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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第1章「禁忌破り」

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第1章「禁忌破り」44 艦長エーリフ (挿絵有)

カレナードの熱は下がらず、ワレル・エーリフ艦長はマヤルカから事情聴取することにした。彼は髭剃りのあとを撫で、人好きのする笑顔と鷹のように鋭い眼を彼女に向けた。文様をちりばめた長い上着を羽織っていて、メモを取るペンの動きは力に溢れていた。
「君は連れの禁忌破りを止める気はなかったのだね」
「彼と約束したのです。何をしても何を言っても、決して止めないと。それ以外に方法がなかったのです。ガーランドにご迷惑をかけましたことは、言葉もございません」
「君は玄街を撃ったそうだが」
「撃たなければ、撃たれていました。でも、とどめを刺したのは警備兵の方です」
「君の弾は致命傷だったそうだよ。大した腕だ。警備兵に雇いたいくらいだ」
「わ、私は殺し合いはしたくありませんわ」
エーリフは意味ありげに彼女を見た。それから彼女の荷物にあった何通かの書類をめくった。
「オルシニバレ市の医療大学校付属校中退か…。勉強は続けたいのかな」
マヤルカは虚をつかれた。調停完了祭以来、考えてもなかったことだった。
「…それは…それは、もう!続けられるものなら!」
「けっこうだ。ところで、君のコードを調べるにも専属の医師が必要だ。女性の医師がいいかね」
「言ってもいいかしら。リリィさんでなければ女性の方にお願いしたいの。」
艦長は苦笑した。彼もリリィの態度には手をこまねいていた。
「では女王のお客にふさわしい女医を選ぼう」
2日後、カレナードは微熱のまま、消毒ブースに入っていた。彼はブースの中から、リリィの優秀な研究者の一面を見ていた。
彼にとって、サロンの上階に広がるリリィ専用の研究室と診察室は目を見張るような光景だった。金属とガラスの密閉容器が埃一つなく並び、ふんだんな電力で冷蔵冷凍装置や分析器が動き続けていた。シェナンディ工業で多くの先端技術を見たつもりだったが、桁の違いを感じていた。
リリィは彼の血液と皮膚と髪の毛を採取し、多様な検査容器に移していった。その作業はすこぶる丁寧で、細心の注意と高度な技術に支えられたものだった。
カレナードの視線に気づいて振り返った彼女は、得意気に言った。
「アナザーアメリカンには縁のないものよ。地上勤務のヴィザーツ屋敷でも、ガーランドほどの設備はないわ。消毒はもういいわ、ローブを着なさい」
ずらりと並んだ彼の血液標本には彼女が編み出した解析用コードがかけられていた。カレナードは検査用ローブにくるまり、リリィのデスクに近づいた。
「玄街のコードはいつごろ分かるのですか」
「これだから困るのよね。ヴィザーツは魔法使いではなくてよ。時間がかかるってことくらい、分からないのかしら」
艦長が事情聴取の続きのために現れた。リリィはコード解析用の専用研究室を用意して欲しいと請願を始めた。カレナードのベッドを専用研究室に追い払うためだ。
「アントニオは赤毛のために簡易ベッドまで持ち込んだのですわ。サロンがますます狭くって狭くって。これでは、施療棟のコード研究者の寄合いもままなりません」
「善処しよう。ドクトル・リリィ」
挿絵(By みてみん)
艦長はそれ以上リリィにかまわず、カレナードの左手を取った。
「レブラント君、女王の紋章はまだ痛むかな」
「はい」
「熱が下がりきってない体に申し訳ないが、玄街の仕業をこの目で確かめたい。オーサ市で撮った写真は見せてもらったが、念には念を入れねばならん。ヤッカからこれまでの経緯は聞いた。彼が言ったように、これは荒唐無稽の現象だ」
「ヤッカ隊長は写真を見て、分かってくれました」
「私もそのつもりだが、この目で確認しておきたいのだ」
「確認…ですか」
ここにきてカレナードは躊躇した。
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