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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第1章「禁忌破り」

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第1章「禁忌破り」2  縁薄き母と血縁のない父と(挿絵有)

突然、空全体に重低音が鳴り響いた。御者が叫んだ。
「ガーランドの露払いが来ますぜ!」
乗合馬車が止まるや、上空を巨大な人型の機体が飛んだ。黒と金の機体が1機、青と銀の機体が2機、トライアングルの編隊が空を駆け抜けた。渦巻く轟音と気流が押し寄せた。
御者は手綱を引き、馬たちが暴れないよう踏ん張った。ヒューゴも馬車を降りて手伝った。
「凄いものだな。あれがトール・スピリッツか。浮き船ガーランドがやって来る前触れを初めて見たよ。オルシニバレで調停があるのかい」
御者は馬たちを撫でて回った。
「そうですとも、レブラント先生。オルシニバレ市の領国府が調停完了祭をやるんでさ。間もなくガーランドのヴィザーツさまが女王共々お目見えです。どれ、馬を少々なだめてやらんと。露払いに度肝を抜かれかけてるようで。
地上にお住いのヴィザーツ屋敷の飛行艇には慣れていんのにな」
乗客達は馬車から降り休憩を取った。ガーランドの露払いの衝撃で何人かの客は気付け薬を嗅ぐ始末だった。
近くの沢に降りたヒューゴは、ふと、灌木の茂みに倒れている女を見つけた。細面の白い顔に亜麻色の巻き毛が張り付いていて、眉には知性が漂っていた。
それがカレナードの母、カレワラン・マルゥだった。
ヒューゴが抱きかかえると彼女は磁力のある眼差しで訴えた。
「私に新しい名前を下さい。カレワランの名はお腹の子供にだけ伝えたいのです」
「そうすれば、君の血縁にいつかたどり着くこともあるのだね」
ヒューゴは即決した。
「君は今からカリンカ・レブラント。私の曾祖母さまの名だ。もっとも、子供の出生証明書にはカレワラン・マルゥと書かねばならないが」
カレワランの眼に安堵の色が浮かんだ。
ヒューゴは御者に言った。
「乗客が一人増える。私の連れだ、構わないだろう」
乗客達は行き倒れの女を介抱した。誰もがヒューゴ・レブラントのために有益な情報を提供した。彼が各領国や名だたる事業主から要請を受けている人物として、また恰幅がよく仕事に誠実な人物として、どこでも歓迎されているのを知っていたからだ。
乗客の中に休暇中の医者がいた。
「レブラント先生、この女人は4ヶ月もしたら助産所でヴィザーツさまに誕生呪を唱えてもらうことになります。貴方さまは親父さまになりますな」
彼の言うとおりになった。
ヒューゴは全く血のつながりのない息子を持つことになり、一年後にはやもめになったが、カレナードと名づけた男児を心から可愛がった。
カレワランの出身や子供の父について、ヒューゴは何も聞こうとはしなかった。
身重の女が山中に逃げてきたこと自体が彼女の事情を物語っていたので、彼はほっそりして芯が強そうなこの女をそっとしておき、静かな愛情で守ることにした。
挿絵(By みてみん)
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