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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第2章「新参訓練生」

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第2章「新参訓練生」3 問いと弁明

明らかに年少の、おちょぼ口の少年がふくれていた。
「シャルはふざけすぎだよ。初対面なのに失礼じゃないか。僕はヤルヴィ・アダンです。ようこそ、ガーランドへ」
「よろしく、ヤルヴィ」
早速シャルが横から口をはさむ。
「このヤルちゃんはガーランド歴代最年少の訓練生、なんと9歳だぜ。まだまだママンのスカートが恋しいお年頃なのにさ。どうだい、カレナード君はママンの香りがしそうじゃないか」
「本当にシャルは口が悪いよ。人をからかってばかりでさ。この短髪カッパ!」
シャルはゲラゲラ笑った。
「ボキャブラリーが貧困だねぇ、せめて緑の水棲の怪とでも言ってよ」
彼は早速カレナードにひと月遅れの編入のわけを訊ねた。そこへ班長が帰ってきた。
「編入生がもう来たって」
他の班の連中が好奇心旺盛に扉から覗き込んだ。班長のミシコはしっかりした顔に似合わぬつぶらな瞳を持ち、全体的に大人っぽい青年だった。17歳だった。彼は編入生を見るなり「お前は!」と絶句した。
「なんでお前がここにいるんだ。アナザーアメリカンがなぜガーランドに乗ってるんだ」
彼の言葉にあたりの空気がざわめいた。キリアンが食ってかかった。
「アナザーアメリカンだって!嘘だろ。そんなわけがあるか。編入ならヴィザーツでもそれなりの資格が要るんだぜ」
ミシコはカレナードを指さした。
「こいつは間違いなくオルシニバレ市出資寮の監督生だったカレナード・レブラントだ。おい、そうだろ?」
カレナードはこういう時、卑屈になればそれだけで負けることを知っていた。彼は胸をはり、相手を見返した。
「間違いなくそうだよ。僕は出資寮の監督生だった。」
「調停完了祭の最終日に、僕の家に飛び込んで飛行艇のエンジントラブルを起こしたろう。僕はガーランドの訓練生入隊式に遅れるところだったんだ。両親はお前の介抱や後始末で駆け回って、予定してた女王の謁見もだめになった。まったくさい先のいいスタートだったさ。」
カレナードは思い出した。痛む体を横たえてくれたベスティアンとアナ夫妻はミシコの両親で、あの場に彼が入ってきたのだった。彼はあの日の出来事をむし返した。
「僕はすっかり支度が出来てたんだ。お前は気絶してて覚えてないかもしれないが、こちらは忘れちゃいないさ。それがなんでここにいるんだ、いつ乗船したんだ」
「7日前だ。ミシコ、祭の日には迷惑をかけて悪かったよ。あの時は玄街に追われてて、他に助けを求める所がなかったんだ」
アレクが言った。
「7日前と言えば、最下層で玄街と銃撃戦があった日だな」
キリアンが「こいつは玄街と関係があるんじゃないか、たとえば玄街のスパイ、とかさ」と半分は当たっていることを言った。
皆がギクッとした。カレナードはこれ以上不利にならないうちに弁明しなければと口を開いた。
「僕の話も聞いてくれないか。たしかに僕はアナザーアメリカンで、シェナンディ工業の社員でもあったんだ。オルシニバレの調停完了祭の日に玄街に加われと彼らに誘われたんだ。僕にはそうする理由はなかった。だから断った。やつらは僕と僕の雇い主のお嬢さんに呪わしいコードをかけた。僕達はオルシニバレから追放され、僕はせめてお嬢さんを奴らのコードを解こうと決心したんだ。それでガーランドを追いかけてきたんだ」
部屋に入ってきた黒髪の少年が名乗りを上げた。
「俺は男子S班の班長、ナサール・エスツェットだ。口を挾むようだが、この船に簡単には乗れないはずだぞ。その辺を聞かせて欲しいな」
率直な問いだった。カレナードはありのままに答えた。
「君のいうとおり、簡単じゃなかった。僕はマリラ女王に全てを捧げるという禁忌と引き換えにしたんだ。」
寄っていたミシコの眉根が開いた。
「おい…じゃあ、お前は吊られたのか。」
カレナードは「ああ」と頷いた。
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