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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第2章「新参訓練生」

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第2章「新参訓練生」2 男子V班の紫の眼 (挿絵追加2014/6/29)

体の線がくっきり分かる薄い服に身を包んだ若い女、かっちり仕立てた奇妙なスーツを着用した初老の男、そしてオルシニバレ市の市民と同じ服の婦人もいた。
「それが僕達とは違う摂理ということですか。」
「その摂理が制度としての形を取ると、軍隊となった。それはヴィザーツ歴史学でおいおい分るだろう。君の担当医も訓練生の頃はいい射撃手だった。」
「僕もいつか玄街ヴィザーツと殺し合うのですか。」
ヴィザーツに対し、不躾な問いとは分かっていた。だが、カレナードは訊かずにはいられなかった。ヤッカは坂道の途中で歩みを止めた。
「それは避けられないことだが、物事には順番がある。玄街と闘う訳を知らなければならん。君が玄街にナイフを投げたのは防衛本能のなせる技だったが、これから先は理由が要るのだ。」
「その理由に納得しないヴィザーツはどうなるのです。あるいは玄街との戦いに理由を見出せなかったり、戦いそのものを忌避する場合は…。」
ヤッカは数秒の間、カレナードをまじまじと見た。
「なかなか一筋縄ではいかんようだな、君は。」
「…すみません。」
「謝ることではないさ。新参訓練生の間はその問いに答えが出ない。皆、そんなものだ。簡単に答えを出せるようなものでもない。なにしろ命がかかっているからな。悩むことは恥ではない。ただし、ほどほどにするのがコツだ。さあ、行こう。」
新参訓練生男子棟は『右舷下層天蓋下のベルモン通り1番』の青いプレートが貼られていた。
男子V班の部屋はその4階の端にあった
「V班班長、ミシコ・カレントはいるか。編入生だ、よろしく頼むぞ!」
ヤッカの呼び出しに答えたのは、やや線は細いが利発な目をした少年だった。彼はヤッカに敬礼の姿勢を取った。
「班長は会合に出向いております。副班長キリアン・レーが引継ぎます。」
紫色の目がカレナードをさっと見て、「こいつ!」という顔をした。それはカレナードに宿る素質を一瞬で見て取ったのと、やがて彼を脅かすだろう何かをカレナードに認めたためだった。カレナードもまた彼と目があった瞬間、彼の優れた容貌に似合わない翳りに気づいた。2人の背たけはほぼ同じだった。
挿絵(By みてみん)
ヤッカは班長以外のメンバーがいるのを確かめた。
「では、支給品の説明から始めてくれ。私は帰るとしよう。あとはよろしくな。」
キリアンは「ここがお前の寝床」と顎をしゃくった。
入口に一番近いベッドの上にダークシアンの制服一式と淡いグレーの実習服が二揃い、タオル類と下着が何枚か、石鹸が1個、コップ、そして紙挟みと筆記具が積まれていた。
ベッドの間仕切りカーテンがあったが、気を付けないと頭をぶつけそうな高さに吊られていた。ベッドの反対側に素朴な机と椅子が人数分あり、入口の隣に洗面台が一つだった。紫色の瞳が言った。
「俺はキリアン・レーだ。ミセンキッタ領国アルプ出身、16歳。お前はどこから来た。」
「カレナード・レブラント。オルシニバレ市からだ。もうすぐ17歳になる。」
「なんだ、ミシコと同郷か。じゃあ、顔見知りのはずだな。」
V班の訓練生が自己紹介しに来た。大柄で茶色の髪に茶色の眼をした少年はアレク・クロボックと名乗った。
「よろしゅう。」
それだけ言って握手を求めた。大きな手をしていた。
「よっ、美人が来てくれてうれしいよ。オレはシャル・ブロスってんだ。弱冠13歳の唯美主義者と呼んでくれ。」
痩せぎすでタレ目で俊敏な感じのシャルは口もよく回った。
「よろしく、シャル・ブロス。」
カレナードは挨拶を返したが、美人と言われただけで冷水を浴びた気がしていた。それを察知したのか、シャルは「気に障ったかい」とおどけて言った。
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