挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第1章「禁忌破り」

48/388

第1章「禁忌破り」45 希(まれ)な望みと綴って「希望」

注意・内診の痛い場面があります。苦手な方は前半部分をすっ飛ばしてください。
リリィがそれをすっぱり切った。
「ローブを脱ぎなさい、カレナード・レブラント。内診もします」
カレナードには女医の言う意味が分からなかった。
「内診て…何をするのです」
「ぐずぐずしないで!」
彼はしぶしぶローブの紐を引っ張った。リリィは何の説明もなく診察台の彼の脚の間に検査器具を挿した。カレナードは抵抗せずにはいられなかった。女医は助手を呼んで押さえつけた。
「ガーランドの女は全員、この検査を受けるのよ。しっかりなさい」
「ひどいじゃないですか。僕は…か…家畜じゃない」
「検体のアナザーアメリカンが何言ってるの」
リリィの言葉は彼を打った。彼女は器具を操作しながら、残酷な報告を続けた。
「艦長、この人は本当に男だったのですか。間違いなく女性だわ。子宮は健康そのもの、妊娠も問題なさそう。お前、月経はあるのないの、どっち!」
カレナードは首を横に振った。リリィは言葉で返事しなさいと言い残し、自分の診療室へ戻ってしまった。カレナードは動揺を隠そうと、急いで涙をぬぐったが、エーリフは見逃さなかった。
「リリィ・ティンめ、腕は飛び抜けているくせに、こころない診察をするものだ。アントニオが手を焼くのも無理はないな」
艦長はカレナードが服を着終わるまで後ろを向いていた。
「君には気の毒だったな。処女なのだろう」
「どうなのでしょう。よく分かりませんし、考えたこともなかった。ただ…」
「ただ、何だね」
「あんなのは屈辱的です」
エーリフはそうだろうと答えた。
「君はマヤルカ・シェナンディを元に戻すべく女王と成約したわけだ。それで、君自身はどうなんだ、男の体に戻りたいかね」
「もちろんです。…が、僕は成約の時に自分のことを何も条件に入れませんでした。
ですから、僕が元の体に戻る望みはなくなったと考えるべきでしょう。方法があるなら諦めたくはありませんが…」
「我々は玄街ヴィザーツが使うコードを調べている。マヤルカ嬢だけでなく、君の情報もあれば手掛かりをつかみやすいのは道理だ。 したがって君もさらに調べさせてもらう。
つらいだろうが、元に戻る可能性があるわけだ。望みは捨てなくていいぞ。女王にはその旨を伝えておく。施療棟の連中にも」
「本当ですか!」
カレナードはガーランドに来て初めてかすかな希望を抱いた。それがあとで彼を余計に苦しめることになると知らなかった。
ガーランドに来て5日目の午後、リリィは施療部解析セクションの小講堂で研究者達と艦長ら関係者を集め、簡易解析の結果を発表した。その場にカレナードとマヤルカもいた。
「遺伝子に作用するコードを解析するのは私も初めてです。ざっと見た限り煩雑かつ不明なコードです。完全に解くには、少なくとも二年はかかるでしょう。 玄街のコード設計思想を探る必要もあります。それからでないと、あの2人を元に戻す作業はできません」
当事者の2人を蚊帳の外にして、研究者の間で議論が飛び交い始めた。カレナードは同じく蚊帳の外になっている艦長に問いかけた。女王に全てを捧げた者がこの先どうなるのか、カレナードには予測が出来ないでいた。意外なことに艦長も同様だった。
「前例がないのでね。我々も君をどうしようか考えているところだよ。はっきりしているのは、君が紋章人でガーランドを降りられないことだ」
「ずっとガーランドに居るなら、ガーランドにふさわしくなるのが一番じゃないでしょうか」
「そうだな。ヴィザーツとして生涯をまっとうするために必要なことを全て一から学ぶことから始めればいい。今からでもガーランド訓練生に入隊できるよう手配できるが、どうかな。マヤルカ嬢も勉強を続けたいそうだ」
「訓練生…」
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ