニバレ領国のトレヴァー市よ、お隣だったのね。ねぇ、班長ミンシャ・デライラ、彼女が家に手紙を出せるように詰所に頼めないかしら。ガーランドに乗れたことを、お父さまとお姉さまにお知らせできるように」
ミンシャは指を鳴らした。その指で赤い唇をなぞりながら彼女を讃えた。
「グッドだわ、オーレリ。あンた、そういうところ好きよ」
「もう、嫌だわ。照れくさい。マヤルカちゃん、気を付けてね。班長はあなたのタイプも好きなの。あら、赤くならなくってもいいのよ」
オーレリは優雅に腕を差し出し、目を丸くしているマヤルカの頬を撫でた。
「肌荒れしてるわ。寒空の下を旅して、それからレブラント君の看病でしょ。ねぇ、アラート。あなたのオイルを付けてあげて。あれ、最高」
「任されてよ。」
アラート・ノアゼットがテキパキとマヤルカの首周りにケープをかけ、瓶から良い香りのするオイルを手にとった。ララとルルが立ち上がった。
「あ、ずるいずるい!アラートったら。私達も付けてあげるわ」
「かしましい双子だね。じゃ、マヤちゃんの手を片方ずつ頼むよ」
「はぁーい。やったぁー」
双子はアラートの指導通りにマヤルカの手をオイルで揉んだ。濃いラベンダーとローズマリーの芳香がマヤルカを酔わせた。ミンシャが言った。
「で、玄街の呪いって何なンだい」
「そ…それは…それは…あの…私…」
マヤルカは隠しきれなかった。
甘い香りと優しさに満ちた女の園は、2ヶ月近く張り詰めていたマヤルカの感情をすっかり溶解させていた。
乗船以来、リリィ・ティンに人間扱いされなかった彼女の感情は、女子Y班の好意的質問攻めにあい、大いに揺さぶられた。
そして、その身に起こったことを涙ながらに告白したのだった。
告白された方は、これまた大いに感情を揺さぶられた。ミンシャはもともと女子Y班に備わっていた団結力を一層強固にした。
「彼女の告白はこの班だけの秘密よ。これは女の友情にかけて誓うわ!
それからレブラント君の呪いも推して知ったでしょうから、黙ってること!男の子はそれなりにプライドあるもンだからね」
オーレリーが訊いた。
「ミンシャ、あなたったら男性のプライドに詳しいのね」
ミンシャはニッと笑っただけだった。アラートがオイルの瓶を片付けながら言った。
「班長はさ、5人兄弟の真ん中で、兄貴が2人、弟2人の間で育ったんだよ。マヤちゃん、聞きたいかい。東メイス領国オリール・ヴィザーツ屋敷のデライラ5兄弟といえばね」
オーレリが突っ込んだ。
「あらぁ、ミンシャは兄弟でカウントされてるの。流石ねぇ」
班長は笑みを浮かべ、しなやかにポーズを取った。
「女の内側にも男はいるのよ。逆もまた然りだわ。マヤちゃン、安心しなよ。体がどうあろうと、あンたは女だよ」
マヤルカは頷いた。頬にまた新しい涙が落ちていった。
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