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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第1章「禁忌破り」

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第1章「禁忌破り」42 誰がために紋章を刻むや (挿絵追加 2014/6/17)

正午になった。女王が艦長を伴って昇降口に現れた。昨夜と同じオレンジの戦闘服のままだった。
円板が上がった。カレナードは気を失っていた。警備兵が彼をベルト類から解放し気付け薬を嗅がせると、やっと目が開いた。彼は疲労困憊していた。マヤルカが駆け寄って彼を支えた。巨漢の艦長ワレル・エーリフが進み出た。濃い髭あとが頬下から顎にかけて、精力的な陰翳を付けていた。
「立ちたまえ。カレナード・レブラント」
マヤルカに寄りかかってカレナードは立った。彼はエーリフの後ろにいるマリラを見た。
彼女の佇まいは石像を思わせた。10年前に触れた柔らかな威厳も、調停完了祭で見た美しい微笑みも無かった。ひたすらに無表情で冷たい顔があった。
エーリフは告げた。
「よろしい、君は生きて戻ってきた。玄街の争乱を招いた罪は許されよう。
ガーランドは君を女王に身を捧げた者、紋章人として扱う。また、マヤルカ・シェナンディを女王の客分とし、彼女のために力を尽くそう。
今から君の左手の甲に女王の印を刻み、成約のしるしとする。ここにいるヴィザーツが証人となる」
カレナードの心は引き裂かれそうだった。16時間の生死を賭けた試練に勝利した喜びと女王との成約に対する後悔の間に、彼は立っていた。後悔の念はまるでシミのように心を蝕んだ。
「女王はこんな人ではないはずだ」
そう思いたかったが、目の前のマリラは彼の想いを裏切っていた。禁忌を犯すに値するかつてのマリラがいなかった。彼の精神を支えていたかつてのマリラがどこにもいないのだった。
「あの時の女王は幻だったのか…そんなことがあるはずがない…」
儀式のための台と道具が運ばれた。左手が台上に抑えられ、消毒液で拭われた。彼はふらついた。
「これはいけませんね」
小柄な道化姿の男が大仰で慇懃無礼に言って、カレナードを支えるのに加わった。
挿絵(By みてみん)
「よろしいでしょ、マリラさま。このワイズ・フールがしゃしゃり出るくらいはお許しになるはず。死なれても困りますからね」
その言葉にマヤルカのアナザーアメリカンとしてのプライドが疼いた。だがカレナードの心は塞がっていた。
道化は2人を怒らせ気を張らせたつもりだったが、1人には効かなかったのだ。そんなこととは露知らず、道化はカレナードの左手首に拘束帯を巻きつけた。女王は無慈悲に命じた。
「では、艦長殿、ワイズ・フール、役目を果たせ」
巨漢の艦長はカレナードの左手の甲に見知らぬ器具を乗せた。
「痛いぞ、小僧」
それから一気に押した。痛みと疲労と悔恨のためにカレナードは気絶し、道化とマヤルカの間に倒れた。器具が外された左手にMと一文字を組み合わせたマリラの紋章が刺青されていた。儀式の間、女王は眉一つ動かさなった。道化はしらっと言った。
「案外、弱くていらっしゃる。この先が思いやられますなぁ」
マヤルカは道化を睨んだ。これで気絶しないほうがおかしいと叫びたかったが、我慢した。艦長はその様子をおもしろそうに見ていた。
「女王、あの者をいかようにするおつもりです」
「さてどうするか…」
マリラはその場を立ち去った。そのあとをワイズ・フールがぴょんぴょん跳ねながらついて行った。
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