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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第2章「新参訓練生」

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第2章「新参訓練生」5 シャルとヤルヴィの初歩的コード演習

ヤルヴィはキリアンが出ていくと、カレナードに尊敬の眼差しを向け、いそいそと世話を焼いた。
「制服はあくまで正装に使うんだ。何かの式とか行事の時にね。この先だと、春分の前の女王臨死式が一番近いよ。普段は実習服を着るんだ。着方に決まりがあるんだよ。僕がやるとおりにやってみて。」
彼は手早く私服のセーターとズボンを脱ぎ、下着になった。最初にハイネックのジャージー素材に加工を施したシャツを着た。次にズロワースのようなズボン下を履き、最後にオールインワンの外装を着て、ベルトで止めた。オールインワンの左肩に新参を示す紋章があり、濃紺と水色のパイピングが襟元から足首までを飾っていた。かっちりしているのに柔かさを持ち、ヴィザーツ特有の機能美があった。
ヤルヴィは実習用ブーツを履いて、オールインワンの裾をブーツの中へ入れた。
「これで終わりじゃないよ。ブーツの周りと首周りと袖口に固定コードをかけるんだ。あらかじめ服の方にコードの作用域を設定してあるから、範囲指定なしで大丈夫さ。rushurfull-et-oikuuhurr。」
彼の声に反応し、作用域は静かに密着した。魔法にしか見えない現象を受け入れ、カレナードは訊いた。
「なぜ固定コードで密着させるんだい。」
シャルが自分の作業服を持って来て説明した。
「講義はともかく実習と訓練はナノマシンの滓まみれになることもあるのさ。滓も一定量を超えるとアレルギーの引き金になるしな。この服は滓をはじき返す性質はあるけど、こうした隙間から入るのだけは防げないんだ。ま、予防策だよ。」
カレナードは再び訊いた。
「ナノマシンって何だい。滓を出すものなんだ。」
シャルとヤルヴィは、カレナードがアナザーアメリカンであることを改めて思い知った。ヴィザーツにとって当たり前のことが彼には当たり前でないのだ。シャルはゆっくり始めることにした。
「うん、ナノマシンはオレ達には見えないが、確実に有る物質さ。アナザーアメリカの全てにある…、いや、宿っているんだ。役目を終えると滓になるんだよ。ナノマシンを可視化して分かりやすく説明出来りゃいいけど、新参はそれを禁じられているんだ。まあ、まずは固定コードで実習服を整えるのが先さ。どう、固定コードを言ってみてよ。」
「僕はまだコードが何なのか知らないんだ。言えるのは誕生呪だけだよ。」
シャルは助け舟を出した。
「そっか。起動コードが言えるなら固定コードくらいは簡単さ。とりあえず着替えてくれ。オレとヤルヴィで固定してやるよ。コードはあとで教えるさ。脱ぐ時は解除コードが要るから、それもセットで教えなきゃ。音声記号は分かるか」
「ああ、それがあると助かる。頼むよ、シャル。」
シャルはヤルヴィに音声記号のノートを用意させ、カレナードはベッドのカーテンを閉めて着替え始めた。
シャルが「おい、何の遠慮だ。着替えにカーテンが要るのか。」と覗いた。
カレナードがスボン下とコルセット姿で振り向いた。咄嗟の嘘が出た。
「む、胸に怪我をしてるんだ。医者にこうしてろって言われてね。」
胸の膨らみはそれほど目立たない。制服も実習服も体のシルエットが出る裁断ではない。シャルは何も気付かなかった。
「そうか、施療棟で診てもらえよ。」
カーテンの向こうからシャルが問うた。
「その怪我は玄街コードのせいか。」
「ああ、見れたものじゃない。」
こうしてカレナードは体を隠し続けなければならなくなった。
彼はハッとした。
マヤルカは、男の体でどうやって女の子達の中でやっていくつもりなのか。
彼女の場合は、あっという間にバレてしまった。
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